【9672】東京都競馬/競馬人気回復でSPAT4歩合賃料伸びる、株主還元ポリシーに変化も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9672】東京都競馬(東証プライム) OP


現在値 4,350円/100株 P/E 14.5  P/B 1.64  6月優待 12月配当優待

大井競馬場の大家。ネット投票「SPAT4」の歩合収入が主力。倉庫やサマーランドも。
配当金は年2回・合計65円配当のため、配当利回りは1.49%となります。

 

東京都競馬は株主優待制度を実施しており、12月末時点の単元株主に対し、大井競馬場の入場パス、サマーランド招待券等を進呈していますので、26,000円で換算した場合の配当優待利回りは約7.47%となります。

業績を確認していきます。
■2018年12月期 売上高 227億円、営業利益 66.3億円 EPS 158円 

■2019年12月期 売上高 248億円、営業利益 79.8億円 EPS 182円 

■2020年12月期 売上高 287億円、営業利益 111億円 EPS 181円 

■2021年12月期 売上高 318億円、営業利益 128億円 EPS 320円

■2022年12月期 売上高 350億円、営業利益 131億円 EPS 289円 ce
□2022年6月2Q 売上高 166億円、営業利益 68.2億円 EPS 172円 ce


2021年12月期の売上高はYoY+10.5%の318億円、営業利益はYoY+14.6%の128億円となり、概ね期初予想線での着地となりました。公営競技事業は、大井競馬で南関3場の場外発売が無かったものの、東京大賞典の売得金が売上レコードを大きく更新して70億円に迫る水準となったほか、操作性向上や決済銀行を増やしたネット投票「SPAT4」の新規会員獲得が順調に推移し、歩合売上が増加しました。他方、遊園地事業については依然として入場者数を制限していることもあり、イベントやTV制作会社、レンタルカート事業者へ会場貸しをするなどしたものの、セグメント赤字が継続しました。


2022年12月期の通期見通しについては、売上高がYoY+10.1%の350億円、営業利益はYoY+2.6%の131億円を予想しています。公営競技事業については好調な「SPAT4」の続伸と歩合収入の増加を見込むものの、システム更新費用と委託費増が重く増益幅が限定的となります。倉庫事業についても、昨年9月に竣工して日本通運に一棟貸ししている勝島第1地区5号倉庫が通期稼働するものの、償却費増と取得税で微減益想定です。他方、遊園地事業は昨年5,000人に制限していた入場制限の緩和により、新型肺炎禍前比で85~90%水準の入客回復を前提に赤字幅の縮小を見込みます。

 

進行期は2025年12月期を最終年度とする中計の2年度目の位置付けであり、計画期間の5年間で売上高を287億円→400億円に、営業利益を111億円→150億円にそれぞれ引き上げる計画としています。向こう5年間で設備投資に500億円を投じる計画であり、公営競技に300億円、倉庫事業に140億円、遊園地に40億円、その他に20億円を配分する計画です(うち新規更新400億円、既存修繕100億円)。計数達成の蓋然性については、目下の競馬人気の持続力の如何に依るところが大きいものの、足許のモメンタムの強さからすれば、達成可能性は十分にあるものとみられます。

 

主力の公営競技については、新型肺炎禍における巣ごもり需要の高まりやゲームを契機とした中央競馬人気の復活により、地方競馬売上も年率2桁成長して全場で売上1兆円を伺う水準にまで急回復していることから、売上の92%を占めるネット投票への投資を強化します。「SPAT4」については本年10月に第5次更新を予定しており、重賞投票集中によるシステム負荷の軽減と機能性向上を図ります。また、安定収益基盤の拡大を企図する倉庫事業についても、昨年習志野市で物流素地6.7千坪を60億円で取得しており、2024年3月の竣工・賃貸開始を予定しています。

 

財務の状況については、自己資本比率は66.2%と高水準をキープしており、有利子負債を手許現金と有価証券でほぼほぼネットしています。株主還元については、本5年中計期間中の配当性向を20~30%としているものの、現状の予想配当は期末のシステム減損計上を織り込んでなお22.4%水準の年65円配当に留まっているため、還元強化が期待されます。それでも昨年は発行済株式の4%に及ぶ50億円程の自社株買いを実行したため、この辺りの還元ポリシーには若干の変化がみられます。

 

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