「さて、改めて。」
克治が少しずつ冷めたコーヒーを飲みながら、
改めて言葉を発した。
「簡単にですが、説明に戻りましょうか。」
「うん、お願いするね。」
「まずはカードの種類から。
全てをいっぺんに覚えるのは大変なので、
基本的なものだけご説明します。
まずは土地。
これがないと私たちは呪文を使うことができません。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/d8/48/j/t02200176_0461036812951227429.jpg?caw=800)
「いろんな種類がありますが、
基本地形、と呼ばれるものを一番見ることになります。
平地、島、沼、山、森、ですね。
それぞれ、白マナ、青マナ、黒マナ、赤マナ、緑マナを出すことができます。
1ターンに1つしか場に出すことができませんが、
ターン開始時に再度使用が出来るのでマナをうまく使いましょう。
このゲームは、相手に勝つ、
つまり、相手のライフを0にするのが一番わかりやすい勝ち方です。
相手のライフを0にするために、やっぱり一番わかりやすいのは、
クリーチャー、生物を召喚して、攻撃することです。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/17/37/j/t02200307_0265037012951228135.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/5e/37/j/t02200307_0265037012951228134.jpg?caw=800)
「沢山のクリーチャーがいます。
パワーが強い、弱い。
タフネス、クリーチャーのライフのようなものですね、
それが高い、低い。
特殊な能力を持っているものも沢山です。
色によって特徴が分かれるのでそこもうまく使いましょう。
クリーチャーは自分のメインフェイズに召喚できます。
そして、召喚したターンではすぐに攻撃やタップ能力が使えません。
これを召喚酔い、といいます。」
「呼び出したときはすぐには動いてくれない、だね。」
「です。
それから魔法カードですね。
即時性のカードと、場に残るカードがあります。
即時性のカードも2種類。
ソーサリー、インスタントといいます。」
「どちらも、使ったらそのまま墓地にいってしまう、
一回こっきりの能力を持つものです。
その分瞬間的な能力が高いです。
白なら回復、黒ならクリーチャーを破壊する、とか。
クリーチャーもそうですが、
魔法カードも、色によって特性があります。」
「ソーサリーとインスタント、っていうのは何が違うの?」
「使えるタイミングが違います。
ここに2枚のカードがありますね。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/a0/d0/j/t02200307_0265037012951230516.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/c8/db/j/t02200307_0265037012951230515.jpg?caw=800)
「このカードはどちらも能力はほぼ一緒。
カードを2枚引く、です。
まあ、《霊感》は対象のプレイヤー、と書いているので、
そうそうないでしょうが、対戦相手にも使えたりします。」
「・・意味あるの?」
「稀に・・、あ、団体戦だと仲間に使うことができますね。
基本自分に使うものなので、ちょっとそこは忘れてください。」
「ふむふむ。」
「話を戻します。
ソーサリーですが、クリーチャー呪文と同じく、
『自分のメインフェイズ』にしか使えません。
インスタント、はざっくり言うと、いつでも使えるカードです。」
「あ、なるほど。
相手のターンでも使えるんだ?」
「はい、使えます。」
「前にセイくんたちが相手のターンにも行動してるから、
なんなんだろうと思ってたけど、これだったんだね。」
「そうですね。
インスタントは、まあ直訳:瞬間、ですね。
相手のクリーチャー攻撃、に対して、
白なら、そのダメージを軽減するよ!
青なら、そのクリーチャーは手札に戻って!
黒なら、そのクリーチャーを破壊!
赤なら、そのクリーチャーに2点ダメージ!
緑なら、こちらのクリーチャーを強化!
