仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

ピアノ調律師をしています。何気ない日常の中に密かに隠れている輝きを見つけたい、そんなことを考えながらつらつらと書いています。

ピアノの調律で出会ったピアノ、持ち主様とのなんとも深いストーリーを書いていきます。また古いものが大好き。特にイギリスのアンティークなんて良いですね❗手巻きの時計とか万年筆とか古い椅子とか、思い入れのあるものについても綴っています。

「お昼は誰かに呼ばれてますか?」


当時、そのグループの中の人気者たちは、あちこちの家庭に呼ばれて豪勢なお昼にあずかっていた。


でも、目立たない彼は誰からも誘われることはなく、いつも一人で小さな公園のベンチで慎ましいランチを膝に広げていた。


「お昼は誰かに呼ばれていますか?もし、よかったらウチにきませんか?」


午前中の集まりが終わった時、思い切って声をかけた。


彼は少し照れくさそうに喜んで、小さな我が家のドアを開けて入ってきた。


「持参したサンドイッチがあるんです。」


彼はそう言って、カバンからラップに包まれたサンドイッチを二つ、取り出した。


そこには、食パンにスキッピーのピーナッツバターを挟んだだけのサンドイッチ(と呼べるかどうかはわからないが…)があった。


「これ、よかったら食べてください。」


彼はそう言って僕が出した質素なランチと引き換えに、そのサンドイッチを差し出してくれた。


「スキッピーのピーナッツバター、美味しいですよね。」


僕は彼の作ったそのサンドイッチの固い耳を咀嚼しながら、


豪勢なランチに集(たか)る人たちにはない、朴訥(ぼくとつ)な人の魅力を知り始めていた。










「一年後の自分はどんなかな?」


お客様が、帰りに持たせてくれたお菓子に、小さなメモが添えられていた。


素朴な白いマグカップに、僕のために新調してくれたという、ステンレスのドリッパーで淹れてくれた彼女のコーヒーは、


雑味がなく、両手で包み込めるようなまろやかなものだった。


「私、大人になってからの方が、生きやすくなりました。」


そう言って、照れくさそうにかきあげる彼女の細いメッシュの入ったショートボブの前髪を見ながら、


僕は、自分の一年後の姿を想像できずに、途方に暮れていた。







「私のテイストではないので…ちょっと考えさせてください。」


あるテディベア作家さんに、ぬいぐるみ製作をお願いしたら、そう返答された。


その作家さんの作品は、つぶらな瞳のテディベアが、白いレースのエプロンと日傘をさして藤のカゴを抱えているような、ベル薔薇(古っ💦)のような世界観を持ったものだった。


僕は、友人が描いてくれた、太い眉とヒゲのブツブツが特徴的な犬と猫のイラストに、生命を宿したかった。


愛くるしい顔のぬいぐるみではなく、どことなく哲学的で小難しいことを呟くような(「何故、ピアノを弾くのか?」という問いかけに「そこにピアノがあるから。」とポツリと言う、みたいな)男の子の犬と猫なのだ。


やはりテイストが違うのをオーダーしたのは、失礼だったかも…


諦めかけていたとき、返事の代わりに、この子たちが届いた。


そこには、思わず笑いたくなるような、お茶目で、少しひょうきんな表情のフィフィ君(猫)とソフィー君(犬)がいた。(名前も付けた)


「製作できる喜びを与えてくださったこと、心から感謝しています。」


そんな言葉までくださった。


「母は私から見ても、仏のような人なんですよ。」


テディベア作家のピアニストの娘さんが、そう言いながら渡してくれた、その屈託のない笑顔が、


この作家さんの全ての作品の原点であることに、


僕はすぐに気がついた。