そういえば、PENTAXは今までのSMC(スーパーマルチコーティング)からHDコーティングを開発し、ここ数年ではPENTAXのレンズはSMCからHDコーティングに置き換わっている。考えてみれば、あまりその差を見ていることはなかったな。
ということで、簡単ながらちょっと比較してみることにした。
レンズコーティングとは
そもそも、レンズコーティングとは、カメラのレンズにはただレンズを備えていればよいというわけではなく、レンズに光が入ってきたときに、レンズに入ってくる透過の具合や、色んな角度に乱反射が発生するので、それを抑えるためにコーティングを行って、レンズに入る透過光をより多く取り入れるためのコーティングである。
カメラメーカーのレンズコーティング
レンズコーティングは主には真空蒸着やスパッタリングなどで膜を形成する。本当にカメラが登場したころの大昔は単層コーティングであったが、その後複数層を重ね合わせた多層コーティングに移りかわり、さらに最近ではデジタルカメラの高画素化に対応するためナノ粒子のコーティングを施したものが登場している。
レンズコーティングはカメラメーカーが独自で開発しているためメーカーHPである程度紹介されていたりもするが、詳細は伏せられていたり、それはメーカーによってまちまちだ。
〇キャノン
例えば、キャノンでは最新のレンズコーティングはSWCと呼ぶ酸化アルミをレンズ表面にくさび状に形成している、というのがHPで紹介されている。
〇ニコン
ニコンはナノクリスタルコートと呼ばれ、HPにはレンズ上にナノ粒子を形成していると書いてあるが、具体的な材質までは記載がない。
〇ペンタックス
私が愛用しているペンタックスは、もともと従来のSMC多層コーティングから、シリカを使用したエアロブライトコーティングを開発したものの、コストがかかり大量生産向きではない、ということで、新たにHDコーティングが開発された。
PENTAXは、従来のSMC多層コーティング、HDコーティング、エアロブライトコーティングの光の透過具合をグラフに表しており、HDコーティングは低コストながらエアロブライトコーティングに肉薄するくらいに透過率がよい、ということを示している。
ペンタックスでSMCとHDコーティングの差の比較
考えてみれば、私もペンタックスのSMCのレンズは売り払ってHDのものに入れ替えたり、新規でHDになったレンズを購入したりもしてきたが、HDレンズにすると確かによりクリアになったな、と思うときはあったが、具体的に比較したことはなかった。
そこで、私のペンタックスのレンズは大部分がHD版に置き換わってしまったが、まだSMC版も残っているので、比較してみることにした。
レンズは、
HD PENTAX DFA50mm F1.4
SMC PENATX FA43mm F1.9
の2本だ。
本当は全く同じレンズでSMCとHDで比較するのがよいのだが、同じレンズでSMCとHD版を両方持つようなことはしていないので、レンズは違えど申し訳ない。
可能な限り焦点距離が近いレンズを選んでみた。
ちなみに、撮影条件はどちらも ISO1600,絞りF1.9、SS:1/200secで合わせている。
SMC PENTAX FA43mm F1.9 Limited
HD PENTAX DFA50mm F1.4
上がSMC版で下がHD版のレンズで、自分の部屋のペンダントを撮影してみたが、SMC版のほうが電球の外周の枠の部分に光が漏れており、全体的にHD版のほうがコントラストも輪郭もよく残しているということはわかる。
コーティングだけでもこれだけ違うのだ。
ちなみに、私が持っているレンズで、SMC版として残っているのはこの31mm,43mm,77mmのLimited 3本のみだ。
これをHD版に変えようか非常に悩んだのだが、HD版に入れ替えると中古で売ったとしても3本揃えたら20万を超えてしまう。
20万を超えてまで入れ替える必要があるかというと、そうでもないので、今としては我慢している。
ちなみに、このレンズをSMC版からHD版に替えた人も世の中にはいらっしゃるが、その方たちのレビューによると、「確かにHD版はクリアな画質で現代的になったが、面白味がない」ということで、個人の好みもあるのかもしれないが、SMC版を手放してHD版を買った後、そういう理由でまたSMC版に戻ってきたという人もいるようだ。
私もそういう二度手間は防ぎたい。だから悩んでいるのだ。
まあ、悩んでいるぐらいがお金も無駄にならずよいのかもしれないが。
で、この3本のレンズをSMC版からHD版に入れ替えようか悩んでいるけど、今は入れ替えない、という結論でこの内容も終わろうかと思ったのだが、実はもう少し続きがある。
富士フィルムのコーティングはどうなっている?
私はPENTAXと富士フィルムの2台使いなので、富士フィルムのコーティングの具合はどうなっているんだろう?と気になった。
富士はスーパーEBCコーティングという名称になっているが、残念なことにスーパーEBCコーティングで検索してみたが出てこない。メーカーHPを調べてみたが、このスーパーEBCコーティングについても詳細な記述もなく、どうやら、富士フィルムはコーティングのほうは出していないようだ(企業秘密?)
と言うわけで、各メーカーごとに独自でレンズコーティングを開発しているものの、どこまで出すかはメーカー次第というわけだ。
じゃあ、実際に試してみるか!ということで富士フィルムのレンズを漁ってみるが、富士フィルムについてはF値が少ない明るいレンズを持っておらず、唯一テストできるとしたら、XF16-80mm F4のみだ。
絞り解放がF4だとそんなに明るくもないがとりあえずこれしかないので、やってみるしかない。
FUJI X-T30 / XF16-80mm F4 ISO1600, SS:1/200sec 絞りF4
このレンズ、最近防湿庫に眠ったままで全く使用することがなかったが、久しぶりに取り出すことになった。
電球の光の漏れはかなり抑えられているが、これは開放F値が4スタートなので、そんなに明るいレンズではないので、仕方ない。
なのでPENTAXと比較してみることにした。
PENTAX KP / HD PENTAX DFA50mm F1.4 ISO1600, SS:1/200sec 絞りF4
富士フィルムのスーパーEBCコーティングとPENTAXのHDコーティング版で比較してみたが、どちらも電球の光の漏れは抑えられており、電球の周りの枠もしっかり階調が出ているので、こうしてみれば富士フィルムのスーパーEBCコーティングもかなり性能はよいようだ。
富士フィルムのスーパーEBCコーティングもけっこう性能がよいことはわかったので、これでこの内容も一応終わりの予定なのだが、最近、富士フィルムのカメラを少し使っていて気になることがある。
それは色が濃すぎることだ。
PENTAXのカメラも色は濃いほうだが、上記を見ての通り富士フィルムはそれよりも濃くて、色調の設定を「ソフト」にしても結構濃いと感じる。
彩度や色合いを変更する設定もあるはずなのだが、それが探してもよくわからないのだ。
富士フィルムのカメラは色再現性はいいのだが、逆に濃すぎるというのも最近感じできた。タイトルと少し内容が変わってきたが、何とか微調整できないかと設定を探しているところだ。