【3836】アバント(東証プライム) NT
現在値 1,427円/100株 P/E 26.4 P/B 5.12 6月配当 株主優待なし
連結経営・会計システムのパッケージソフト開発、ライセンス販売など。
配当金は6月末の年1回15円であり、配当利回りは約1.05%となります。
アバントは株主優待制度を導入しておりません(記念優待の実施実績はあり)。
業績を確認します。2022年6月期より企業会計基準第29号の新収益認識を適用しています。
■2020年6月期 売上高 156億円、営業利益 22.7億円 EPS 40.9円
■2021年6月期 売上高 162億円、営業利益 27.9億円 EPS 50.2円
■2022年6月期 売上高 187億円、営業利益 32.4億円 EPS 54.3円 新収益
■2023年6月期 売上高 218億円、営業利益 31.0億円 EPS 53.9円 ce
□2022年9月1Q 売上高 50.2億円、営業利益 6.1億円 EPS 9.8円(10/31)
□2022年12月2Q 売上高 110億円、営業利益 15.0億円 EPS 23.9円 四e
2022年12月期の売上高はYoY+15.1%の187億円、営業利益はYoY+16.1%の32.4億円となり、期初計画を上回って2桁増益維持しました。「DivaSystem」を中心とした連結会計(GG)事業はSaaS型の“LCA”の導入が進んだほか、運用コンサルのBI(DX推進)事業も新規獲得やデータプラットフォーム構築案件が伸長し、これら2事業の伸長に連れてOS事業も2割増収となりました。利益面については、増床による賃借料や外注費の増加があったものの、増収効果や在宅勤務による賃料減や水光費減で飲み込み、2桁増益を確保しています。
進行期である2023年6月期の予算については、売上高がYoY+16.6%の218億円、営業利益は▲4.5%の31.0億円を見込んでいます。期初時点の受注残高は、GG事業・OS事業を中心にYoY+28.7%の61.3億円と高水準を確保しています。GG事業は、SaaS型連結会計の“LCA”の採用数増加と導入時コンサルの拡大、DX事業についても旺盛なデータプラットフォーム構築ニーズ及びBIソリューション案件の増加が見込まれるほか、連れてOS事業も続堅調増となる見通しです。他方で利益面については、例年どおり積極採用を見越した上での減益予想としていますが、実際はバッファ含みと解されます。
進行期は5箇年中計の最終年度であり、売上高を121億円→180~220億円へ、営業利益を16億円から31~38億円へ、其々引き上げる計画としています。また、売上高成長率と営業利益率の合計値GPPを40%をKPIとしており、売上(利益)が伸びない場合でも利益(売上)を確保するほか、ストック型売上比率を従来の33%から70%まで高める計画です。今回開示された予算に照らせば、売上高はレンジ上限&営業利益はレンジ下限であり、保守的な予算組み傾向を勘案すれば達成される公算が高い一方、KPI目標であるGPPは直近実績32.6%、ストック売上比率は同34.6%に過ぎず、KPIは大幅未達の見通しです。
今次中計における取組事項として、①グループ総合力の追求、②M&A、③ビジネスモデル転換の3点を挙げています。本邦の連結決算市場のTAMは精々200億円、管理会計まで含めても400億円程しかないため、おのずと周辺領域への業容拡大が必須となり、会社側ではストック型への移行を含め③のモデル転換を急いでいるような状況です。
具体的にはAWSを活用したSaaS型クラウドサービス(LCA)の提供により、ストック性を高めるほか、資金力が限られる中堅・中小企業なども営業対象に拡大します。また、経理部門よりも受注領域の拡張性が高い経営企画部門やCFOを顧客とする管理会計分野の深堀りを進めており、財務情報分析のBIツールを手掛ける英国メタプラクシスの株式を取得し、同社の2位株主となっています。なお同社は業績が急悪化したため、当社は直近期末で全減損を強いられた経緯があるものの、他の経営情報分析ツールであるCompass等とともにストック性ツールのため、メニュー拡充の観点からは一定の意義があったと解されそうです。
株主還元については、2円増配となる年15円配を予想しています。当社は配当ポリシーをDOE基準とし、概ね5%程度を目途に還元しているほか、中長期的には同基準で“東証全上場企業の上位10%である8%を目指す”こととしていますが、無借金で63.8%という高い自己資本比率を鑑みると還元不足は明らかであり、DOE基準のは単なる“後付けのエクスキューズ”に過ぎないものと捉えています。10年長計では2027年6月期に配当10倍(分割考慮後40円)を目標としているものの、依然として可視性に乏しく、課題が残るものと考えています。
*参考記事① 2021-10-27 1,640円 OP
【3836】アバント/中計は下限目標まで達成視野も、株主還元ポリシーに課題。
*参考記事② 2020-11-16 1,042円 OP
【3836】アバント/ストック比率伸び鈍いが、DX分野で改めて期待。
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