The KESEN carpenter.
この名称は、岩手県陸前高田市で農林業を営む佐藤直志さん(77歳)のことです。
映画の英語字幕でこう紹介されておりました。
映画、
『先祖になる』
を観てきました。
この映画は、七ヶ浜でご一緒に活動させて頂いている、仙台の堀さんご夫婦からご紹介頂きました。
先日の、震災から2年のメモリアルイベントの会場で、立ち話ではありましたが、久しぶりにゆっくりお話しすることができました。
私の映画好きをこのブログで知っていただいたのでしょう。
ぜひに!、とご紹介頂きました。
ありがたいことです。。。
人も、本も、映画も、出会い・ご縁です。
#この出会いに感謝です。
* * *
さて、この佐藤さん、
先の震災で、家を津波で流され、また、消防団で救助にあたっていた最愛の息子さん(47歳)を目の前で流されて亡くされました。
・・・息子は、職務に精励しすぎた…。
その悲しみの中、震災翌日に孫が生まれ、次に家を建て、今も癌という病と闘い、そして、日々自然と仲良く奮闘して生きていらっしゃいます。
その佐藤さんのこと、、、
ガンコ親父と言うけれど。。。
”老人力”の塊だと言うけれど。。。
きっと、、、佐藤さんは、
ものすごく、ピュアで、
ただ、まっすぐで、正直なヒトなのだと思う。。。
それを、頑固と言うならば、、、
”夢”や”希望”をどうして扱うだろう、
どうやって扱えばいいのだろう。
そんな思いを抱きます。
そう、、、
夢や希望を追うから、
いつまでも追い続けるから、
周囲から頑固と言われるのではなかろうか。。。
それならば、佐藤さんの頑固は大いに結構なものです(^^)。
そう、、、
みな、妥協したり、我慢したり、諦めたり。。。
特に被災した土地では、諦めと我慢ばかりの日々だったに違いありません。
私の知人のつながりで読んだブログで、こんな一文を残している方がいらっしゃいました。
”妥協ではなく、
諦めることで我慢して耐えることも多くなりました。”
被災地の、被災した皆さんの、実状をとてもよく表している一文だと思います。ずっと心に残っています。#敬服。
※これからこの映画をご覧になる予定の方は、以降内容に触れていますのでご注意下さい。
* * *
”人生は挑戦の連続”
佐藤さんは10年前に前立腺がんと診断されたそうです。
そして、この映画では今7年目だと。
自ら、あと数年の命だと。
秒読みの段階だと。
だから、生を全うするのだと。
自分には時間はそう残されていないんだと。
その強い信念を、
言葉と行動であらわし、
まわりの若者、役所の職員、祭りの団体メンバらに、力と勇気、そして行動の変化を与えていきます。
困難にまったく屈しないたった一人の老人が、
力任せではなく、愛情と信頼を込めて、情感豊かに、物事の捉え方や進むべき道を周りに伝えていきます。
時にははっとするほどかわいい茶目っ気を出して。。。
・・・特に印象的だったシーンがあります。
役所の若い職員が、家を建てる場所に、上からの規則を通知しにやって来た時のことです。
佐藤さんとの激論。
最初は、信念をぶつける、いきおい声が大きくなる、そして、絶叫するまでの主張。
でも、最後は、捉まえる、きちんとつながってものを言う。
最後は、若い職員の手を握っていつまでも離しません。
話せばわかる、そう、話して伝えるという強くてやさしい姿勢。
そのとき、少々軽率ですが、佐藤さんが神様に見えた・・・。
その時の叫びの言葉が以下です。
(セリフとして正確ではありません)
”被災した人間が、
被災した土地で、被災した木を材料にして、
立派に家を建てようとしている。
おめがた(あなたたち)役人が、
その話を国に持って行って、
逆に、こんな勇気あることがあるかと、
全国の皆さん、見でけろって言うぐれの話でねが。
国に認めさせて、かえってくればいいだけの話でねが!”
その通りです。
私自身もこんなシンプルな事が考えの先頭に出てこない。。。
自分もまず規則・決まりありきの考え方に侵されている、、、そう思いました。
* * *
布団に入った佐藤さんに、監督さんが声をかけるシーンがあります。
”眠れないとき、、、どうしてるんですか?”
すると、佐藤さん、
”「ローマの休日」をもう一回見でな…”
(…もう一回見たいな)
青春時代の良き思い出なんだそうです。
--- 佐藤さんとオードリーヘップバーン。
これですよ、これが原点ですよ!(^^)
なかなかにシャイで粋で、実に颯爽で恰好いい。
なるほど。佐藤さんの若い頃の思い出にその行動の原動力を感じました。
その時の佐藤さんのお顔。
ツヤツヤのニコニコ顔でした(^^)。
* * *
この映画の題名の「先祖になる」の意味はこうです。
今、震災でこの土地がゼロになった。。。
でも、ご先祖様がこれまでしてきたのと同じように、
自分がまず家を建てる。
そして、自分がこの土地の先祖になる。
こういう意味が込められていました。
そして、佐藤さんの家がきっかけになって、今年中には、20軒の家が戻ってくるのだそうです。
佐藤さんの次の目標は、地元のコメで日本酒を造ること。
失ったものを一つひとつ取り戻す活動です。
自然の受け入れがたいことも止む無しと受け止め、
これから先、また何十年も、何百年もかけて、
元のような生活を取り戻して行こうという”呼びかけ”であると理解します。
ご先祖様のやってきたことを、このあたらしいご先祖様が、今ここで始められている。
その第一歩を、、、
しっかりと伝えてくれた、いい映画でした。
* * *
堀さん、素敵な映画のご紹介ありがとうございました。
翌月曜の最終上映で早速に拝観しました!
大変おもしろく、あっという間の約二時間でした。#感謝。
この映画、東京では渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で3/29まで上映中です。
ご興味がある方はぜひご覧いただけたらと思います。
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