アニメ映画「アーヤと魔女」。2021年、宮崎吾朗監督、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ原作。

 

    

 

         

 

 孤児院で育った少女アーヤは、他の子たちを率いて楽しく暮らしていたが、魔女と謎の男が住む家に引き取られることに。

 魔法を教えてもらえると期待して、こき使われても我慢していたが、教えてもらえそうにないため、魔女の手下として不満をため込んでいた黒猫の協力を得て、密かに魔法を身につけてゆき、反撃を開始した結果……。

 

 終盤の急展開がやや唐突な印象を受けたが、不遇にもへこたれずに打開を図ろうとするアーヤのたくましさが小気味いい。

 そして、物語のほとんどは魔女の家と敷地内を舞台にしており、限られた登場人物だけで描かれているところに、個人的に好感を持った。アニメに限らず、映画作品の多くが場面転換も登場人物も多すぎてごちゃごちゃしているなあとと不満を覚えることが多いだけに、そうそう、こういうすっきりしたストーリーの方が登場人物の関係がしっかり描けていいんだよな、と再認識した。

 

 潜水艦や宇宙船を舞台にしたサスペンスや、裁判所内を舞台にした法廷劇、立てこもり設定の作品などに良質な作品が多いのも、限られた登場人物でしかもあちこち動き回れないという制約があるから。

 カーチェイスや銃撃戦などのごまかしができず、濃密なドラマを描くしかないため、作品の質が向上するのである。

 小説や脚本の新人賞を目指している人は、是非、頭に入れておいてほしい。

 

 また、安手のテレビドラマなどでは悪いキャラは徹底的に悪くて嫌なやつだったりして、生身の人間には思えなかったりすることがあるが、本作では魔女も謎の男もそれなりの過去があって、実は悪いやつではなかった、という流れになっていて、作品をより印象的なものにしている。