と、突然の行動がとれます。
これで、相手の思い描いた行動が失敗します。
相手のターンでも動ける。
カードゲーム:マジックザギャザリングの特徴のひとつですね。」
「へえ。」
「詳しくはまた説明するとして、
相手のターンでも動ける、つまり臨機応変に対応できるので、
インスタントはソーサリーに比べて弱く作られています。
・能力自体が弱い、デメリットがある
・マナコストが高い
のどちらかですね。
デッキにあうものを使いましょう。
それから、常時効果の続く魔法、エンチャントです。
これも、『自分のメインフェイズ』にしか使えません。
分類がちょっとわかれますが、
・何かに付与するもの。
・単独で効果を発揮するもの
があります。
さらに、
・効果が常時、または定期的に発揮されるもの
・マナや生贄に捧げることで、効果を発揮するもの
があります。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/92/52/j/t02200307_0265037012951232611.jpg?caw=800)
「効果が常時発揮されるものは、わかりやすいですね。
このカードだと、
エンチャントされているクリーチャーが攻撃やブロックに参加できない。」
「クリーチャーが使えなくなった!?」
「相手のクリーチャーにつけて、身を守るための呪文です。
逆に自分につけてパワーやタフネスをあげるエンチャントもあります。」
「同じく、効果が常時発揮されるもので、
場に残るものとして、少し古いですが、こういうカードもあります。
全体的に効果を発揮するカードですね。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/0a/2b/j/t02200307_0265037012951234878.jpg?caw=800)
「すごい強そう。」
「軽いクリーチャーを並べるデッキによく使われました。
スタンダードからは落ちていますが、
たまに、ディンさんが昔のデッキを取り出して使ってます。」
「へえ。」
「コストを払うことで発揮するカードだと、こんなカードがあります。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/03/5e/j/t02200307_0265037012951232779.jpg?caw=800)
「マナさえ払い続ければ、ターン終了時まで強くなれます。
この能力は特に注釈がない限りは、
インスタントが使えるタイミングで使えます。」
「相手のターンにも使えるんだ?」
「そうです。
こちらも、常時発揮がいいのか臨機応変な方がいいか。
色々考えちゃいますね。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/84/86/j/t02200307_0265037012951232615.jpg?caw=800)
「こんな感じで、どっちの能力も持ってるカードもあります。」
「すっごい強そうだけど。」
「使ってみてのお楽しみですね。」
克治が軽く笑顔を返す。
「それから、アーティファクトと呼ばれるカードがあります。
色のない、エンチャント、だと思ってもいいです。
エンチャントは魔法ですが、
アーティファクト、はその名前通り、人工物、ですね。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/b9/27/j/t02200307_0265037012951232613.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/f9/51/j/t02200307_0265037012951241136.jpg?caw=800)
「エンチャントのように、
効果を発揮し続けるものもあれば、
コストを支払うことで効果を発揮するカードがあります。
また、人工的に作られた動く機械もあります。
アーティファクト・クリーチャーといいますが、
通常のクリーチャーと同じく、攻撃や防御が出来ます。
マナコストが色つきではないので払いやすいのが特徴です。
『アーティファクトを破壊する』という対策呪文が沢山存在するので、
破壊されやすい部分もあります。」
「アーティファクト・クリーチャーだと、どうなるの?」
「アーティファクト・クリーチャーは、
アーティファクト、であり、クリーチャー、です。
『アーティファクトを破壊する』
『クリーチャーを破壊する』
どちらの呪文でも破壊されます。」
「なるほど。」
「言葉での説明はそのくらいにして、
遊びながら覚えるのが一番だと思います。
見て覚える、やって覚える。
遊びなんですからその方が楽しいですね。」
「あ、ちょっとまって。
さっきのインスタントなんだけど。」
「はい。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140515/21/mtg-1125/ba/15/j/t02200307_0265037012942190082.jpg?caw=800)
「このカードは、呪文1つを対象とし、打ち消すだよね?
