映画「今夜、ロマンス劇場で」。2018年、武内英樹監督。

 

 

 昭和レトロの時代、映画監督を目指す助監督の男(坂口健太郎)の前に、何度も繰り返し観て恋焦がれていた古い映画のヒロイン(綾瀬はるか)が現れる。

 彼女は映画の設定どおりに助監督の男を家来として扱い、撮影現場に紛れ込んでさまざまな騒動を起こすうちに、恋愛感情を持ち始めるが、作品世界の住人と現実世界の人間との間には見えない壁が……。

 

 ヒロインが荒っぽい性格のお姫様という設定は「隠し砦の三悪人」、映画作品のキャラクターが現実世界にやって来るところは「ラスト・アクション・ヒーロー」、映画館の隆盛とその後の衰退をノスタルジックに描いている点は「ニュー・シネマ・パラダイス」「オリオン座からの招待状」、冒頭部分の作中作映画は「ローマの休日」、ヒロインがわざと男を遠ざけようとする場面は「カサブランカ」「チャンプ」、ガラス越しのキスシーンは「また逢う日まで」などを意識したものだと思われるが、本作はそれら先行作品ーのオマージュに終わっておらず、ストーリーにしっかりした芯が入っていて、良質なファンタジー系メロドラマに仕上がっている。

 ラストシーンには、人間の想像力によって世界は変えられるというメッセージが感じられ、「ネバー・エンディング・ストーリー」の精神性を参考にしたのかも。

 

 ちなみに、「隠し砦の三悪人」の基本設定は「スターウォーズ」のモチーフになったとして、映画通の間では知られているが、個人的にはジョージ・ルーカス監督は、1967年に日本で放映された子ども向きテレビSFドラマ「キャプテンウルトラ」も観ていたんじゃないかという気がする。「キャプテンウルトラ」に出ていた凸凹コンビのハックとジョーなんか、「スターウォーズ」のP3COとR2D2とキャラが実によく似ている。