今度はT君の話です。彼は39歳。ダウン症です。
彼はお金を持ってると全部使っちゃうので お母さんが毎朝500円くれるんですよね。それで彼はたばこを吸うので当時250円だったセブンスターを2箱買うわけです。ある日ぼくのところで働いてくれているAさん(この人は健常者です)が誕生日で そのことを知ったT君がAさんに「じゃあこれ誕生日おめでとう」と言って、セブンスターを2箱くれたんです。「やさしいなぁ、Tちゃん」と言ったら 「えへへ」って。そのあとT君が休憩時間になってもたばこを吸わないので、「Tちゃん、たばこ吸わんの?」と聞いたら、「ないねん」って。それでAさんが「Tちゃん、たばこやるわ」って言ったら 「ありがとう」って言って そのセブンスターの封をすぐに開けて、おいしそうに吸ってました。「ぷはーー」ってやるんですけど。
何年たってもその話Aさんとするんですけど、なんか いいですよね。その度に
「俺なんか腹ん中、真っ黒やで」と思います。
障害の専門の方や知的障害の人といっしょに暮らしたり、仕事をしたりしている方は 「こんな話はしょっちゅうなんだろな」と思います。私は10年で14、5人の比較的軽い症状の障害の人たちとかかわってきただけで、ちょっと覗いただけです。それでも人生変わりました。実際10年で成長したのは、最初偉そうにしていた自分だけでした。