公募割れ状態続くも、優先株消却で増配ピッチ加速へ・ワールド(3612)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3612】ワールド(東証一部) OP

現在値 2,170円/100株 PER7.3 PBR0.94 3月配当優待 9月配当優待

総合アパレル大手。SCから百貨店まで展開。構造改革進め18年再上場。MA積極化。
配当金は年2回・合計69円のため、配当利回りは約3.18%となります。

ワールドは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で半年以上保有を継続する

単元株主に対して、1,500円分の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約

4.56%となります(なお3単元保有時は優待が5,000円分となるため、利回りが上昇します)。


業績を確認していきます。IFRS基準となります。
■2017年3月期 売上高 2,499億円、営業利益 120億円 EPS 451円 

■2018年3月期 売上高 2,458億円、営業利益 132億円 EPS 373円 

■2019年3月期 売上高 2,498億円、営業利益 148億円 EPS 354円 

■2020年3月期 売上高 2,500億円、営業利益 166億円 EPS 297円 ce
□2019年9月中 売上高 1,167億円、営業利益 63.6億円 EPS 109円 ce

2019年3月期の売上高は前期比1.6%増の2,498億円、営業利益は同12.1%増の148億円と

なり、昨年9月の上場時公表予算を全て上回って着地しました。主力のブランド事業につい

ては、百貨店向け(UNTITLED、INDIVI等)の既存店売上高が98.2%に留まったほか、SC向

(SHOO・LA・RUE、THE SHOP TK等)が特に苦戦し、同95.9%に沈みました。一方、

EC及びサイト構築・運用を手掛けるデジタル事業が趨勢増となったほか、生産・サプライ

チェーン・販売代行を受託するプラットフォーム(PF)事業の外販が伸び、ブランド事業の落

ち込みを吸収しました。なお利益面については、主に経費コントロールが効いた模様です。

 

進行期である2020年3月期の予算については、売上高が微増の2,500億円、営業利益は

12.0%増の166億円を予想しており、利益面は引き続き2桁の伸びを見込んでいます。主力

のブランド事業の予算前提は既存店売上高98.4%、出店純増10店、EC成長率9.4%でセット

しており、概ね実績期横引きでセットしています。特に昨年上期に大苦戦となったSC向け

が足許では回復傾向にあり、売上高構成比が高いことから採算性の回復効果が大きく、

全社の増益はSC向けで作る格好となります。一方、実績期で業績を下支えしたデジタル

事業・PF事業については、先行投資や事業収束で一服となる見込みとなっております。

なお、6月末までの3ヶ月間の既存店売上高は98.9%となっており、進捗はインラインです。

 

当社は2005年にMBOで非上場化していましたが、昨年9月に実に13年振りの再上場を

果たし、公募と売出で約400億円(@2,900円)を調達しています。ただ、当初の想定価格

3,360円から、仮条件段階で2,900円~3,200円と下振れた挙句に下限で値決めとなり、

初値もその公開価格を5%下回る2,755円に沈みました。更に上場後も株価は直滑降で

滑り続け、OA調達見込分の40億円強も取り逃した格好となりました。また、足許時点の

時価総額は700億円程に過ぎず、2005年の非上場化時点の時価総額が2,400億円程

あったことを考えれば、MBOとしては“大失敗”であったと言えそうです。また、MBOと

いっても実態としてはLBOに近く、この13年間でかなりの株主価値が毀損されました。

 

とは言っても、一応約400億円を調達出来ているので、今後は利払いがさらに重くなる

予定だった政投銀向けのA種優先株式60億円分を全て買い取って消却が出来たほか、

ECなどのシステム投資に100億円を振り向けるとともに、同業種および異業種のMAと

投資に200億円を突っ込む計画であり、この合計300億円が今後の成長の原資として機

能することが期待されます。ただ会社側は、ブランドを外から買ってくることはあっても、

実質頭打ち状態のブランド事業のオーガニックな成長は期待しておらず、基本的には

デジタル事業やPF事業を育てて、ドメインシフトしていくのが中長期的な成長シナリオで

あるとみられます。実際、PF事業などは、7&i系の「アカチャンホンポ」からOEMで生産

を受託するなどしており、川上分野でもドメインを広げていく目論見のようです。なお、

現時点では中長期的な業績の定量目標の開示をしていません。

 

なお、株主還元については、利払いが重い優先株がハケたこともあり、20%ほどであった

配当性向基準を向こう3年間で段階的に30%まで引き上げる計画であり、実際に今期は

380bps.増加となる23.2%水準の年69円配当(19円の増配)を見込んでいます。仮に向こう

3年間の利益水準が変わらなかったとしても、年90円までは増配する意向があると試算

されるため、その場合は現株価水準をベースとした配当利回りは4.1%程度となります。

 

 

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*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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