映画「TIME/タイム」。2011年アメリカ、アンドリュー・ニコル監督。

 

      

 

 25歳の若さを保てる代わりにそれ以降の人生は労働やギャンブルなどで時間を稼がなければならない近未来社会が舞台。

 富裕層は多くの時間を手にし、スラム街の住人はいつ寿命が尽きるか判らない中での生活を強いられている。

 

 貧困な家庭に育った男(ジャスティン・ティンバーレイク)は、たまたま強盗に遭った男性を助けたところ、もう生きていたくないと言われ、目が覚めたときには百年もの時間を受け取っていた。

 しかし時間取り締まり局は、この男が大量の時間を強奪した犯人だと決めつけて逮捕し、手にした時間をすべて没収。

 彼は時間銀行を経営する大富豪の娘を人質に取って逃亡するが、その娘はリスクのない退屈な人生に辟易していたため、男と行動を共にすることを決め、大量の時間を強奪してスラム街の人々に還元することを試みる……。

 

 設定はいかにも近未来SFものという感じで、冒頭部分では興味を持ったのだが、時間の貯蓄や前借りといったシステムによって人々が人間らしい心を失うという設定はミヒャエル・エンデの名作「モモ」がとっくに存在しており、無実の罪で逃げ回るところは「逃亡者」、男女コンビが追撃をかわしながら強奪事件を繰り返すところは「ゲッタウェイ」によく似ていて、要するに銃撃戦とカーチェイス中心のデジャブ的な竜頭蛇尾作品でありました。

 これを観た多くの方々も、時間が通貨として流通するという設定なしで普通に現代物の作品として描いてもさして違いのない仕上がりになったのではないかと思ったはず。いわゆるSF作品あるあるで、SF的な要素を取り除いたとしても実は作品がちゃんと成立するのであり、だったらどうしてSF的な設定を取り入れたのかという根本的問題が残るわけでして。

 

 現代では既に、認証した人物でないと作動しない車や銃が出現しているし、監視カメラには顔認証システムや歩容解析システム、危険物探知システムなどが導入されているのに、本作は時間を売り買いできる未来という設定なのに、さまざまな部分でのアナログぶりがひどくて笑ってしまったのでありました。

 というわけで、本作は観ながらいろいろとツッコんで笑うのが正しい楽しみ方なのでありました。