<白い壁:第二章・・・20>
まゆこと亮子は、同じ時間の予約のはずだが、
まゆこはいつも少し早めに、
亮子は時間ギリギリか、少し遅れてくる。
そのせいか、診察の終了時間もズレてきているので、
相変わらず、待合室では言葉を交わすことがなかった。
この白い壁にかこまれた空間では、
2人はただの患者。
顔見知りで会釈程度の挨拶を交わす患者。
薬局では、たいてい後から来た亮子がまゆこに話しかけた。
一言、二言の場合もあれば、
稀にお茶に行くこともあったが、
大抵は、薬局で合流し、そのまま離れていくことが習慣となった。
まゆこの目から見ても、亮子は以前より変わった。
服装により構わなくなったし、メイクもほとんどしてこない。
もちろん、洗濯もしてあるだろうし、お風呂にも入っているだろうから、
一応、清潔感は残っているのだが、全体的にだらしない雰囲気があるのだ。
確か、11月には仕事に復帰すると言っていた気がするが、
11月まであと2週間しかない・・・
いざとなれば、亮子は以前の亮子に戻るのだろうか?
まゆこは自分の経験から、それは難しいのではないかと思った。
まゆこも最初は「いつでも元の自分に戻れる」と思っていたが、
それからもう数年経ってしまった。
もちろん人それぞれだから、まゆこにできなかったことを
亮子はできるのかもしれないが、
今の亮子を見る限り、心配でならない・・・
亮子は何か無理をしているんじゃないか?
でもそれを私が解消してあげることはできないだろう・・・
ただ見守ること・・・それしかできない自分が歯がゆい。
まゆこは気づいていなったが、
それまで自分と雄二のことしか考えられなかったまゆこが、
他人の心配をするようになった。
これも一つの前進だろう。
まゆこの前進に対して、亮子の後退・・・
2人は今、入れ替わろうとしている。
(つづく)