<白い壁:第二章・・・21>
結局、最初の「1週間に1度は洗濯、食器洗いをする」という目標は、
たったの1回で反故になった。
洗濯も食器洗いも、どうしても仕方なくなったときに、
渋々やった。
お風呂も、湯船はしばらく入ってない。
シャワーで充分になっていた。
そのシャワーも面倒くさくて浴びない日もあるくらいだ。
メイクはもう何日してないだろう。
スッピンで外を歩くことに抵抗がなくなっていた。
薬を変えたのに・・・
先生に訴えて、今度は薬が増えた。
それを飲むたびに、「私は治る、私は治る」とつぶやくが、
そんなの全く効果がなかった。
何もする気が起きない・・・
ソファに根が生えたように、一日中横になっていることも増えた。
そのまま食事を取ることも、スナック菓子を手に取ることも増えた。
それに連れ、当然ながら体重もまた増えた。
あと2週間だったはずなのに・・・
壁のカレンダーを見て、亮子は泣きたくなってきた。
今の自分に、元のような会社生活が送れるとは思えない。
なにせ、外に出ることがイヤになっているのだから・・・
会社には、10日前に休暇の延長を申請した。
もちろんメールで。
電話で話す気力もなかった。
会社側からの返事はOKだった。
これでまた3ヶ月、会社に行く必要がなくなった。
そういえば、そのことはまゆこには伝えてなかった。
亮子はスナック菓子を食べた手を着ていたTシャツで拭き取ると、
立ち上がって冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫の冷気が、亮子の目を覚ます。
コーラを手に取ると、その場で一気に半分くらい飲んだ。
のどを通るシュワシュワとしたはじける感じが少し痛い。
掃除しなくちゃいけない。
洗い物しなくちゃいけない。
買い物に行かなくちゃいけない。
メイクもして、きちんとしなくちゃいけない。
・・・~しなくちゃいけない。
この言葉が亮子のやる気を無くさせる。
あと3ヶ月と2週間後、ほんとに私は会社に戻れるのだろうか?
体型も変わってしまった。
性格もだらしなくなってしまった。
でも変わらないといけない。
また「いけない」だ。
今の姿が自然体となってしまった今、亮子にとって、
「何かをしなければならない」ということは、
とても面倒で、厳しいことになってしまった。
もう考えるのはよそう。
復帰もまだ先になったし、その間になんとかなるだろう・・・
考えることも億劫になってしまった亮子は、コーラを持ったまま、
またソファに戻って行った。
(つづく)