古い記憶の交換 | 仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

ピアノ調律師をしています。何気ない日常の中に密かに隠れている輝きを見つけたい、そんなことを考えながらつらつらと書いています。

「その時、後悔しないように生きなきゃって思って、このピアノを直して死ぬまで大事にしようと、決意したんです。」


60代の主婦のお客様が、昨年の年末に救急搬送されたときに、人生観が変わったと話してくれた。


大学生の時に買ったYAMAHAのG3E


地方への引越しの時にも手放さずに持ってきた。


43年経過し、キンキン、カンカン鳴っていた硬く潰れたハンマーを全交換。


柔らかくまろやかで、明るい音色に生まれ変わった。


「何かを始めようとするとき、ネガティブなことが起きることがあるけど、それは試練だと思うの。一歩踏み出せば、道は開けるのよ。」


作業を終えてお茶を頂きながら、


昔のことは忘れてしまったと、明るく話すお客様の話を聞いて


仲間と一緒に4日間に渡っての作業で、


交換したのは、ピアノの古いハンマーだけではなくて、


古くてネガティブな記憶だったのかもしれないなと


感じていた。