「いきなりクライマックス」の本編です。

「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」という老人特有のおならのことをうちの奥さんは「地獄の扉」と呼びます。アニメや映画の中で、錆びついた鉄製の重い扉が「ぎぎぎぎぎぎ」と開く、あの音に似ているからだと思います。そしてもちろん「地獄」とは、扉の開いたあとにやってくる「臭い」のことです。

 

さて、63歳を過ぎた頃から「地獄の扉」が開くようになったお話は前回しました。今回はまず、もうひとつ違う老化現象の話をします。

ちょっと冷えただけで下痢しやすくなった、という老化現象です。「じゃりン子チエ」という漫画をご存じでしょうか?私の年代なら知らない人はいないし、テレビアニメはかなり再放送を繰り返していたので、たくさんの人がご存じだと思います。その漫画の登場人物に、「テツ」という主人公チエちゃんの父親がいます。というか、事実上、彼が主人公とも言える漫画なのですが、喧嘩をさせれば世界で二番目に強いというのが彼の特長です。その彼が唯一勝てないのは、自分の母親。そして、その彼の唯一の弱点が「下痢」です。

テツのトレードマークはステテコに腹巻なのですが、腹巻がないと彼はすぐにトイレに駆け込みます。そう。お腹を下して、ピーピーになってしまうのです。

 

前置きが長くなりましたが、年を取った結果、私はテツと同じになってしまったのです。この症状は、50代までは一切ありませんでしたので、間違いなく老化現象です。

夏以外に室内で靴下をはかずに食事をすると、すぐに下痢をします。ほとんど水に近い水便です。

一番困ったのは、「半ズボン」をはけなくなってしまったことです。私は半ズボンの解放感が好きで、夏になる前、5月とか6月頃から半ズボンをはきはじめ、7~9月は(仕事以外では)ずっと半ズボンで過ごしてきました。

それなのに、です(涙)。半ズボンなどはいた日には、何か食べるたびにトイレに直行です。

 

さて、63歳になった、ある日のこと。自分の家からすぐ近くの交差点で、半ズボンをはいて信号待ちをしていました。季節としては、6月くらいだったと思います。まだ半ズボンが苦手になったことに気づいていない頃です。

ふと、おならがしたくなりました。まわりにはほかの歩行者はいません。しめしめと思い「ぶっ」、実際には「ぶぶぶぶぶぶ」とやりました。

 

ん?すると、なにやら股間に違和感が。生暖かい半固形の液体が肛門のあたりから太ももに向かって流れているような気がします。「まさかッ!」。

信号が変わるとわき目もふらず、自宅に駆け込みました。いや正確には走るとやばそうだったので、そろそろと慎重に歩いて戻りました。

 

「やっぱり」。半ズボンとパンツを一緒に脱いで恐る恐るのぞいてみると‥‥。これ以上は描写するのを控えさせていただきますが、悲惨な出来事が起きていました。

 

「くそちびり」という言葉も、昔流行った漫画でよく使われていましたが、まさにそれです。「おもらし」とも言います。

 

まったく、やれやれです。老いるということの残酷さ。もの悲しさ。それを痛いほど実感した1日になりました。妻に話したら大爆笑されました。

 

それ以来、よほど真夏の暑い昼間以外は半ズボンを封印し、なにより誰もいないからといって外出先でおならをするのを絶対に我慢するようになりました。我慢できないときは、わざわざ大きな方のトレイに入り、おならをするようにしています。