このような状況で

まさか観ることになるとは

青天の霹靂


父はあと10年は

生きられそうだったのに。



黒澤明監督の『生きる』

志村喬の鬼気迫る熱演で

つとに有名だ。


初老の男性が

公園のブランコを揺らしながら

歌う ♪命 みじかし 恋せよ乙女‥‥‥


これを

カズオ・イシグロが脚色、

ビル・ナイ主演で撮られた

それが『生きる Living』。


英語にすると

だいぶイメージが変わる。

しかもこれは名詞

私は違和感があるが


LIFE のほうがよいかといえば

短い期間 命を燃やす話なので

やはりLivingでよいのかも。


あまりにも有名なストーリーなので

ご存知の前提になるが


ビル・ナイという俳優は

『紳士』であり、歌手であり、

生き生きとしたチャームの権化。


その彼が、

枯れた容貌を生かして

仕事、人生に麻痺した

役所の市民課の長を演じる。


展開はスローペース

つまらんと思うものの、

汽車や昔の服装が

クラシカルで美しい。


ビル・ナイの痩躯

似合いすぎるスーツ姿。

物言う後ろ姿を観ているだけで

満足だ。


主人公は、とうに妻を亡くしている。

同居の息子は かわいいが

どうも物足りない小僧だ。


その妻はがさつで自己中心的、

居座り女が気弱な男に迫り、

結婚を勝手に決めたパターンか。


毎晩 話すこともない

まっすぐ家と役所を往復する。

単調で静かでなんの喜びもない毎日。


ある日 珍しく彼は

3時20分で早退するという。

課員はびっくり。


理由は通院。

末期がんで余命わずかの

結果を聞きに行ったのだ。


これまで 自分でなにかを

やろう!と動いてこなかった彼


市民の陳情もろくに聞かず、

たらいまわしの共犯に成り下がって


しかし土砂降りの中、

彼は公園づくりをすべく立ち上がる


若い課員の女性に触発されて

明るく生きたいと願ったのだ


愛されて彼は逝く


遅すぎることはない、

いつだって自分次第なのだ。


麻痺した毎日を

送ってはいけない。

もったいなさすぎる。


あとで気づいても遅い。

持ち時間は 限りがあるのだ。



‥‥‥‥‥‥

ひとつ言っておこう、


主人公が余命わずかであることを

身内には告げない。

その理由は映画を見れば歴然だ。


これだけは!

という瞬間を、

決して逃してはならない


人はときに

重大な決断をする


その人が大切なら

それに気づき 

全力で聞き、寄り添うこと


愛しているのなら。

失いたくないのなら。

 

決して

忙しさ 気まずさ 

あらゆることを言い訳にしてはならぬ。


愛する者に注視せよ!


このことを 

ここにつよく忠言しておく。



‥‥‥‥‥‥

ビル・ナイよ、

あなたは今回もやはり素晴らしかった 

ありがとう。