<白い壁:第二章・・・10>
今日も暑いな・・・
手の甲であご下の汗をぬぐうと、亮子はベッドから下りた。
ぺたぺたと、掃除をしていないフローリングの床を歩いて冷蔵庫に向かう。
冷蔵庫から最後のコーヒーを取り出すと、ペットボトルのまま一気に飲み下した。
「おなかすいたな」
そうつぶやいて、冷凍庫を開ける。
冷凍のグラタンを取り出すと、レンジに入れた。
朝からグラタンって・・・とは思うものの、
食パンやごはんなど、少しでも手のかかるものは亮子の家にはない。
冷凍庫をもう一度開けて、インスタント食品の数を数える。
ひんやりとした空気が少し暑さをやわらげた。
また宅配を頼まなくちゃ・・・そう思う。
チンッとレンジが終了した音がした。
洗いかごからそのままフォークを取り出すと、グラタンを持ってテーブルに置く。
テレビとエアコンをつけて、コーヒーとグラタンの朝ごはんを始めた。
ふとカレンダーが目に留まる。
通院日まであと3日・・・
最近、物忘れが多くなってしまったから、通院日に○をするようになったのだ。
まゆこさん・・・
グラタンを食べながら、まゆこのことを思い出した。
いつも涼しげで、儚げで、夫に守られているまゆこ。
それに比べて私ってば・・・
鬱々とした気分になりかけた頃、グラタンが空になった。
食欲が満たされない。
テーブルの上に置いてあるスナック菓子に手を伸ばした。
バリッと袋を開けて、手の汚れなど気にせず、取り出してはむしゃむしゃと咀嚼する。
合間にコーヒーを入れながら、あっという間に袋は空になった。
おなかがやっと満たされた。
手についた菓子の粉を舐めとると、そのままTシャツの裾で手を拭いた。
だるい・・・面倒くさい・・・
洗濯物とゴミの山が目に止まる。
グラタンと菓子のゴミ、あと2,3口残ったコーヒー・・・
亮子の生活はだらしないとしかいいようがなくなってしまった。
通院も考えただけで億劫だ。
でも薬がなくなるから、行かないわけにはいかない。
えいっと勢いを付けて立ち上がると、
グラタンと菓子の空き袋を持って、ゴミ袋に向かった。
今日もゴミが出せなかった・・・起きるのが遅かったから・・・
そうして、またゴミの山ができてきた。
満杯になったゴミ袋の口を縛ると、ゴミ袋の山に投げた。
手前に落ちた袋・・・
その袋を見て、亮子は、このゴミは今の私みたいだ・・・と思った。
(つづく)