しばらくして 阿鼻叫喚食堂に
新人君がやって来ました
あたしが座るテーブルに
加わったS君です
S君は腕に今風のタトゥーを入れた
39歳のおにいちゃんでした

しかしホント若い人が多い><

彼も脳出血で右半身に
麻痺があるようでした
挨拶をすると彼は

「うーうー」

と 唸るだけで言葉がでません

 

「失語症だ・・・」


あたしはすぐにわかりました

 

暫くの間 彼と共にすることで
この病気のもう一つの大きな障がい
高次脳機能障がいを嫌って言うほど
知ることになります

 

失語症とは言語機能の障がいで

高次機能障がいの ひとつなのです

「聞く」「話す」といった音声に関わる機能

「読む」「書く」といった文字に関わる機能

がダメージを受ける状態になります

 

 

振り絞るように出てくる言葉は
ほぼ解読不能でした
一生懸命に話そうとする彼に

「うんうん無理しないで!
ゆっくり やっていこうね
よろしくね!」

というのが精一杯でした

まざまざと「失語症」の

ホントを見せつけられ
自分にとっても かなりショックでした

 

そしてS君には失礼だけど
高次脳機能障がいが

でなかった自分を
本当にラッキーだったと思いました

見た目には何の障がいも

無いような人もいます 
でも 凄まじい障がいが

潜んでいます
高次脳機能障がいです


数日するとあたしは多少ですが
彼の言葉を理解できるようになり
ちょっとした通訳のようになりました

 


数日たった土曜日 ちょうどランチの
時間だったと思います
奥さんと二人の娘さんが来ました
娘さんは小学校1年生と幼稚園で
お父さんに一体何が起きたかを
理解するには難しい年齢だったでしょう

「パパご飯たべてるの?
おいしいの?
私にも ちょうだい~」

「パパ これ小学校の
新しいノートだよ
ママに買ってもらったの」


無邪気な日々変わらぬであろう
言葉を聞いた彼は下を向き

激しく震え嗚咽号泣しながら
自分の左手で動かない右手や
右足を何度も殴っています

奥さんとあたしは止めますが
彼の心の叫びが確かに聞こえました

不思議そうに見てるお子らに

「パパはちょっとお遊戯会の
練習をしてるから大丈夫だよー」

と 言うしかありませんでした

奥さんは何度も何度も

「むーさん これからも
お願いします お願いします」

と 言ってS君を連れて病室に戻りました
あたしには何もできませんが・・・
奥さんの目にも光ってるものがありました

この病気はある日

全てを奪い去ります


事故や他の病気でも同じでしょう

大きく違うのは高次脳機能障がいの多さです
ほかの事故や他の病気でも発症します
でも 脳卒中はその率が非常に高いのです

その後も お子らが来ると
S君は涙を止めることが
できませんでした


「あの子達のためにも
涙はもうやめて

歩いて  掴んで
そして話をしてあげような!
負けてたまるかだろ?」


あたしの問いかけに
彼はぐちゃぐちゃの顔で頷いてくれました

 

発症前はきっとヤンチャもしてきたのでしょう

今置かれてる状況に
納得も理解も できないでしょう

あたしは 周りよりは
若かったのですが
それでも49歳でした

 

それまでに

全てじゃないにしろ
大方のことはしてきました
エンジョイもしてきたのです

でもS君はまだ39歳なんです

 

小さい娘さんも これからですし
本人もまだまだやりきれて無いことが
山のようにあるはずです

何故 こうなったかはさておき
あまりに辛いです

 

辛い辛い
新人君の涙でした

 

 

 

嘘のような

ドラマのような

お話ですが

悲しいかな 全て実際のことでした

退院後 通障で一度 S君に会いました

彼は別人のように

明るい顔をして

手を振ってくれました

 

ー彼の復活を心より願いますー

 


まだまだ続きます

 

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