【9468】KADOKAWA/大ヒット“ELDEN RING”一服も、総還元性向は200%圏。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9468】KADOKAWA(東証プライム)  OP

現在値  3,035円/100株  P/E  38.7  P/B 2.09  3月配当株主優待 

出版大手KADOKAWAと動画サイト運営のドワンゴが統合、電子書籍、アニメ等。
配当金は3月末一括の年30円配当のため、配当利回りは0.99%となります。

KADOKAWAは株主優待制度を実施しており、3月末時点(1年保有)で100株以上を保有する株主に対して、3,000円分の自社ポイントを進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.98%となります。なお、3年以上の長期保有により進呈額が4,500円分となりますので、その場合は約2.47%となります。

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 2,099億円、営業利益 136億円、EPS 77.4円 

■2022年3月期 売上高 2,212億円、営業利益 185億円、EPS 106.0円 

■2023年3月期 売上高 2,554億円、営業利益 259億円、EPS 90.9円

■2024年3月期 売上高 2,511億円、営業利益 178億円、EPS 78.0円 ce

□2023年6月1Q 売上高 588億円、営業利益 32.6億円、EPS 27.5円 (8/3) 

□2023年9月2Q 売上高 1,200億円、営業利益 80.0億円、EPS 46.7円 四e

2023年3月期の売上高はYoY+15.5%の2,554億円、営業利益はYoY+40.0%の259億円となり、3Qの増額見通しを更に上回って大幅な増収増益となりました。主力の出版セグは巣ごもり反動減を価格改定でかわし増収も、紙資材高騰や工場・物流投資により減益となりました。他方、映像セグは「陰の実力者になりたくて!」「オーバーロード」の自社IPが内外で伸長して増収増益となったほか、ゲームセグは「ELDEN RING」の世界的ヒットが大きく貢献したほか、自社IPのモバイル化も想定超に寄与し、飛躍的な増収増益となりました。


進行期である2024年3月期の予算については、売上高はYoY▲1.7%の2,511億円、営業利益はYoY▲31.4%の178億円と大幅減益を見込んでいます。出版セグは巣ごもり反動減の継続や資材費等の経費増で続落する一方、映像セグは「推しの子」「この素晴らしい世界に爆焔を!」といった有力IPの牽引で続伸を見込みます。他方、好調だったゲームセグについては、「ELDEN RING」の反動減が大きく、同DLCの投入や「ARMORED CORE Ⅵ」のリリースでは埋めきれず、大幅減益を見込みます。尚、8月3日に開示済の1Qは、売上高588億円&営業益32.6億円と計画線ながらも低い進捗となっています。

 

進行期は2025年3月期を最終年度とする3年中計で、売上高を2,212億円→2,500億円に、営業利益を180億円→250億円にそれぞれ引き上げる計画としていました。然しながら、「ELDEN RING」が想定超のヒットとなり、初年度で計数目標を早々に達成したことから、次回中間決算で新中計にロールすることとしています。

 

取組事項としては、①製作、➁流通、③体験の3領域でそれぞれ事業強化を図るほか、全社で“グローバル・メディアミックス”を掲げ、海外展開も推進します。①製作領域はコミック読者拡大やラノベ再成長により、新規IPの創出を醸成するほか、アニメ・実写の内製化により新作製作能力の増強(30本/y→40本/y)を図ります。

 

また、ゲーム化に適したIPのコンソールゲーム化や、全社横断ユニット制によるIPのモバイルゲーム化とメディアミックスなど、IPの育成にも注力します。特にゲーム事業は傘下のフロム・ソフトウェア(持分70%弱)、スパイク・チュンソフトといった有力開発会社を抱え、「DARK SOULS」「ELDEN RING」「ARMORED CORE」に代表される強力IPを保有しています。ただ海外向けに関しては、提携先のバンナムHDに開発費を拠出してもらい、代わりに同社に販売権を付与しているため“取り分”が少なく、業績改善余地が残ります。

 

バンナムHDとはそのような関係性である一方、高騰するゲーム開発費を手当するため資本調達を含めた提携関係も推進しています。2021年には本体がソニーとサイバーエージェントを相手先とした三割増資で100億円を調達したほか、その後テンセント傘下のSixjoyからも300億円を調達しています。それだけでなく、翌2022年には子会社のフロム・ソフトウェアが、Sixjoyとソニー系のSIEを相手先に363億円を調達しており、本格的な海外展開を視野に入れた大型の資金手当てと業務提携が進んでいます。


他方、株主還元に関しては、年30円配当&配当性向30%をベースに、横引きの年30円(配当性向38.4%)を見込んでいます。一応、自社株買いについては機動的な実施をすることとして200億円(5.64%)の取得枠を設定しており、足許時点で既に150億円超を買い込んでいるため、試算される総還元性向は200%超に達する見通しです。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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