映画『先祖になる』を見て | 〜 シゲさんの「疾風勁草」ログ 〜

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2014.6.1~ReNew!

〜Photologue〜

写真一枚からの日常ログを書き綴っていきます。

それと、、、(不定期になりますが)
東日本大震災から丸三年が過ぎた今、自身で経験したボランティア活動を一枚の写真から振り返っていきたいと思います。





The KESEN carpenter.


この名称は、岩手県陸前高田市で農林業を営む佐藤直志さん(77歳)のことです。


映画の英語字幕でこう紹介されておりました。



映画、


 『先祖になる』


を観てきました。




この映画は、七ヶ浜でご一緒に活動させて頂いている、仙台の堀さんご夫婦からご紹介頂きました。


先日の、震災から2年のメモリアルイベントの会場で、立ち話ではありましたが、久しぶりにゆっくりお話しすることができました。


私の映画好きをこのブログで知っていただいたのでしょう。

ぜひに!、とご紹介頂きました。

ありがたいことです。。。




人も、本も、映画も、出会い・ご縁です。

#この出会いに感謝です。




   *   *   *





さて、この佐藤さん、

先の震災で、家を津波で流され、また、消防団で救助にあたっていた最愛の息子さん(47歳)を目の前で流されて亡くされました。


 ・・・息子は、職務に精励しすぎた…。


その悲しみの中、震災翌日に孫が生まれ、次に家を建て、今も癌という病と闘い、そして、日々自然と仲良く奮闘して生きていらっしゃいます。


その佐藤さんのこと、、、

 ガンコ親父と言うけれど。。。

 ”老人力”の塊だと言うけれど。。。


きっと、、、佐藤さんは、

 ものすごく、ピュアで、

 ただ、まっすぐで、正直なヒトなのだと思う。。。


それを、頑固と言うならば、、、

 ”夢”や”希望”をどうして扱うだろう、


 どうやって扱えばいいのだろう。

そんな思いを抱きます。



そう、、、


夢や希望を追うから、


いつまでも追い続けるから、


周囲から頑固と言われるのではなかろうか。。。


それならば、佐藤さんの頑固は大いに結構なものです(^^)。



そう、、、


みな、妥協したり、我慢したり、諦めたり。。。

特に被災した土地では、諦めと我慢ばかりの日々だったに違いありません。


私の知人のつながりで読んだブログで、こんな一文を残している方がいらっしゃいました。


 ”妥協ではなく、

 諦めることで我慢して耐えることも多くなりました。”


被災地の、被災した皆さんの、実状をとてもよく表している一文だと思います。ずっと心に残っています。#敬服。


※これからこの映画をご覧になる予定の方は、以降内容に触れていますのでご注意下さい。








   *   *   *











 ”人生は挑戦の連続”



佐藤さんは10年前に前立腺がんと診断されたそうです。

そして、この映画では今7年目だと。

自ら、あと数年の命だと。


秒読みの段階だと。


だから、生を全うするのだと。

自分には時間はそう残されていないんだと。


その強い信念を、

言葉と行動であらわし、

まわりの若者、役所の職員、祭りの団体メンバらに、力と勇気、そして行動の変化を与えていきます。


困難にまったく屈しないたった一人の老人が、

力任せではなく、愛情と信頼を込めて、情感豊かに、物事の捉え方や進むべき道を周りに伝えていきます。


時にははっとするほどかわいい茶目っ気を出して。。。




・・・特に印象的だったシーンがあります。


役所の若い職員が、家を建てる場所に、上からの規則を通知しにやって来た時のことです。



佐藤さんとの激論。



最初は、信念をぶつける、いきおい声が大きくなる、そして、絶叫するまでの主張。

でも、最後は、捉まえる、きちんとつながってものを言う。


最後は、若い職員の手を握っていつまでも離しません。


話せばわかる、そう、話して伝えるという強くてやさしい姿勢。


そのとき、少々軽率ですが、佐藤さんが神様に見えた・・・。


その時の叫びの言葉が以下です。
(セリフとして正確ではありません)


 ”被災した人間が、

 被災した土地で、被災した木を材料にして、

 立派に家を建てようとしている。

 
 おめがた(あなたたち)役人が、

 その話を国に持って行って、

 逆に、こんな勇気あることがあるかと、

 全国の皆さん、見でけろって言うぐれの話でねが。

 国に認めさせて、かえってくればいいだけの話でねが!”


その通りです。

私自身もこんなシンプルな事が考えの先頭に出てこない。。。


自分もまず規則・決まりありきの考え方に侵されている、、、そう思いました。





   *   *   *




布団に入った佐藤さんに、監督さんが声をかけるシーンがあります。


 ”眠れないとき、、、どうしてるんですか?”



すると、佐藤さん、

 ”「ローマの休日」をもう一回見でな…”
 (…もう一回見たいな)


青春時代の良き思い出なんだそうです。


--- 佐藤さんとオードリーヘップバーン。


これですよ、これが原点ですよ!(^^)

なかなかにシャイで粋で、実に颯爽で恰好いい。

なるほど。佐藤さんの若い頃の思い出にその行動の原動力を感じました。



その時の佐藤さんのお顔。


ツヤツヤのニコニコ顔でした(^^)。



   *   *   *







この映画の題名の「先祖になる」の意味はこうです。


 今、震災でこの土地がゼロになった。。。

 でも、ご先祖様がこれまでしてきたのと同じように、


 自分がまず家を建てる。

 そして、自分がこの土地の先祖になる。


こういう意味が込められていました。



そして、佐藤さんの家がきっかけになって、今年中には、20軒の家が戻ってくるのだそうです。


佐藤さんの次の目標は、地元のコメで日本酒を造ること。


失ったものを一つひとつ取り戻す活動です。


自然の受け入れがたいことも止む無しと受け止め、


これから先、また何十年も、何百年もかけて、


元のような生活を取り戻して行こうという”呼びかけ”であると理解します。


ご先祖様のやってきたことを、このあたらしいご先祖様が、今ここで始められている。




その第一歩を、、、

しっかりと伝えてくれた、いい映画でした。





   *   *   *






堀さん、素敵な映画のご紹介ありがとうございました。


翌月曜の最終上映で早速に拝観しました!


大変おもしろく、あっという間の約二時間でした。#感謝。




この映画、東京では渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で3/29まで上映中です。


ご興味がある方はぜひご覧いただけたらと思います。



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