ひと葉散る無言の言の座禅石  
飯山の歌碑&句碑巡り ⑦

第4回いいやま俳句大賞 平成19年10月19日
作者 長野県長野市 内堀麦秋
ひと葉散る無言の言の座禅石
この句は、臨済宗中興の祖白隠禅師が修行し大悟した正受庵で詠んだ句です。
正受庵や正受庵の庵主の恵端禅師=通称正受老人を知っていると、より理解できる素晴らしい句です。
アララギの歌人島木赤彦は、飯山の短歌をたくさん詠んでいます。
その中に歌集「氷魚」所載「恵端禅師の墓」6首の一首に
石の上に櫻の落ち葉うづたかし正受老人ねむりています
という短歌がありますが、島木赤彦と同じ場面を「ひと葉散る無言の言の座禅石」の中に詠みこまれています。
この句に詠まれている「坐禅石」は、赤彦の短歌の「石」のことですが、正受老人の墓所「栽松塔」の前にある表面が平らな石のことです。
正受老人は、この坐禅石の上で座禅をしながら大笑しながら入寂されたと言われています。正受老人はその時、「坐死」という有名な遺偈(ゆいげ)を残されました。
坐死        ざし
末後一句     まつごのいっく
死急難道     しきゅうにしていいがたし
言無言言     むごんのごんをごんとして
不道不道     いわじいわじ
死を前にして一言の残そうと思ったが
死があまりにも急なのでいうことが出来ない。
無言を言葉として
このまま言わずにおこう
というような意味です。
「ひと葉散る無言の言の座禅石」は、正受老人が坐禅を組みながら入寂したと言う坐禅石の上に落葉が一枚舞い落ちている。

正受老人はこの坐禅石の上で涸れるように亡くなったのだな〜。

と、坐禅石の上で亡くなった正受老人を思い浮かべなら詠んだ句だと思います。