ご近所さんが最近お庭を作ったということで、中を見せてくれました。
こちらにある石群は、この方の実家、盛岡から運んできたもの。
実家を引き上げる際、親の代から受け継いだ石群とのことです。
この石群を滝として再生。
素晴らしいお庭を作られました。
この水。
自宅庭を掘って出した井戸水です。
そして、ポンプを使って水を循環浄化させ、このような立派な滝をつくっていました。
ご近所から、始終水の音が聞こえるというのはいいものです(笑)。
滝の水は庭の淵を一周させています。
このように水の流れに形を入れるため、あえて水中に石をいれて段差をつくっていました。
この水の流れの終点はこの池。
赤い金魚が数匹ゆうゆうと泳いでいました。
「ししおどし」は、農作物などに被害を与える鳥獣を威嚇し、追い払うために設けられる装置類の総称をいうそうです。竹筒で音を出すしくみは添水(そうず)。こちらも滝の水の音とともに、近所に風流な音を響かせています。
鮮やかなるスカイブルー。
この菖蒲の生え際は、水が澱まないような仕掛けをただいま考案中とのこと。
* * *
思いがけずに、毎日、水の流れと、ししおどしの音を聞いて暮らせるようになりました。
この水の音。
”じゃー”というのではなく、
”コボコボコボ”という感じで聞こえます。
ちょうど滝の下や川の流れの段差の箇所に、水の音が響くように石が組まれていて、その置き方に各所工夫がなされています。
それはそれは熱心に教えて頂きました。
今年定年を迎えたこの方。
通信教育で「庭園管理士」という資格を取り、この庭の設計を自ら行なったそうです。
こんな優雅で愉しみある趣味を持つことは素晴らしいです。
ぜひ見習いたいものです。
週末は色んな方がこのお宅前で立ち止まり、水の音を聞いています。
私も、犬の散歩や通勤途中、いつも清々しい気分にさせてもらっています。
* * *
さて、この庭園を見て思い出した一話があります。
城山三郎著の「打たれ強く生きる」という本の中にあるひとつのエッセイ。
本田宗一郎宅の日本庭園での話です。
滝のある人口渓流をつくって、春先に三千尾のアユの稚魚を離す。
そうして育てたアユを釣って、その場で焼いて食べてもらうという、野趣があって自然の釣りに近い本田流おもてなしのパーティ。
このアユ。本田さんらしくいろいろ研究して育て上げたそうです。
でも野生のアユとどうやっても一味ちがうと。
その違いは・・・・・
”洪水がないからですよ。。。”
だと。
「洪水は被害をもたらすのだけれども、一方では、川底や石などについていたもの、たまっていたものを洗い流す。それで川がまた生き返る。自然には無駄なものというのがないんですね」
もう一つ。
「いくら水が循環していても、ただ、きまった通りに流れているというだけでは、だめなんだな」
時には、、、
定められた流れに任せず、洪水を起こしてみることも必要であると。
本田流、凝りに凝った趣向の行き着く先の考え方。
停滞するな、澱んでしまうぞ、という力強いメッセージです。
ご近所さんの出来立ての庭園と清流を拝見し、停滞を許さぬ大事なメッセージを思い起こしました。
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