経営統合でフォークリフト世界3位も、財務苦しい・三菱ロジスネクスト(7105)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7105】三菱ロジスネクスト(東証1部) --

現在値 1,284円/100株 PER22.7 PBR2.26 3月配当 株主優待なし

フォークリフト大手。13年に三菱重工からフォーク事業を承継、17年ユニキャリアと統合。
配当は3月末一括の11円配のため、配当利回りは0.86%となります。

三菱ロジスネクストは定常的な株主優待制度を導入しておりませんが、2018年3月末現在

の単元株主に対して、記念優待として2,000円分のクオカードを進呈した実績があります。

業績を確認していきます。 
■2015年3月期 売上高 2,602億円、営業利益 90億円 EPS 42.1円 
■2016年3月期 売上高 2,425億円、営業利益 100億円 EPS 44.3円 
■2017年3月期 売上高 2,709億円、営業利益 105億円 EPS 34.2円 

■2018年3月期 売上高 4,330億円、営業利益 92億円 EPS 27.6円(5/8) 

■2019年3月期 売上高 4,350億円、営業利益 125億円 EPS 56.3円 ce 
□2018年9月中 売上高 2,065億円、営業利益 38億円 EPS 9.4円 四e

2018年3月期の売上高は前期比59.8%増の4,330億円、営業利益は同11.7%減の92.8億円

となり、期初予想を上回って着地しました。売上高がハネているのは、ユニキャリアの完全

子会社化および経営統合による上乗せが主な要因であり、それにもかかわらず営業利益

が減少しているのは、同社との経営統合にともなうのれん代の償却が年間およそ100億円

発生するためであり、利益上乗せ分とネットしてもマイナスとなります。かような背景はある

ものの、世界経済全体の回復により、先進国・新興国の景気も好調に推移し、当社も内外

両セグメントにおいて、“事実上の増収増益(のれん代償却前ベース)”を果たしています。

 

進行期である2019年3月期の売上高は前期比0.4%増の4,350億円、営業利益は同34.7%増

の125億円と大幅な増益を見込んでいます。のれん代償却額が15億円程度剥落するのが

主な利益改善要因となりますが、このほかに統合による原価軽減の取組みにより30億円

程度の良化を見込んでおり、資源価格高騰による採算悪化の影響を飲み込む計画です。

なお、前提となる想定為替レートは、USD110円/EUR130円/RMB16円で設定しており、

重要KPIである販売台数は113→118千台へと5千台ほど増加させる計画となっています。


今期は4年中計の2年目となっており、最終年度である2021年3月期に売上高4,600億円、

営業利益率5%(約230億円。のれん償却前ベースでは7%・約322億円)を目指しています。

トップライン成長に関しては、統合シナジー(製品補完、販路強化)と新規事業で300億円

の増加を見込んでいるほか、利益についても統合シナジーを80億円程見込んでいます。

具体策としては、ユニキャリアの川崎本社も京都に集約したほか、会計・設計システムの

統合を完了しており、中計最終年度を目処とし残りの販売・生産・調達システムの統合も

完了させ、経営資源効率化を図る方針です。ただ原価の高騰基調が継続しているため、

コストメリットが実際に利益の数字として表れるのは中計終盤までかかるものとみられ、

それまでにフォークリフトへ価格転嫁(要は値上げ)出来るかどうかが鍵と言えそうです。

 

既述のとおり、2017年1月に当社は約1,400億円もの巨費を投じて産業革新機構らから

ユニキャリアを買収しており、フォークリフト業界では豊田自動織機、独キオングループ

に継ぐ世界3位へと躍り出ました。ただその財務的負担は大きく、40%台半ばの水準を

キープしていた自己資本比率は、多額の借入により今や10%台半ばまで下落しました。

そのため、株主還元余力はかなり薄く、今期は業績好調でも11円配当を据え置く公算

が高いとみられます。また、業界首位の豊田自動織機はその企業規模もさることながら

盤石な財務基盤を背景とした研究開発(燃料電池等)についても、当社を圧倒している

ような状況のため、やっと3番手になった当社が研究開発費用をケチるわけにもいかず、

業績自体は好調としても、財務的には苦しい台所事情が当面続くものと予想されます。

 

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