【4912】ライオン/「キレイキレイ」特需は一服、転嫁値上げの進展と青島ライオンの成長が鍵。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4912】ライオン(東証プライム)  OP

現在値 1,422円/100株  P/E 20.3  P/B 1.62  6月配当  12月配当・株主優待

歯ブラシ国内首位、トイレタリー3位。バファリン等の薬品や工業用品も。アジア強化。
配当基準日は年2回・合計25円配当のため、配当利回りは約1.76%となります。

 

ライオンは株主優待制度を導入しており、12月末現在の100株以上保有の株主に対して、3,000円分(推定)の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.86%となります。


業績を確認をしていきます。IFRS採用企業となります。

■2018年12月期 売上高 3,494億円 営業利益 341億円 EPS 88.1円 

■2019年12月期 売上高 3,475億円 営業利益 298億円 EPS 70.7円 

■2020年12月期 売上高 3,553億円 営業利益 440億円 EPS 102.8円

■2021年12月期 売上高 3,662億円 営業利益 317億円 EPS 81.7円 

■2022年12月期 売上高 3,750億円 営業利益 275億円 EPS 68.7円 ce
□2022年3月1Q 売上高 873億円 営業利益 104億円 EPS 27.5円(5/10)

□2022年6月2Q 売上高 1,790億円 営業利益 123億円 EPS 30.6円 ce

2021年12月期の売上高はYoY+3.1%の3,662億円、営業利益はYoY▲29.3%の317億円となり、期初予想を若干上回って着地しました。主力の一般トイレタリー事業は、新型肺炎禍特需に沸いた「キレイキレイ」が前年の7割に留まり、住宅用洗剤も反動減がみられたものの、オーラルケア用品が堅調に推移しました。一方、海外はアジア各国でハンドソープ市場の拡大がみられたほか、産業用品も化学品分野が堅調に推移しました。利益面については、好採算品である「キレイキレイ」のミックス低下、新工場の減価償却費増で3割減益となったものの、広告費とコスト削減で予算比上振れしています。


進行期である2022年12月期の予算は、売上高がYoY+2.4%の3,750億円、営業利益はYoY▲11.8%の275億円を見込んでいます。一般トイレタリー事業は、オーラルケア用品の堅調推移も、「キレイキレイ」等は横ばい前提、衣料用洗剤・柔軟剤等は競争激化が予想されます。他方、海外は中国を中心にオーラルケア用品、ファブリックケア用品の伸長が見込まれます。利益面については、原材料価格高騰による採算性の大幅な悪化や、減価償却費・システム償却費などを織り込み、2桁の減益が継続します。


当社は昨年2030年12月期を最終年度とする10年長計「Vision2030」を策定しており、売上高6,000億円(CAGR5.7%)、事業利益500億円(CAGR5.8%)を目指しています。進行期からの向こう3年はその1stStageとして2024年12月期に売上高3,662億円→4,200億円、事業利益309億円→320億円までそれぞれ伸長させる計画です。直近10年程で利益水準こそ5倍以上に大幅に伸長したものの、売上高は殆ど変わっておらず、まずは市場開拓・深耕によるトップラインの大幅な拡大が必須であり、喫緊の課題はコスト転嫁の値上げとなるものの、会社側は依然慎重な姿勢を取っています。

 

項目別では①新商材投入(+300億円)、②新規エリア開拓(+600億円)③海外既存(CAGR10%)、④国内既存(CAGR2%)を成長領域と定めています。①は生活様式の大幅な変化にともない、オーラルケアでは口からの全身健康とQOL向上を織り込んだ商材拡張や、感染予防では社会での衛生ソリューションの提供、スマートハウスでは家事新習慣の提案など、トイレタリーを軸とした再定義により、高付加価値化を図ります。

 

②・③の新エリアと海外は、中国を最重要市場に定義づけ、成長著しい青島ライオンを向こう10年で売上高を1,000億円(CAGR21.8%)規模に成長させます。特に中国沿岸部ではハブラシ・ハミガキの高級品志向が強まってきており、当社の「システマ」「クリニカ」が日本品の“獅王品質”として認知が進んでいるため、今後は業務用やEC・農村部へのすそ野拡大を狙います。特に中国での当社ハミブラシシェアは4.4%(4位)、同ハミガキは1%(13位)に過ぎないため、大きなTAMが残されているような状況です。

 

財務面については、長短合わせて20億円程の借金に対して、1,000億円ほどの現預金を確保しており、自己資本比率は58.8%と極めて盤石な財務体質となっています。昨年竣工した香川・坂出新工場(ハミガキ)のように、工場の新設・増設への資金需要が定期的に存在するものの、キャッシュフローは十分余裕がある状況です。株主還元は配当性向30%を基準に牛歩増配させており、1円増配の年25円配を予想しているほか、中計1stStageは毎期増配を掲げています。また、本年2月には100億円(2.3%)の自社株も取得しており、やや株主還元に傾斜してきたような印象も受けます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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