映画「42 世界を変えた男」。

2013年アメリカ、ブライアン・ヘルゲランド監督。

 

  

 

        

 

 メジャーリーグ初の黒人選手ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ポーズマン)の実話を映画化。

 ブルックリン・ドジャースのGM(ハリソン・フォード)は信念と過去の反省から有能な黒人選手をチームに加えることを決断、主力選手たちの反対署名も跳ね返す。

 GMがジャッキーを選んだ理由は、単に選手としてのスキルだけでなく、これからやってくる差別の嵐に彼なら耐え抜けるかもしれないという人間性を見込んでのことだった。

 

 チームメイトたちは温度差があり、仲間として受け入れる者もいれば無視したり露骨に嫌悪感を見せる者も。

 そんな中、ジャッキーは怒りをプレイにぶつけて打って走って守って結果を出し、チームは勝ち進む。

 するといつの間にか、相手チームからの差別的なヤジにチームメイトたちも言い返すようになり、次第にまとまりを得てついに優勝決定戦に臨むことに。

 

 先日、このブログ内で映画「リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング」を紹介したが、本作も単なる一スポーツ選手の活躍を描いたものではなく、アメリカ現代史を知る上で貴重な資料だと思う。

 遠征先でもジャッキーだけはホテルに泊めてもらえないばかりか、黒人がいるチームは全員お断りという目にも遭って仲間内の関係が悪化したり、無数の殺害予告の手紙が届いたり。

 

 現在も人種差別は深刻な問題だが、本作のような作品を観賞することで、それでも確実に人々は人種差別と闘って事態は改善し続けているのだということも判り、人間は決して愚かなままではないことを確かめることができる。
 

 ジャッキー・ロビンソンは1962年に殿堂入りを果たし、後に彼の功績を称えて背番号42は全球団の永久欠番となり、4月15日には全球団の選手やコーチらが42の背番号でプレーーすることが慣例となっている(先日、大谷翔平選手も42をつけてプレーしていた)。

 ジャッキーの死後、妻のレイチェルは非営利財団「ジャッキー・ロビンソン財団」を設立、意欲のある若者たちに奨学金を交付するなど支援活動が行われている。

 

 最近はネット上の中傷などに対してキレたり必要以上に傷ついたりする事例を多く見聞きしているが、もっとジャッキー・ロビンソンをお手本にすべきではないだろうか。ちなみに私自身の座右の銘は中日ドラゴンズ監督時代の落合博満さんに倣って「言いたいやつらには言わせておけばいい」。いちゃもんをつける側は誰でもなれるが、つけられる側は選ばれた才能の持ち主だけ。