<白い壁:第二章・・・15>
薬局は今日も混んでいた。
結局、病院では亮子とは目も合わさず、
気づかないふりで出てきてしまった・・・
失礼なことしたかな・・・と少し罪悪感がまゆこの胸をよぎった。
座れなかったまゆこは、壁に背をもたれて立っていた。
また写真集でも開こうとバッグを開けようとしたときに、
ふととなりに人が来た気配がした。
「今日も混んでるわね」
亮子だった。
「あ、そうみたいね。混んでるわね」
おうむ返しのようにまゆこは返した。
まさかいきなり話しかけてくるとは思っていなかったからだ。
「処方箋出してくるわ」
亮子はそういうと、受付に向かって行った。
亮子さん、大丈夫なのかな・・・
まゆこの心配をよそに亮子は平気そうだ。
「もうこんな格好で病院に来ちゃったわよ。
メイクもアイブローだけだし。
笑っちゃうわよね。」
亮子は自虐的に笑った。
まゆこはどう対応していいかわからず、
何も言わずにただ愛想笑いをしていた。
「もう何もかもが面倒でさ~、病院もやっと来たって感じ」
その気持ちはまゆこもわかる。
たまに行かなくちゃいけないけれど、体と頭が動かない日があるのだ。
ただ、まゆこの場合、無理には行かずに日にちを変更してもらうが・・・
「大丈夫なの?」
やっとまゆこが口を開いた。
「大丈夫よ、大丈夫。薬も変えてもらったし。」
「そう、それならいいけど。無理はしない方がいいわよ」
「無理なんてしてないわ。ただちょっと自分にいらついてただけ。
おかげで、こんな格好で後悔してるわ。」
亮子の顔は笑っているが、目が笑っていないような気がした。
まゆこは少し亮子のことが怖くなったが、
この病気のことだから、症状は人それぞれ、
いろいろ事情もあるだろうからと納得するようにした。
(つづく)