<白い壁:第一章・・・33>
いつもキレイに保っていたはずの部屋
忙しくてもがんばっていた洗濯に掃除
外食が多かったから料理はそんなにやっていなかったけど、
それでも自炊できるときはやっていた。
仕事もできて、家事もできる。
マンションも自力で購入した『できる女』
それが緑川亮子だったはず。
なのに今は・・・
洗濯機に溢れんばかりの汚れ物、
隅にほこりがたまり、足跡がべたべたとついた床、
レトルト食品の空き袋の入ったゴミ袋の山・・・ができつつある。
部屋着も大目に買っておいたけど、もう限界だ。
今着ているものもほんのり汗くさい。
今日こそ洗濯をしなくちゃいけないのに、
ただ洗剤と柔軟剤と入れて、あとはボタンを押すだけ。
乾燥まで全部やってくれるのに、
それすら面倒でできない。
やる気がおきない、動きたくない・・・
でもやるしかない・・・
持っていたポテトチップスの袋をテーブルに投げるように置くと、
手をはたきながら、洗濯機に向かった。
とりあえず入るだけ洗濯物を入れて、洗剤と柔軟剤も入れる。
あとは乾燥までこの機械が全部やってくれる。
ただ、出来上がった洗濯物を畳むことが亮子にできるのか
そんなことすら心配になる。
立ったついでにトイレを済ませ、冷蔵庫からオレンジジュースを出して、
コップも使わずそのまま飲みほした。
空いた紙パックを潰して、ゴミ袋に入れる。
1,2,3・・・4つ目のゴミ袋だ。
ゴミ出しの日にどうしても起きられなくて、溜まってしまったのだ。
袋の口を縛ると、なるべく見えないようにキッチンの奥に追いやった。
そういえば、掃除機をかけたのはいつだろう?
まだ遠目ならキレイに見えるかもしれないが、
ペタペタという、足のうらの音と感触が汚れをあらわしている。
掃除機はすぐそこの扉を開ければあることはわかっている。
でも開ける労力が惜しい・・・
もう食べること以外、何もしたくない。
動かずに過ごしてしたい。
そう思いながら、亮子はうだる空気の中で、
着ていた部屋着のTシャツと短パンを脱ぐと、
シャワーを浴びに行った。
シャワーを出て下着を着けると、
最後の新しい部屋着、パイル地の上下に着替えた。
ちょっとスッキリした亮子は、テーブルに放ったポテトチップスの
袋を持って、冷蔵庫からペリエを取り出して、ソファに戻った。
ペリエの炭酸がノドに気持ちいい。
時計を見るともう15:00を過ぎていた。
亮子はあわててテレビのチャンネルを変えて、
引きこもってから唯一の楽しみとなっている2時間ドラマの再放送を
見るためにクッションを置いて座り直した。
洗濯が終わったら、畳まないとか・・・
誰かにやってほしいけど、こんな姿は友達には見せられないし、
親にも病気のこと自体言っていない。
仕方ない、とりあえずドラマが終わってから考えよう。
亮子はテレビに目を向けて、ポテトチップスを口に入れた。
(つづく)