2021年7月13日 伊藤正則「遺言」配信トークショー | ミツのロックなライブレポート

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伊藤正則さんのトークショー「遺言」@表参道GROUNDを配信で観てみましたー!


「伊藤正則の『遺言』オンライン・スペシャル3」

音楽評論家 伊藤正則さんが語るトークショー。昨年12月に続いて第3弾となるオンラインスペシャル。

コロナ禍の中、わずかな人数での有観客だが基本はオンラインによるトークショー。
私も3度目の参加だ。いつものように平日開催なのでアーカイブで見られるオンラインはありがたい。

そして、この日、過去のトークショーを書き下ろした「遺言3」を発売。私はチケットとセットで購入した。

仕事が終わってからゆっくりと自宅でアーカイブで視聴した。
聞き手は従来通り、メタル専門誌『BURRN!』編集長の広瀬和生さん。
まずは、2021年上半期の総括。
昨年からコロナ禍により配信という流れも一時期あったが、最近は配信ライブがめっきり減った。配信ライブの限界が見えてきたと言っていいだろう。

配信でバンドを消耗させてしまい、段々と興味がなくなり見なくなってきているのでは。と語る。

広瀬さんもロックコンサートは体で感じるもの。だから配信はテレビ中継を見ているにすぎないと。

配信ライブで名演は生まれないと。正則さん。
賢いバンドはわざわざ配信ライブはやらない。やらずとも過去のアーカイブでライブ映像を観てもらえればいいことだと。


配信ライブをやることを考えるよりも、これを機会にアルバムを制作した方がいいと考えたんだと思うと。

なのでこれから凄まじい数の新譜が出てくると思われると。


PCR検査を受けて、2週間隔離されてスタジオに必ずしも全員集まって演奏する必要性もない。

今の技術ではデータの受け渡しでもエンジニアはライブ感を持った音に仕上げることはできると。


時間があるからBox Setを作るかもしれない。と広瀬さん。


Metallicaの ブラックジャケット「Metallica」も出る予定だが、Guns 'N' Rosesの「Use Your Illusion」のBox Setもそのうち出るだろうと。

(両アルバムとも原盤は1991年発売。30周年アニバーサリーとなる。)


『Metallica Remaster Deluxe Box Set』

14枚組CD+6枚組アナログ+6枚組DVD

51,700円 2021年9月10日発売予定。

このMetallicaのBox Setはよく考えられていると正則さんも高く評価していた。

Judas Priestも50周年だし、アニバーサリーと考えればいろいろと出てくる可能性はあると。

ただ、ほしいけど高いから若い人は買えない。買うのは昔から思い入れのある年配層。笑


話は変わり聖飢魔IIが表紙のBURRN!誌はB'z以来にめちゃめちゃ売れたらしい。

これは洋楽が弱くなっている傾向もあるが、海外のビッグバンドはほぼBURRN!はやってきたし、逆に変わりばえしないとも言われていた中での成功ではないかと。広瀬さん。


話はMetallicaの話題に戻り、その話の中で、ラーズはデビューした頃から俺たちはスラッシュメタルではないと言っていたというのは興味深かった。

そして、ラーズはメモ魔らしい。


1991年当時の話題に。その頃、日本はバブル崩壊直前の経済的絶頂期。

当時レコードが会社が費用を持ってくれて海外取材することは当たり前にあったと。

そこはBURRN!誌も経費は出せないので、まさにそうだったしあの頃は毎月海外に行っていたと広瀬さんも同意。もちろん現在はそういったことはない。

レコード会社の潤沢なプロモーション資金に支えられた1991年の作品群であることを押さえておく必要があると。正則さん。

1991年当時、正則さんと広瀬さんはMonsters of Rock等、一緒に海外でライブを観ることも多かったぐらい景気のいい時期だったようだ。

1991年のシーンと言えば、やはりMetallicaのブラックジャケット「Metallica」が時代を先取った。一気にファン層を広げ記録的セールスにより、もはや金字塔であると。

また、Guns 'N' Rosesの「Use Your Illusion Ⅰ&Ⅱ」もこの頃にリリースされこれも爆発的なセールスを記録している。

そして、この翌年にはこの2バンドによるツアーも実施。


BURRN!誌もこうしたレコード会社の支援のお陰でライブリポートや独占インタビュー等の記事も充実してきたようだ。

また、1984年 BURRN!創刊時のお手本はイギリスのKERRANG!誌であったという裏話もあった。


1992年の湾岸戦争以降、海外ではNirvana、Pearl Jam、SoundgardenといったGrunge Alternative Rockの台頭によりメタルは下火へとなるが日本国内は状況が異なっていた。


