「高永さんって、ホント面白い人ですね。」
ごく普通の感想や、たとえ話に対して、彼女は大げさなほどのリアクションだった。
「私は小さな頃から、教育テレビしか観てきませんでした。漫画も許されなくて。」
50歳を超えて、成人した娘さんもいる彼女は、「塔の上のラプンツェル」のまさに現代版を生きてきたらしい。
子どもの頃は親から、そして結婚してからは夫から「外の世界は悪で満ちていて危険だ」と、安全な塔の中だけで生きてきた。
そんな彼女も、小田さんのコンサートに行ったり、チッチとサリーの漫画を買ったりして、少しずつ、自分の殻を破ろうとしていた。
「高永さんから、勇気をいただきました。」
一年前にそう言いながら、体調を悪くして、病院に行くというLINEを最後に、音信は途絶えた。
最近、彼女が病気で亡くなったことを風のたよりに聞いた。
僕は彼女の人生を語れるほど知ってはいないし、その資格もないけど、
それでも、人生の最後に生の小田さんの音楽に触れられたことや、
塔の外の世界(教育テレビ以外)にも、美しいものが沢山あるということに気づけたことは、
きっと幸せなことだったんだと、
僕は、思う。
ようこさん、
今までお疲れ様でした。ゆっくりおやすみください。
そしてそしてまたいつか、
「高永さんって、ホントに面白い人ですね。」って、
笑ってください。



