前回、レプリカ の 米軍ポケットナイフ US GI Pocket Knife の記事の時にふれた 米軍仕様書 MIL-K-818 の変遷について調べてみました。

 

まずその前に、米軍の全金属製ポケットナイフが作られた切っ掛けですが 第二次大戦中の1943年 米政府が海兵隊および陸軍の兵士へ支給するために KINGSTON キングストン社( Imperial インペリアル社と Ulster アルスター社の合弁会社)と Stevenson スティーブンソン社の2社に製造を指示した事が始まりとなります。

キングストン社へは 海兵隊と陸軍 、スティーブンソン社は陸軍用のみの発注で 1944年から海兵隊向けの製品が製造されたのに対し 陸軍ではその時点でまだ採用が本決まりで無かったため 陸軍向けの品は1945年からの製造になったようです。

それと 海兵隊と陸軍ではナイフの呼び名が違ってました。

海兵隊  Knife,Pocket,Utility 

陸軍  Knife, Pocket,General Purpose

 

海兵隊用(上記画像)には U.S.MARINE CORPS の文字がグリップ側面に刻印されてます。

なお 陸軍支給用のナイフには文字が入れられてません。

 

こうやって、後に ミル規格 に従った 米軍ポケットナイフ の基礎となる品が出来上がったんですネ~アップ

 

 

★MIL-SPEC MIL-K-818 の 変遷

そして このポケットナイフを製造する上での必要事項が記載されている米軍規格の仕様書 ミルスペック MIL-K-818 に付いてですが 第二次大戦終了後の 1949年7月29日に発表されました。

ただ、当初は 真ん中が K ではなくて J でした。→  MIL-J-818 

名称は  Jackknife, Utility   ジャックナイフ ユティリティ

その時の仕様に沿って各軍へ支給されたナイフは、アルスター社の ULSTER-48 と スティーブンソン社 の STEVENSON-45 ではないかと私は推察します。

STEVENSON-45は大戦中の1945年に米陸軍向けとして製造された物ですが、突然の戦争終結により在庫過多状態となり保管品を整理するため MIL-J-818 の仕様へ沿うようにグリップへ(大戦中の支給品には入って無かった) U.S.文字を追加で にわか刻印した後に納入 各軍へ支給されたのだと思われます。

Camillus カミラス社は1949年に同仕様に合うポケットナイフを製造してますが、聞く所によると製造数が2桁程と試作程度の数だったため実際に支給されたかは不明の様です。

 

支給用の在庫が減ってきたからかは不明ですが、1955年8月12日に MIL-J-818 の仕様が変更されました。

(↑米軍ミリタリースペックインデックスに載ってた変更の証拠 )

この改定にともない J の部分が K に置き換わります。

MIL-J-818 → MIL-K-818A 

名称も大戦中に陸軍が付けていた Knife Pocket General Purpose へ変わります。

この Revition A への変更から ナイフ全体の材質がステンレス鋼へ変更されたようです。

 

その次の変更時期としては、1960年5月20日 に MIL-K-818B となります。

 

さらに 1964年6月8日 には MIL-K-818C へ変更。

Revition C は面白い事に期間中 小変更が3回も有りました。

1回目 1972年9月29日 2回目 1975年3月20日 3回目 1976年8月10日

1回目の変更点は何となく分かりますが後の2回は何が変わったかは不明。

 

1985年9月30日に MIL-K-818D へと仕様が改定されましたが ミルスペックの廃止が進み 1997年4月17日に同仕様も無くなりました。

それに替わって 同製品の商業販売用仕様として 1997年5月30日に A-A-59100 へ引き継がれ発表されて現在に至ってます。

 

閑話

日本人でミルスペックに馴染みの有る装備では、フライトジャケット で有名な MA-1 でしょうネ!

最初期は MIL-J-8279 から始まり 最終的に MIL-J-8279G まで改変し支給されました。

 

 

 

MIL-K-818D マニュアルの表紙↑

 

 

● US GI POCKET KNIFE の MIL-SPEC 発行日付一覧

MIL-J-818             29 July 1949

MIL-K-818 Rev.A   12 Aug 1955

MIL-K-818 Rev.B   20 May 1960

MIL-K-818 Rev.C     8 Jun  1964

MIL-K-818 Rev.D   30 Sept 1985

A-A-59100            30 May 1997

変更年は判明してるものの、各リビジョンの変更内容の詳細が今一不明なのは残念でなりません。 ご存じの方がいらしたら お教え下さい!!

 

 

★それでは、どの仕様が何年のモデルにあたるのか 分かる範囲(年号刻印の有る分)で一覧にしてみました。

Camillus や Imperial ならこの部分に製造年が刻印されてます。

これは 1988年なんで、 MIL-K-818D のスペックに則り製造されてます。


 MIL-J-818 =   スティーブンソン45 (US文字追刻ver)
                      アルスター48
                      カミラス 1949 ?
MIL-K-818 A = カミラス 1957 1958 1959 1960
MIL-K-818 B = カミラス 1961 1962 1963 1964 
           インペリアル 1961 1962 1964
MIL-K-818 C = カミラス 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972
                      インペリアル 1966 1967 1968 
    C小改1 = カミラス 1973 1974 1975 
                      インペリアル 1974 1975 
        C小改2 = カミラス 1976
                      インペリアル 1976
        C小改3 = カミラス 1977 ~ 1985
                      インペリアル 1977 1978 1979
MIL-K-818 D = カミラス 1986 ~ 1997
                      クィーン 1986
  A-A-59100 = カミラス 1998 ~ 2006

 

(仕様が発表されてから製品に適用されるまでは 約半年から1年程掛かるようなので それを見越して分けてあります)

所有されてる米軍ポケットナイフが、どの仕様規定で製造されてるか今一度見直してみるのも一興ざんすヨ!!


 

軍衣料のラベルみたいに ミルスペックナンバー が入ってれば良いのですが、残念ながら GIポケットナイフ 本体にはMIL番号の刻印が無いので刻印された製造年で判断するしかないですナ~!!

 

ただ、支給用ポケットナイフの1ダース梱包箱(1987年)に付いてるステッカーには・・・

しっかり、MIL-SPEC ナンバーの MIL-K-818D が入ってますネ~

 

 

こちらは カミラス の 1984年カタログ に載ってた S-1760 デモナイフ 

説明文から MIL-K-818C の最終改定版の製品ですネ!