80年代から盛り上がったメタルは当時若かったファンの後押しもあって、日本国内については世界的にみて異例にも90年代前半も衰えずメタルシーンは盛り上がっていたと熱く語られた。

対して今の流れとしてコロナ禍のロックダウンの影響もあって、現在は更にSNS全盛の時代。音楽を聴くだけでなくミュージシャンの日常を垣間見て繋がりたいというのが今の若い世代ではないかと。

なので当時のように新人を発掘しレコード会社が大金を使ってでも育て成長していくセオリーは今や通用しないといった話もあった。


続いて今年下半期の見通し。

新譜のラッシュとなるが今は具体的には言いたくても言えない。特に9月はあれもこれもと凄いことになると。秋のツアーを発表している大物バンドを調べると予測もつくかもしれないと。


突然広瀬さんが、10月にアルバムを発売することが決まっているKK's Priestの話題を振る。

KKもJudas Priestも両方味方だと。KKを盛り上げる為に動けるマネージャーを置いていないことが問題だと。それが解消されない限りダメだろうと。正則さん。


KK's Priestのアルバムの方向性はJudas Priestのまんま。そこは否定しない。

ただJudas Priestに再加入できると思っていたところに、呼ばれなかったからと言って、Judas Priestのことをとやかく言うのはどうかと。そう言わずにKKも大人になった方がいいと。


呼ばなかったのはJudas Preastのメンバーではない。メンバー同士は仲がいいと思われると。

色々と内輪話もあったそうだが、それ以上は言えない状況のようだった。


正則さんから広瀬さんへBURRN!誌は全然広告入っていないよね。他の音楽雑誌も入っていない。要因はレコード会社の誌面広告がほとんどなくなくなっていると。

レコード会社も苦しいのはわかるけど勝負するときは積極的にやってほしいと。


コロナ禍もあって洋楽の市場は縮小している。タワレコ等のCDショップでも輸入盤新譜の取り扱いも明らかに少なくなっていると。

この洋楽衰退の状況は大きな問題だと。今後、どうしたらいいのかレコード会社も知恵を出してがんばってほしいと。


そもそも、レコード会社の社員はコロナ禍で在宅、オンラインとなり出社していないので直接会うこともできない。関係も希薄になってきていると。


下半期は海外は動き始めているが、日本国内の状況は異なる。ライブのオファーも海外バンドから多々あるようだが、国内でやれるかどうかはわからない状況。なのでプロモーターは多大なリスクが伴って対応していると。


正則さんは一切口にしなかったが、Iron Maidenも何か動きがありそうな雰囲気だった。

話も尽きないが、そろそろお時間ということで。正則さん、退出。

最後は広瀬さんの挨拶で締めくくった。

こうして、90分のトークショーは終了した。

今回の話題の大半はMetallicaを中心とした内容だった。当時の背景を元にいかに時代を切り開いてきたか、そしてどうビジネスを回してきたかという点で、今のこの状況だからこそ興味深い話であった。

Metallicaはヘヴィメタルでもスラッシュメタルでもない。メタリカというジャンルを確立したという言葉には納得だった。

私のメタルライフも振り返ると80年代からどっぷり浸かり、1992年に見切りをつけて一旦、戦線離脱といった感じだった。
そうして見ると1991年は私のターニングポイントだったのかもしれない。

私にとってのMetallicaはやはり「Ride the Lightning」、「Master of Puppets」だが、あらためて「Metallica」を聴いてみようと思う。
Metallica / Metallica (1991)

書籍は後日届いた。特典はサイン付ポストカード。
何気にシリーズ全部持っているという。

また後日談であるが、7月16日に早速Judas Priestの50周年記念Box Setが発表された。
『50 Heavy Metal Years of Music』

42枚組CD(内未発表音源13CD)、全443曲 世界3,000セット限定

49,500円 2021年10月15日発売予定。

即日、完売必至だろうがさすがに手が出ない。
ハイライト盤となる『Reflections-50 Heavy Metal Years of Music』(2,750円)もあるみたいなので、こちらにしようかな。