<白い壁:第二章・・・23>
亮子とまゆこは黙ったまま、薬局の壁によりかかっていた。
まゆこは思い切って言ってみた。
「ご両親には、まだ病気のこと伝えてないの?」
「うん。伝えてない。会社を休んでることも言ってないし、
夏休みに帰省しないのは珍しいことじゃなかったから、
電話だけして終わり。」
「ご両親にも相談してみたら?」
「相談?したところで、何も変わらないわよ。
むしろ心配かけて、こっちに帰ってこいって言われるだけ」
「ご実家、遠いの?」
「うん。島根の端っこ。」
「そう・・・」
実家が自宅から1時間圏内のまゆこだが、
「実家に帰る」ことの大変さがなんとなくわかった。
「でも、亮子さん、こういうのもなんだけど、
初めて会ったときから、すごく変わっちゃったわ。
やっぱり誰かしら、そばにいてくれた方が少しはラクになるんじゃないかな?
お母さんにしばらく来てもらうとか・・・」
亮子は少し悩んだ顔をしたが、まゆこに笑顔を見せてこう言った。
「母親じゃ逆に息が詰まっちゃう。今のマンションで2人暮らしはちょっと厳しいし。
こういうときに頼りになる彼氏でもいればいいんだけど、
今はいないしね。
昔、ちょっと付き合った男から飲みの誘いがあったから、
病気の話をしてみたけど、へー大変だね~で終わり。
お大事になんて言って、電話を切ってそれきりよ。」
まゆこは言葉をなくしてしまった。
「だから、自分でどうにかしないといけないのよ。
まゆこさんみたいに優しい旦那様が私にもいればいいんだけどね~。」
なんだか少し嫌味にも聞える言葉だった。
「私の場合は、結婚してから病気になったから、たまたま夫がいたけど・・・」
言い返すつもりはなかったが、そんな言葉が口をついた。
「とにかく、そういうわけで、私は孤軍奮闘。なんとかするしかないのよ。
あと3ヶ月の猶予があるから、それまでに治してみせるわ。
合わせて半年、いい加減、良くなってもいいでしょ?」
亮子はどうしても一人で治すつもりでいた。
まゆこには何もできない。
こうして話を聞くことはできるけれど、亮子につられてしまっては
今度はまゆこの方がダメになる。
専門のカウンセリングが必要なんだ。
診察だけじゃダメだと思う。
まゆこはグッと力を入れると亮子に言った。
「一人でどうにかしようなんて甘いわよ。
亮子さん、せめてカウンセリングを受けた方がいいわ。
診察だけじゃなくて、専門家に言いたいことを言って、
それをきちんと対応してもらった方がいい。
もちろん、お金はちょっとかかるけど、
今の亮子さんには、それが必要だと思うわ。」
まゆこの勢いに押されたのか、亮子は驚いた顔をして聞いてた。
「カウンセリング・・・一度も受けたことないわ。・・・考えてみる。」
受付からまゆこを呼ぶ声がする。
「じゃぁ、私、行くから。亮子さん、気をつけて帰ってね。」
いつになくキビキビとまゆこは受付へ向かって行った。
(つづく)