【8960】ユナイテッド・アーバン投資法人/翌期の急回復前提は過大、売却と内部留保活用が論点。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8960】ユナイテッド・アーバン投資法人(東証REIT) OP

 

現在値 118,600円/100株 PER22.1  P/NAV0.74  5月分配 11月分配 


丸紅をスポンサーとする総合型。2010にNCIを吸収合併、用途・地域分散を強調。
予想分配金は年2回の合計5,400円配で、分配金利回りは約4.57%となります。


業績を確認していきます。DPUは分割を遡及修正しています*。

■2018年05月期_第29期 営業収益 291億円、経常利益 119.7億円 DPU 3,530円

■2018年11月期_第30期 営業収益 257億円、経常利益 117.8億円 DPU 3,473円

■2019年05月期_第31期 営業収益 272億円、経常利益 124.1億円 DPU 3,661円

■2019年11月期_第32期 営業収益 246億円、経常利益 105.4億円 DPU 3,435円

■2020年05月期_第33期 営業収益 235億円、経常利益 96.3億円 DPU 3,470円

□2020年11月期_第34期 営業収益 219億円、経常利益 70.9億円 DPU 2,300円ce

□2021年05月期_第35期 営業収益 239億円、経常利益 95.9億円 DPU 3,100円ce

2020年5月期_第33期については、営業収益が前期比4.5%減の235億円、経常利益は同8.6%減の96.3億円となり、期初の増収増益予算から一転して減収減益となりました。前期取得のホテル2棟(甲子園・すすきの)の通期寄与と、期中取得9物件(※後述)の一部寄与があったものの、折からの新型肺炎の影響によりホテル割合が25%を占める当法人は大きな影響を受けました。ホテルについては2月から歩合賃料が喪失しているほか、固定賃料部分も免除したため、実に▲16.3億円の減収影響を受けています。そのため、他の商業アセット等の歩合賃料喪失等の影響額も含めた新型肺炎によるEPS押し下げ効果は総額▲524円に上ったものの、DPUについては内部留保の掃き出しで同1%増となる3,470円を維持し、期初予想をなんとか守っています。

 

進行中の2020年11月期_第34期の予算については、営業収益は第33期比7.0%減の219億円、経常利益は同26.4%減の70.9億円を予想しており、DPUについても同1,170円減となる2,300円と大幅な減配を予想しています。第33期取得9物件(1物件売却)による上乗せがあるものの、新型肺炎影響の継続でホテル・商業施設の固定・歩合賃料の剥落が見込まれるほか、そもそもこれらテナントとの賃料減額交渉が未妥結であったりする状況も鑑み、かかる減収分を▲28.8億円分も見込んでいるため、これが大幅減収の主要因となります。また、相次ぐテナント退去により原状回復や区画切り直し工事増加を見込んでおり、原価の方も切り上がる格好となります。それらを織り込んでなおDPUが大きく減少するのは、RTA以外で第33期に実施した内部留保取り崩し額▲356円が剥落する点に由ります。なお、会社側はDPU2,300円についてはフロアとしており、第34期については最悪また内部留保を取り崩しても死守する意向があるようです。

 

翌2021年5月期_第35期の予算については、営業収益は第34期比9.1%増の239億円、経常利益は同35.2%増の95.9億円を見込むほか、DPUについても同800円増となる3,100円と大幅な回復を予想しています。第34期初に取得した成田物流が巡航化、依然として足許稼働率が0%の西新橋一丁目(日立ハイテクビル)、府中(KDDIビル)の埋め戻しが進むものとみられます。懸念事項としては、新型肺炎の影響がかなり薄れることが前提の予算となっており、ホテルでいえば平常時RevPARの8割水準に戻ることを前提としているため、第34期比で約20億円もの収益復元を見込んだ計画はかなり過大感がある印象です。

 

なお当法人の直近の取得・売却については、直近の第33期に9物件を取得しており、うち4物件(四条烏丸ホテル、枚方物流、白鷺住宅、荏原町住宅)はビーロット(3452)から70億円バルクで購入する一方、同社に対して「パシフィックマークス江坂」を100億円で売却しています。この江坂については、旧日本コマーシャル投資法人(NCI)の所有の大型物件であり、稼働率が高く賃収剥落影響が大きいものの、築45年の旧耐震物件であり、アスベスト含有かつ既存不適格で建替で減床してしまう物件のため、売却益1.7億円余りの水準で処分しています。

 

当法人の投資論点としては、現状の株価が既にP/NAV0.7倍水準に沈んでいることから、POが難しいため、物件売却による含み益の顕在化、及び売却による内部留保の積み上げと代替物件の取得が進められるかどうかがポイントとなります。現状のLTVは41.7%であり、やや高めではあるものの、物件入替形式でコントロール出来る範囲かとみられます。また、内部留保を126億円を有しているため、この掃き出しも大きな論点のひとつであり、予想DPUの実現可視性がかなり低い第35期の下支えとしても活用する意向があるのか、ないしは自己株式取得で直接的に株価を下支えする気があるのかどうか・・・といったコーポレートアクションの動向も注目点と言えます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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