映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」。2023年、渡辺一貴監督、荒木飛呂彦原作。
他人の記憶を読み取るなどの特殊能力を持った人気マンガ家(高橋一生)は、過去に知り合った女性から聞いた、呪われた漆黒の絵画がルーヴル美術館の地下に所蔵されているらしいことを知り、確かめるために現地に赴いたところ、関係者が次々と錯乱状態に陥り……。
冒頭部分で主人公が超能力者的なことをやってのけたり、後半部分で登場人物たちが幻覚に襲われて燃えたりする場面があったせいで、ははあ、これはコミックが原作で、この映画はいわゆる二次利用作品なのだなと思ったらやはりそうで、あの「ジョジョの奇妙な冒険」で有名なマンガ家さんが原作者だった。
マンガではなら受け入れられるシーンでも、実写化するとどうしても奇異に映ってしまうことがある。それは仕方がないことだと受け入れるよりも、個人的には実写化する場合にはそれにふさわしい、違和感を取り除く工夫を加えた方が映像作品としての完成度は高まると思っている。
もちろん原作者がそれを認めてくれることが大前提なのだが。
何にしろ、マンガでは現実ではあり得ないような出来事も絵に描いて表現することができるので、作品によってはそのまま実写化すると荒唐無稽さが目立ってしまうことになる。
小説を実写化する場合は普通そこまでの乖離はない。そこがマンガと小説の違いだろう。
ちなみに、「マジンガーZ」「デビルマン」などで知られる永井豪さんは、自身の作品がアニメ化されるに当たっては「アニメは別物」だという考えから内容に口出しすることはなかったとのこと。
小説家の浅田次郎先生も映画化のオファーがあったときには「映画のプロのみなさんにすべてお任せします」と伝えているらしい。
一方では、原作に忠実な内容でないと認めない、という立場のマンガ家さんや作家さんもいて、それはそれでまっとうな理由や事情がある(過去に信頼して任せたら原作の評判まで落とすような失敗作を作られてしまった、など)と思うので、なかなか一般論として語るのは難しい問題ではある。
ちなみに私自身は、長編小説を二時間の映画にするのはもともと無理があるのでどこかをばっさり切り落とすべきだと思っているが、八話ぐらいの連続ドラマなら原作に沿った作り方ができるのではと考えている。
内容については、映画「髪がかり」のときに脚本のごく一部を修正してもらった程度で、ほとんど口出しはしなかった。ただ、それは信頼して任せたというより、小説と映像作品の違いを見せてほしいという気持ちでいるから。