映画「耳をすませば」。2022年、平川雄一朗監督、柊あおい原作。
中学時代に図書室の貸し出しカードを通じて知り合った女子と男子。
女子は、男子がチェロ奏者を目指してイタリア留学することに触発されて小説を書き始める。
それから10年が経ち、チェロ奏者の男(松坂桃李)はイタリアで演奏者として充実した日々を送っていたが、小説家を目指していたた女(清野菜名)は児童小説の編集者をしながら応募を続けても落選続きで厳しい現実を突きつけられて……。
最初はジブリ映画の実写化なのかと思ったが、まったくそうではなくて、もともとあった原作コミック(少女マンガ)を映画化したということらしい。
後でそのことを知って、だから少女マンガ的な世界の話だったのかと腑に落ちた。
私自身は少女マンガ的な展開や着地点がどうも苦手で、ジブリ作品をなぜこんな風に描き直したんだろうと首をかしげていたのだが、実際はもともと少女マンガだったのなら仕方がないよな、と一応納得した次第。
と、何だか奥歯にものがはさまったような言い方をしております。要するに私は少女マンガファンには申し訳ないのだが、自分なんてダメだというコンプレックスを抱えるヒロインの前に才能あるイケメン男子が現れて、なぜかヒロインに対して一途という、白馬の王子様的な話がどうも気持ち悪くて受けつけないんですわ。
ちなみに本作を鑑賞しながらメモった内容は以下のとおり。
中学時代に両思いになって大人になっても続くって身の回りに一人もいないぞ。
フラれた悔しさを創作にぶつけていつか見返す話の方が面白くないか。
クラッシックの世界でプロになっても稼ぎは少なく生活は大変なはず。
あれだけ物語が好きで読書量が多かった女子なら新人賞ぐらい獲れてるだろう。
プロ作家になってから売れない状況を描いた方がリアリティがあるのでは。
自分だったら二人はいったん別れさせて、スランプに陥って苦悩する者同士として再会し、新たな刺激を得てスランプから脱する物語にしたい。
というわけで、こういったメモが後に新たな創作につながるのです。
クリエイターはメモを取る。そしてメモを元に、自分ならこうする、が生まれる。
ちなみに、本作とは逆に、好きで憧れていた男と別れた後、見返すために努力を続けてついにその男と対決のときを迎えるという話が「ハッピーダーツ」という映画。あまり評判にはならなかったようだがヒロインの生きざまに深く共感した。