映画「喜劇 愛妻物語」。2020年、足立紳監督・脚本・原作。

 

      

 

 売れない脚本家の夫(濱田岳)は、妻(水川あさみ)のパート仕事に頼る生活で、夜の夫婦関係も拒絶されてばかり。そんなとき、過去に作ったプロットが映画化される話がきて、脚本を担当させてもらえることを期待して妻と幼い娘を連れて取材旅行に出かけるが、やることなすこと裏目に出て妻は苛立ちを募らせるばかりで……。

 

 似たような設定の小説を読んだ気がしたので備忘録を検索したら、同じ原作者さんによる「したいとか、したくないとかの話じゃない」という、やはり売れない脚本家が夫婦間のセックスレスに悩む内容の話だった。このブログの中でもその小説のことに触れていて、〔私はこういう話、恥ずかしくて書けない。どうしても自分の私生活が出てしまうからね。〕と書いていた。

 

 そこはともかく、私もデビューはしたものの、書いても書いても売れず、プロットを送っても返事をもらえなかったり完成原稿を「やっぱり出版しない」と言われたりと、悔しい思いをした時期があったので、物語の内容にはいろいろ身につまされた。当時の私も奥さんのパート収入が頼りだったしね。ただ私の場合は、奥さんからののしられたり否定的な言葉を浴びせられたりしないで済んだし、売れないなりにも小説は出版し続けていられたので、本作の夫婦よりはかなりマシだったのかも。

 というか、本作の主人公はろくに新作を書こうとしないでだらだらと生きてるけど、私は書き続けてたしプロット作りもサボらなかったから、マシだったのも当たり前なんだろうけどね。

 

 ちなみに本作の主人公みたいに「これから頑張るから」と宣言するタイプの人は、心理学者さんによると、かえって挫折しやすいとのこと。宣言することで自分を追い込むよりも、宣言した瞬間からダメだったときの言い訳を考え始めてしまうんだって。判るわー、私自身は不言実行派だから。新人賞を獲ってデビューするまでは小説を書いていることを奥さん以外は誰も知らなかったし、今年の抱負とか今後の目標とか聞かれても「今書いている小説をいい作品に仕上げることしか考えてません」って答えるのみだしね。
 

 それはともかく、主人公に対して共感と反感の双方を覚える作品というのは、それだけ記憶に残る作品になるということにならないだろうか。