【9266】一家ダイニングプロジェクト/一部指定替え成就も、廉価路線志向はやや疑問符。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9266】一家ダイニングプロジェクト(東証マザーズ) OP

現在値 754円/100株 PER26.0 PBR3.53 3月無配株主優待 9月株主優待

首都圏で和食居酒屋『こだわりもん一家』『屋台屋博多劇場』等を展開。
配当基準日は3月ですが、配当実績はなく、今期も無配予想となっています。

一家ダイニングプロジェクトは株主優待を導入しており、3月末・9月末に単元株を保有する株主に対し、各2,500円の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約6.63%となります。

業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 43.3億円、経常利益 1.0億円 EPS 15.0円 
■2017年3月期 売上高 54.1億円、経常利益 1.5億円 EPS 29.7円 

■2018年3月期 売上高 61.4億円、経常利益 2.4億円 EPS 55.4円

■2019年3月期 売上高 70.7億円、経常利益 2.8億円 EPS 39.6円 

■2020年3月期 売上高 82.6億円、経常利益 2.8億円 EPS 29.1円 ce修正(2/7)

□2019年9月2Q  売上高 38.4億円、経常利益▲0.2億円 EPS▲6.9 円

□2019年12月3Q 売上高 62.1億円、経常利益 2.1億円 EPS▲19.6円(2/13)

2019年9月中間期の売上高は前年同期比16.1%増の38.4億円、経常利益は赤転の▲0.2億円となり、期初予想との比較はないものの、2桁の増収ながら微減益となりました。主力の飲食事業における既存店売上高は『博多劇場』の値下げにより客単価が減少したものの、『博多劇場』『(こだわりもん)一家』の両業態でリピート客が増加し、予算前提の101%に対して100.2%とまずまずの仕上がりとなりました。出店については上期計画の6店に対して、10店の開業を済ませたためこの開業コストが重しとなったほか、連れて本部経費も増加したため、2桁増収を確保しながらも僅かに赤字で折り返しています。なお、上期開業10店のうち4店が新業態『(爆辛スパゲッティ)青とうがらし』『(大衆ジンギスカン酒場)ラムちゃん』となっています。

 

なお2020年3月期の通期予算については3Q開示前の2月7日に修正しており、売上高は前期比16.7%増の82.6億円(従予:82.1億円)に増額したものの、経常利益は同変わらずの2.8億円(従予:3.5億円)に減額しています。飲食事業における出店計画が、当初見込みの12店から14店に増加したほか、出店時期も前倒しされているため、トップラインが想定より伸びる見通しです。もとより当社は業績の季節偏重性が強く、飲食事業は忘年会需要の多い12月が伸びるほか、婚礼事業も同様に書入れ時が秋口に集中するため、3Q単独期間に大きく利益偏重する傾向にありますが、この2月の業績修正により、最繁忙期の結果を織り込んで通期の落着の数字が概ね見えた形となります。なお、見込みより減益となったのは、飲食事業部の既存店自体は底堅く推移しているものの、出店増による経費増と『青とうがらし』の苦戦、一部店舗の立ち退き影響等がその要因となります。

 

当社は2017年12月にマザーズ市場に上場した企業であり、成長可能性資料によれば、当社がベンチマークとする「鳥貴族」や「串カツ田中」を多少上回る客単価2,500円程度の廉価業態である『博多劇場』を店舗展開の柱に据えており、今2020年3月期までの3年間で年11店舗ピッチでの出店を予定しています。そのため、2年前の上場時点で推計された今期出来上がり業績は売上高85億円・経常利益3.5億円くらいであり、実際に今期初時点ではそれに近いガイダンスが出されていましたが、実際の出店業態ミックスで客単価がより低い『青とうがらし』が混じってしまったことや、出店ピッチ高速化による開業経費増などが重しとなり、見通しまでは届かない公算です。

 

また、地盤が千葉の本八幡であることから、先ずは一都三県でのドミナント展開により『博多劇場』『一家』の認知度醸成を図り、東京の城東方面から“西進”を進めていました。然しながら、高単価の『一家』が苦戦傾向にあるため路線を転換し、足許の出店を『博多劇場』に絞ってきているほか、『青とうがらし』『ラムちゃん』といった廉価業態の開発と出店を進めているため、低単価路線を志向している印象です。実際に『博多劇場』の共通アプリの組み先は『一家』ではなく、客単価が近い『ラムちゃん』で設定しており、二枚看板だった『一家』は今後縮小させていくものとみられます。そのため、数多の競合ひしめく“レッドオーシャン”でる大衆居酒屋市場が今後の当社の主要ドメインとなることから、中長期的な成長のビジビリティーについては一歩後退したもの考えています。

 

 

なお標題に記載のとおり、当社は去る2月20日に東証一部市場への指定変更(変更日は3月11日)の承認を受けております。それに先立って社長の武永氏が発行済株式数の13%強(OA込)にも及ぶ828千株@764円を大量放出していますが、これは株主拡大と流動性確保による指定替え要件の確保と、特定同族会社を出して法人税法上の留保金課税を受けないようにすることが主目的であるとみられるため、本件売出については武永氏の特別な意図がないものと判断しています。

 

*参考記事① 2019-01-12 628円*分割修正済 OP

まずは3Qで“注文通り”の巻き返しを確認したい、一家ダイニングプロジェクト(9266)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

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