【9130】共栄タンカー/入渠隻数多く低稼働、油価と海運市況の好転が待たれる。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9130】共栄タンカー(東証1部) NT

現在値 773円/100株 PER23.5 PBR0.43  3月配当優待 9月配当

日本郵船系の外航海運会社。タンカーの長期貸船主体。コスモ石油向け過半。バラ積み船も。
配当は3月末一括の年20円配当のため、配当利回は約2.59%となります。

 

共栄タンカーは株主優待を導入しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、2,000円分のクオカードを進呈していますので、配当優待利回りは約5.18%となります。


業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 130億円、経常利益 13.3億円 EPS 20.9円 

■2018年3月期 売上高 125億円、経常利益 6.4億円 EPS 102.0円 

■2019年3月期 売上高 134億円、経常利益 8.2億円 EPS 148.7円 

■2020年3月期 売上高 125億円、経常利益 10.2億円 EPS 274.6円 

■2021年3月期 売上高 120億円、経常利益 4.0億円 EPS 32.6円 ce
□2020年6月1Q 売上高 29.8億円、経常利益▲1.9億円 EPS 16.4円(8/7)

□2020年9月2Q 売上高 57.0億円、経常利益 0.0億円 EPS 0.0円 ce

2020年3月期の売上高は前期比6.7%減の125億円、経常利益は同22.1%増の10.2億円となり、減収増益となったものの、概ね期初予算水準での着地となりました。主力の大型原油船(VLCC)については、期初に海運市況の低迷があったものの、昨年6月のホルムズ海峡襲撃事件や、9月のサウジ油田攻撃もあり、秋口にはタンカー基準運賃であるワールドスケール(WS)は一時200%まで高騰しましたが、年明けからは新型肺炎による原油需要減退懸念により、再びWS40%台まで低迷するなど荒い市況となりました。その一方、石油製品船、大型LPG船については概ね底堅く推移したことました。以上の結果、VLCC2隻の取得に伴う増収効果はあったものの、前期のVLCC3隻売却がマイナス寄与したほか、本年2月にVLCCを1隻売却したこともあり減収する一方、市況改善により損益が良化した格好となりました。

 

進行期である2021年3月期の通期予算については、期初時点より公表しており、売上高が4.0%減の120億円、経常利益は同60.9%減の4.0億円を見込んでいます。実績期で取得したVLCCを2隻がフル寄与する一方(純増1隻)、新型肺炎による海運市況悪化等によりドッグ入りとなる入渠隻数は9隻(実績期の入渠は2隻、全支配船腹は15隻)を見込んでいるため、不稼働期間の長期化により収益面は大きく後退する見通しとなります。去る8月7日に1Q決算を開示しており、売上高は前年同期比4.0%増の29.8億円、経常利益は同50.7%減の1.9億円と高進捗で通過していますが、これは油価暴落とそれを原因とする陸上タンク満杯化による一時的な市況良化等が効いているため、現状では悲観的な会社側の通期予算の方が妥当であると考えられます。

 

当社は中長期の経営計画を開示しておらず、取引先は当社筆頭株主(30.0%)である日本郵船(NYK)が全社売上の約5割、大株主(6.5%)であるコスモ石油が約3割を占めているほか、社長はNYK出身者、専務はコスモ石油出身者となっているため、事実上これら2社のための下請け海運会社となっています。基本的にはNYKとの長期傭船契約で貸船料を得るモデルであり、新たなVLCCを2021年3月期、翌2022年3月期にそれぞれ1隻ずつ竣工予定となっていることから、これらの傭船開始分のオンが見込まれる一方、新型肺炎による稼働率低下や既存船の貸船料下落圧力によるマイナス寄与が大きいため、当面は市況浮上頼りの苦しい時期が続くとみられます。

 

財務の状況については、ここ数年自己資本比率20%程度となっており、大手海運会社並みの水準となっているほか、当社は後ろ盾にNYKが存在するため、資金繰り等の懸念も低いと考えています。そのため、株主還元についても期初より据置となる年20円配当が予想されており、此方については業績の如何によらず配当されるものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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