<試験>
一生でどれくらい試験を受験するでしょうか。小学校のときから期末試験や中間試験、また高校受験に大学受験。社会人になっても試験が終わりません。
資格試験に昇格試験などいろいろ。
金融機関では、銀行業務検定試験というものがあります。税務や財務・法務・外国為替など銀行業務に関わる内容の試験です。近年では、年金アドバイザーやコンプライアンス、相続アドバイザーなど銀行の業務が広がったことからいろいろな試験が新設されています。
先日も相続アドバイザー3級の試験がありました。この試験自体は2回目ですが、今回は前回が簡単だったことから難しくなっていたとのことです。
試験によって簡単さや難解さにばらつきがあると、受験したときにより運不運があるのは少し不公平を感じますが、しかし試験というものはこのようなものです。
試験の合格も大切ですが、合格のために勉強したことの方が大切です。かならず勉強したことは、実務に役に立ちます。私はそのように思っています。また、そう思わないと受験勉強などできません。
<相続こぼれ話>「遺言 子なし夫婦編2」
ある金融機関の無料相談会でお会いした、神妙な顔でしかしどこか気高さを漂わせたご婦人のご相談のお話。
そのご婦人は、座席に座るなり、自分の自慢話を始めました。
それによると、彼女は、以前自宅において保育所を経営していたと。たいへん人気の高い保育所で、入所するのに抽選になるほどで、園児や親御さんからもたいへん慕われていたと。
その後は、保育所は重労働だったので閉園し、悠々自適な生活を過ごそうと思ったが、市役所から民生委員になってほしいと頼まれたので、民生委員をやっていたが、年も取ってきたので2年前に辞めさせてもらったと。
公職を退いた後は、夫婦で趣味である茶道を本格的に取り組み、多くのお弟子さんを指導していた。しかし、ご主人が亡くなったので今はお弟子さんをとっていないと。
長々とお話が進んだのですが、本題である相談内容が見えてきません。
「ご相談内容はどのようなことですか。」と投げかけるのですが、まだまだ話が続きます。市会議員と親しくて、言えば何でも聞いてくれるとか、市長と市役所ですれ違うと、市長から声をかけてくるなど、自分は顔が広いんだということを盛んに話していました。
十分に自分の自慢話ができたのか、やおら相談に入りそうな雰囲気になってきました。
そこで、ふたたび「今日のご相談はどのようなことでしょうか。」とふたたび訊ねてみますと、内容は、亡くなったご主人の相続についてでした。
ご夫婦には子供がいなく、相続人は奥さんとご主人の妹ふたりの様子。
相続手続きの流れについて大まかに説明しました。黙って話を聞いています。説明の中で遺言書の有無を確認しなければならないことを話したのですが、特にその時は反応がありませんでした。
遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議が必要であることを伝えました。それについても理解を示していましたし、夫の妹と交流があるかと訊ねますと微笑みを浮かべ、相続人の間は円満なのだろうと思っていました。
その日は、これといった質問もなく、結局自慢話をしたくて来たのかと思っていましたが、翌日電話がかかってきました。
「主人は、遺言書を遺したと言っていた。その遺言書は近くの銀行の貸金庫に入っている。しかし、銀行は貸金庫を開けてくれない。どうしたらいいのか。また、早くしないと妹に財産が取られてしまう。」と言うのです。
昨日の様子と大違いでびっくり。
電話では詳しいお話が聞けないので、後日自宅に伺い、詳しくお聞きすることにしました。
ご自宅は、閑静な住宅地にある大きな邸宅。庭も広く、茶室らしき建物もあります。
玄関に入ると、お香のいい香り。応接間に案内され、そこでお話を聞くことにしました。
話しによりますと、夫が生前に財産をすべて自分に相続させるという内容の遺言を書き、その遺言は大切なので、近くの銀行の貸金庫にしまってあると聞いた。そこで、銀行に行って理由を言って、貸金庫を開けてくれるように頼んだが、相続人全員の印鑑が必要だと言っている。どうすればいいのか。
妹たちは、夫の財産を狙っているように思う。葬式の時もそのようなことを言っていた。
と、一気に話しました。事務所で話を聞いたのとはご婦人の雰囲気が違います。やはり、外に出ると“奥様風”を装っていたのでしょうか。家では本音が出たのでしょう。
そこで、ご婦人に確認しました。その遺言書は、「自筆証書遺言」それとも「公正証書遺言」かと。
そうしますと、夫からは大阪で作成してきたと聞いていると言っています。つまり、公正証書遺言だと想像できます。公正証書遺言であれば、公証役場に確認すれば、いつ・どこで作成したかわかります。
早速自宅近くの公証役場に、戸籍謄本などを持って確認に行きました。そうしますと、大阪市内のある公証役場で作成していることが判明しました。
そこで、その公証役場を訪れ、公正証書遺言の謄本つまり公正証書遺言原本の写しを作成してもらいました。
内容は、ご婦人が言っていた通り、“全財産を妻に相続させる”というものでした。したがって、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、安心して夫の財産を相続することができます。
もしこの遺言書が、公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言であればこのようになりません。遺言の内容を確認しようと思ったら、貸金庫から取り出さなければなりません。つまり、相続人全員の印鑑が必要となります。相続人の間が円満な関係であればいいのですが、そうでないと貸金庫を開けることができないかもしれません。
また、遺言書は貸金庫に保管しておくのも考えものです。信頼できる方たとえば遺言執行者などに保管をお願いしておく方が無難だと思います。
ともあれ、ご婦人は妹に財産が取られることもなく、茶室もあるあの大きな邸宅を無事相続することができました。
ご主人に感謝です。これで安心した生活をすることができます。あとは、自分の遺言書を作成して、残された人が相続争いにならないようにしておくことをお勧めしました。
11月に入り朝晩はすっかり寒くなりました。
山々の紅葉も見ごろ。そろそろカニの季節です。近江町市場にもたくさんのカニが並べられるでしょう。また、寒ブリも待ち遠しいです。