映画「星めぐりの町」。2018年、黒土三男監督・原作。

 

      

 

 愛知県の里山で手作り豆腐を作る男(小林稔侍)は、亡き妻の遠い親戚だという身寄りのない少年(荒井陽太)を預かることに。

 少年は東日本大震災で家族全員を失い、心を閉ざして誰とも話さない。しかし、男が作った弁当の旨さや、豆腐作りの様子や配達先での出来事などを通じて徐々に心を開くようになり、仕事や家事の手伝いもしてくれるほどに変化する。

 そんなとき、少年が留守番をしていたときに小規模な地震が発生して……。

 

 この懐かしさの正体は……そう、高倉健さんの映画。

 小林稔侍さんは昔から高倉健さんの弟分として知られているから、さぞやこの役が決まったときはうれしかったのではないか。

 何しろ、妻に先立たれた朴訥で実直な男という設定といい、ジャンパーや帽子などのファッションといい、まさしく高倉健さんの世界。

 しかも役名が島田勇作だからね。高倉健さんが「幸福の黄色いハンカチ」で演じた役名が島勇作、「遙かなる山の呼び声」のときは田島耕作なんだから、明らかに意識してる。

      

 

 また、一見すると話の本筋とは関係がなく、なくても作品は成立したと思えるような脇役たちのさまざまなエピソードも丁寧に描いているところに本作の特徴があると言えるだろう。地元企業などからも制作費を出してもらっているから、人情にあふれるいい町ですよ、というイメージアップ作戦にも協力する必要があったのかもされないが、監督さん自身が東日本大震災を境に愛知県豊田氏に移り住んだそうだから、きっと地元の人たちからよくしてもらったお礼の気持ちもあったのだと思う。

 

 なお、小林稔侍さんにとっては本作が初主演映画だとのこと。

 そしてこの小林稔侍さん、拙著「運命のひと」ではオビにコメントを寄せていただいたというご縁がある。高倉健に憧れて青春期を過ごした男の半生を描いた話なので、是非にと私の方から版元経由でお願いしたところ、素敵な言葉を頂戴できたのでありました。
 小林稔侍さんの、こういう設定の役柄の作品、もっと観たいぞ。

 

 

 

 読書ユーチューバーとして知られるペキョさんが拙著「ひなた商店街」「民宿ひなた屋」を紹介してくださってます。感謝感謝。

 動画の真ん中辺りからです。