事実上の上場1期目から大幅未達、ビジネスモデルも“揺らぐ”・クロスフォー(7810)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7810】クロスフォー(東証JQS)  -

現在値 419円/100株 PER34.3 PBR2.63  7月配当優待 

ダイヤモンド加工の独自技術を用いてジュエリー、パーツを製造販売。OEM、直販も。
配当金は7月末一括の2.5円配のため、配当利回りは0.60%となります。

クロスフォーは株主優待制度を実施しており、7月末に単元株を保有する株主に対して、

4,500円分の自社商品を進呈していますので、配当優待利回りは約11.3%となります。


業績は下記の通りとなっております。当社は昨年7月のIPO銘柄です。
■2015年7月期 売上高 34.7億円、経常利益 10.5億円 EPS 31.8円
■2016年7月期 売上高 41.1億円、経常利益 9.7億円 EPS 27.1円 
■2017年7月期 売上高 42.1億円、経常利益 7.9億円 EPS 41.9円 

■2018年7月期 売上高 40.6億円、経常利益 2.2億円 EPS 7.0円(9/14)

■2019年7月期 売上高 43.4億円、経常利益 3.4億円 EPS 12.2円 ce
□2019年1月中 売上高 23.7億円、経常利益 2.4億円 EPS 9.1円 ce

2018年7月期の売上高は前期比3.5%減の40.6億円、経常利益は同72.2%減の2.2億円となり

増収増益を予想していた期初予算から一転して、大幅減益での着地となりました。国内向け

は底堅く推移したものの、ライセンス契約によりパーツ販売を行う中国市場において模倣品

業者の増加が著しく、当初予算を下回りました。またインド市場においても最終顧客となる

米国宝飾市場が伸び悩んだため、中国同様に予算を下回りました。また、この中国とインド

はロイヤリティ割合が高い高利益セグであったため、全社利益が一段と押し下げられました。


進行期である2019年7月期の予算については、売上高が6.9%増の43.4億円、経常利益は

55.2%増となる3.4億円を予想しており、売上高は過去最高を見込む一方、利益につい

はピーク時の3分の1程度に留まる見通しです。国内向けに関してはOEMの強化を実施

るとともに、海外に関してはアジア以外の中東方面へ拡販を推進していく計画です。また、

(事実上の上場初年度であった)実績期のようにTVCMガンガン流すことは控え、従来型の

マス広告ではなく、費用対効果重視でSNS広告に切り替えていく方針です。

 

当社はこれまで、小売店に対して卸売方式で販売してきましたが、実績期からは小売店の

負担が少ない委託販売方式への切替を推進し、販売強化のために自社で商品を抱え込ん

でリスクを取っている状況です。然しながら、そのわりにトップラインが増えておらずB/Sが

膨らんでいるだけなので、業績以外にも注意が必要です。一応、会社側の説明では商品の

うち9割がOEM製品で、そのうちダイヤモンドや18金の“貴金属部分”は価値が担保される

ので、減損可能性があるのは“加工費部分”だけという説明がなされていますが、例え1億

や2億の減損でも、当社の企業規模からすると決して小さくなく、やや楽観的と言えます。

 

また、海外事業についても中国等の模倣品問題は、ライセンス提携先の拡大により問題の

解決を図っている最中であるほか(完全解決は不可能と推察される)、主に海外市場向けに

テニスブレスレットの自社製造等も始めているため、本来はリスクの少ないラインセンス&

ファブレス企業という当社の特徴自体が根底から揺らいでいる印象が否めません。勿論、

会社側の目論見通りテニスブレスレットが世界的に流行れば一発もありますが、従来品と

同様に模倣品が出ないという保証もなく、現時点ではやはりリスク過多の印象を受けます。

 

そもそも当社は昨年のIPO企業ですが、足許の業績は2015年7月期をピークに右肩下がり

となっており、上場時点で模倣品問題は既に相当程度顕在化していたであろうことを踏ま

えると、所謂“上場ゴール”企業と判断されても仕方ない状況です。上場時に約12億円(@

365円)で調達出来ているので、財務的にはまだまだ余裕があるものの、今となっては殆ど

意味がなかったと言える2.5億円分のTVCMも、(株価対策も含めた)単なる上場広告だった

可能性もあり、現時点では会社側の絵空事を評価するような段階にもないと考えています。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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