60歳を過ぎると、いろいろな病気の影が忍び寄ります。大病を患うのも老いた証拠のような気がします。

かくいう私も、去年、64歳のときに心房粗動という心臓の病気になりました。生まれてこのかた、病気らしい病気もせず健康そのもの、もちろん手術や入院などしたことのない私も、寄る年波にはあらがえなかったというわけです。

 

心房粗動は、心臓の神経回路に異常をきたすことで、心拍数が粗くなる、つまり超速くなる病気です。

とくかく健康体で、心拍数を測った記憶がないので、病気になる前の心拍数がわからないのですが、治療して心房粗動が完治した今は、だいたい1分間に70回くらいです。それが病気が発覚したときには140回くらいあったので、通常の倍の速度ということになります。だいたい全速力で走った後の脈拍と病院の先生に言われたので、心臓だけが常に、全速力で走っている状態になっていたわけです。

不思議なことに、とりたてて自覚症状はありませんでした。というか、それゆえにとても危険な状態にあったのだなと、あとから少し怖くなりました。

 

心房粗動と診断されて、「ああ、そうだったんだ。なるほどな。」と納得したのが、夜、寝ているときの心拍数です。先ほど言ったように、四六時中、常に140回ですから、起きているときは気づかなくても、さすがに布団に横になり、眠りにつこうとすると心臓の鼓動が異常に速いなと思うわけです。それでも、「ああ、速いなぁ」と思うくらいで、その内、眠りについてしまい、起きたときには忘れてしまいます。その程度の自覚症状しかありませんでした。

 

では、なぜ、病院に行ったのか?それがまったくの偶然なのですが、運動とかしたわけでもないのに、ある日、突然、右足のふくらはぎの真ん中あたりの1点が、歩くときに足を引きずるほど痛くなったのです。「えっ!?なにこれ?」と思い、ネットで「ふくらはぎ」「痛み」「病気」のようなキーワードで検索してみると、「血管の詰まり」のような記事がいくつかありました。「脳梗塞の予兆」的な記事もあったような気がします。

「だとしたら大変だ」となり、さっそく翌日、近所の循環器科のあるクリニックを受診しました。「まず、心電図をとりましょうね。」と言われ、心電図をとり終えてしばらくすると、先生が、「すぐに急性期の大病院に行きなさい!」と言うのです。「心拍数が異常に速いから、このままでいると非常に危険。電車で移動して何かあるといけないから、すぐにタクシーで行きなさい。」と言われ、紹介してもらった大病院へと行きました。そこで「心房粗動ですね。今まで気づきませんでしたか?」と言われ、「あ、はい。」となったのです。

 

振り返ってみると、夜、寝るときに「脈が速いなぁ」と思いはじめてから、かれこれ2~3ヵ月経っていたような気がします。その間、ずっと心臓だけが全速力で走り続けていたわけですから、いつパンクしてもおかしくなかったのかもしれません。つまり、突然死と隣り合わせだったのかも、と後で気づいて怖くなりました。

 

ちなみに心房粗動を気づかせてくれた「ふくらはぎの痛み」は、翌日には何事もなかったかのように完治しており、一応、クリニックの先生にも、大病院の先生にも伝えたのですが、ふくらはぎを見ることさえなく、「まあ、大丈夫でしょう。」と言われました。

 

まさか、神のお告げ?などとオカルトチックな話をするつもりはありません。でも、本当にふくらはぎが痛くなってくれてよかったなぁと思います。

 

2回の手術と入院を経て今は完治している心房粗動の、治療については次回、続編でお話しようと思います。今日はこれまでです。