新型肺炎による決算開示の遅れ等もあり、東洋経済の会社四季報「夏号」が6月26日にやっと発売されました。本来的に「夏号」は業績予想の洗い替えがあるので、大変価値の高い号なのですが、今次の「夏号」は平時とは背景が異なるので注意が必要です。現状、3月期決算企業を中心に通期の会社予想が開示していない会社が半分程度あるため、四季報はコンセンサス等を参考にしながら業績予想を独自に立てているものとみられますが、数値が非常に大きく異なる可能性があります。
一例を挙げてみると、昨晩23時の日経報道で髙島屋の第1四半期の業績観測報道(営業利益およそ▲180億円)がありました。通常髙島屋は、ひと四半期あたり70億円~80億円の営業利益を積み上げて、通期で300億円前後の営業利益を作る期が多いため、もし奇跡的に第2四半期から平時並みに「超回復」したと仮定し、残りの2Q~4Qで225億円を積み上げても、ネットした通期営業利益は45億円にしかなりません。そのため、四季報「夏号」の予想する通期営業利益70億円達成のためには「超回復+α」が必要ということになります。
参考までに髙島屋の足許時点での通期営業利益コンセンサスは▲50億円程度が観測されているようですが、これも【最大値100億円~最小値▲250億円】ともの凄い幅があります。また、アナリスト予想数値の洗替が遅れている可能性もあるため、こちらも数値としての有意性が平時よりも薄くなっています。
髙島屋はたまたま目についたの単なる一例に過ぎないのですが、そんな感じで今回の「夏号」に記載されている業績予想数値は実態からかなり乖離している可能性が高いと考えられます。それでも、四季報の各銘柄冒頭のコメント部分を読めば“お勉強”にはなるかもしれませんが、記者の方も雲を掴むような感じで書かれているものと推察され、内容的に漠としたものが多いとみられます。
そんなわけで、今次発行の四季報「夏号」どこまでちゃんと読むかは悩ましいところですが、私は入手するつもりですし、パラパラと読むつもりではあります。本エントリは書きっぷりがやや辛口にはなってしまいましたが、まともに会社予想が出てきていない中で、たとえ2週間遅れであってもこの内容を纏め上げた記者の方のご苦労には敬意を表しております。
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