王 維(おう い、699年 - 759年 / 701年 - 761年)
中国盛唐の詩人。
同時代の詩人李白が“詩仙”、杜甫が“詩聖”と呼ばれるのに対し、
その典雅静謐な詩風から詩仏と呼ばれ、
南朝より続く自然詩を大成させた。
韋応物・孟浩然・柳宗元と並び、
唐の時代を象徴する自然詩人である。
とりわけ、王維はその中でも際だった存在である。
画についても、“南画の祖”と仰がれている。
送祕書晁監還日本國
【秘書晁監(ちようかん)の日本国に還(かえ)るを送る】
[五言排律]
漢文
積水不可極
安知滄海東
九州何處遠
萬里若乘空
向國惟看日
歸帆但信風
鰲身映天黑
魚眼射波紅
鄕樹扶桑外
主人孤島中
別離方異域
音信若爲通
書き下し文
積水(せきすい)極(きわ)むべからず
安(いずく)んぞ知らん滄海(そうかい)の東
九州何(いず)れ処(ところ)か遠(とお)からん
万里空(くう)に乗(じよう)ずるが若(ごと)し
国に向って惟(ただ)日を看(み)
帰帆(きはん)但(ただ)風に信(まか)すのみ
鰲身(ごうしん)天に映(えい)じて黒く
魚眼(ぎよがん)波を射て紅(くれない)なり
鄕樹(きようじゆ)扶桑(ふよう)の外(そと)
主人(しゆじん)孤島(ことう)の中(うち)
別離(べつり)方(まさ)に異域(いいき)
音信(おんしん)若為(いかん)してか通(つう)ぜん
現代語訳
ひろびろとした海の果てはきわめようもない。
東の海のさらに東、君の故国のあたりのことなど、
どうしてわかろうか。
中国の外で九大州のうちどこが一番遠いだろうか。
君の故国へ帰る万里の道は、
空中を飛んで行くようなものだろう。
故国へ向かって行くにはただ太陽を見るばかり。
帰国の航海は、ただ風にまかせて進むのみ。
途中では、波間に大海亀の甲が大空を背景に黒々とみえ、
大魚の眼の光りは波頭を射るように輝いて紅にひかる。
君の故郷の木々は、扶桑の国の外にしげり、
その故郷の家のあるじである君は孤島の中に住む。
互いに別れてしまえば別々の世界の人となるのだ。
便りもどうして通わせたらよいことだろうか。
鑑賞
安倍仲麻呂(あべのなかまろ)は遣唐使に従って
中国に渡ったまま帰国せず、唐の官僚となった。
この詩は、仲麻呂が日本へ帰ることに成、
百官が送別の宴を開いたときの作。
王維は、異国人の同僚の送別に際して、
しみじみとした別れの感傷を詠ずるより、
その友人の帰って行く先、そこにおどろおどろしい
想像の世界を構築してみせることによって、
仲麻呂の旅路を気遣う友情としたのである。
これが、はしなくも、当時の中国人の日本感、
ひいては世界観をうかがい知る材料を提供することになった。
例えば、「滄海」、「九州」、「鰲」、「扶桑」などの語は
すべて神話伝説、空想上の世界に出てくる言葉ばかりである。
【補説】
仲麻呂の船は帰国の途中嵐のため消息を絶ち、
遭難が伝えられた。
仲麻呂の船は今のベトナムあたりに漂着し、
彼はまた長安に戻って仕え、かの地で没した。
2026年6月27日
小川下池の水位は6月3日から
危険レベルを超えた状況が続いている。
昨日の強雨で家のそばの川の水位も、
再び上昇している。
雨が止んでいるので午前中の散歩は、
小川下池の放水量を増やして来るつもりである。