さっきまで話してた《刺し戻し》もそう。
どうやって使うの?」
「お答えしましょう。
呪文は、
使ったらそのまま”はい効果発揮ー!”というわけではありません。
効果を発揮する前に、『スタック』と呼ばれる領域に積まれます。」
「プログラム用語が出てきた。」
「あ、そうか千明さんはプログラムわかる人ですね、失礼しました。
プログラムでいうとスタック・キューという言葉がありますが、
マジックザギャザリングの呪文は、
すべてあと入れ先出し、つまりスタック形式で呪文の解決をします。」
「おお。」
「考え方は同じですが、スタック領域、という場所があると思ってください。
例を出すと、
千明さんの場に、クリーチャーが1体います。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/17/37/j/t02200307_0265037012951228135.jpg?caw=800)
「千明さんは、アタックフェイズで、
《ケンタウルスの武芸者》で僕を攻撃することを選びました。
僕はブロックできるクリーチャーを持っていませんでした。
何もしなければ、そのまま《武芸者》の攻撃、3点のダメージを受けます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/53/91/j/t02200307_0265037012951232612.jpg?caw=800)
「ここで僕は呪文を《武芸者》に向けて使います。
ただしくは”スタック領域に載せます。”
これで、今スタックには、
①《ショック》
があります。」
「さて、今度は千明さんが困る番です。
このまま呪文を解決すると、
《武芸者》に《ショック》のダメージが与えられて破壊されます。
さあ、そんな時、
千明さんはこのカードを手に持っていました。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/80/06/j/t02200307_0265037012951245894.jpg?caw=800)
「巨大化。」
「緑ではオーソドックスな強化呪文です。
千明さんは《武芸者》を失いたくないと思ったので、
《巨大化》を《武芸者》に使います。
ただしくは、”スタックに載せます。”」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/1d/30/j/t02200288_0346045312951247882.jpg?caw=800)
「僕はもう何も使うことができなかったので、
何も使いません、と宣言します。
千明さんも、何もしないことを選びました。
さあ、スタック領域を解決させていきましょう。
後入れ先出し、ですので、②《巨大化》から解決させます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/a1/a4/j/t02200307_0265037012951248643.jpg?caw=800)
「次に、①《ショック》を解決させます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/53/97/j/t02200307_0265037012951248644.jpg?caw=800)
「これで、僕の使った《ショック》は役に立たなくなってしまいました。
現在攻撃中でしたので、
僕は6点のダメージを与えられることになります。」
「おお、《巨大化》すごい。」
喜んでいる千明をよそに、
机の上に置かれたカードを並び替える克治。
「逆に、攻撃を優先させようと思って、
千明さんが先に使うとどうなるでしょう?」
「ええっと・・。
①《巨大化》
②《ショック》
《ショック》から解決されるから、
《灰色熊》 2/0
そのあとに、《巨大化》が解決されるから、
《灰色熊》 5/3
で一緒?」
「違います。
《ショック》が解決した時に、タフネスが0になってしまいました。
次の呪文を解決する前に、
《武芸者》は破壊されてしまいます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/16/mtg-1125/cc/5c/j/t02200307_0265037012951251862.jpg?caw=800)
「《巨大化》は対象にしていたクリーチャーがいなくなったので、
効果を発揮できずにそのまま墓地にいってしまいます。」
「うわ、大損だ。」
「ですね。
呪文の応酬が続くと、どんどん複雑になりますが、結果は同じですね。
今の二つの呪文を二人で沢山使って、
①《巨大化》
②《ショック》
③《巨大化》
④《ショック》
⑤《巨大化》
ここで止まったら、僕が大損ですね。
先に+3/+3の修正をされて破壊されずに、
《武芸者》なら12/11で、僕は12点のダメージを受けます。
当の《武芸者》はタフネスが0にならずに増えていったので、
アタック時には11/5とまだまだタフネスが大きいです。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/16/mtg-1125/65/ad/j/t02200307_0265037012951252765.jpg?caw=800)
「逆に、僕に呪文がもうひとつあって、
⑥《ショック》
これが使えていれば、逆に千明さんが大損です。
⑥《ショック》によって、まだ2/2の《武芸者》が破壊されるので、
①~⑤のカードは効果を発揮せずに墓地にいきます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/16/mtg-1125/cc/5c/j/t02200307_0265037012951251862.jpg?caw=800)
「あれ、セイくんの《ショック》はプレイヤーに変更できないの?」
「対象を取る呪文は、使用したとき、
スタックに載せる前に○○に使います、と宣言する必要があります。
ですので、この場合、僕の2枚の《ショック》は無駄打ちですね。
ダメージを沢山受けずに済んだと諦めるしかありません。」
「強化カードって強いんだ・・。」
「そうでもないですよ?
たとえば、今僕は赤いカードで破壊しようとしましたが、
黒だと、こんなカードをスタックに載せます。」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140524/15/mtg-1125/ce/0c/j/t02200307_0265037012951232614.jpg?caw=800)
「千明さんの手にあと3枚《巨大化》があるとして、
使ってもいいですよ?」
「クリーチャーを破壊する・・って、使っても一緒じゃん!」
「そうです。
ダメージを与えるものなら更なる強化で補強できますが、
黒の破壊には別の手段が必要です。
・・といっても、
この呪文はクリーチャー専用、
先ほどの《ショック》なら、
プレイヤーに2点と、別の使い方が出来るので、
どっちが弱い!っていうわけじゃないです。
使い方の違いですね。」
「むむむ・・。
いろんなカードがあるなあ・・」
カチャ・・
「おいおい、まだくっちゃべってんのか?」
扉が開き、
トレイを持った丈が、三度部屋へと入ってきた。