登山の解説書に書いてある「疲れにくく安全な歩き方」をベースに、登りの歩き方の基本を2回に分けて考えてみます。
 今回は、「体軸を作る」、「前に出す脚の膝を上にあげてから前に出す」、「足裏全体で着地」の三項目です。
 次回は、「歩幅は狭く」、「ゆっくり」、「歩行中の運動量をゼロにしない」の三項目を考える予定です。

(1)体軸を作る
イメージ 1 ただ立っている時の楽な姿勢とは、筋肉で体重を支えるのではなく、できるだけ骨で支えるようにすることです。歩く時も同じで体の軸を一直線上するとこの状態になります。もちろん左右の足は交互に動かしていますから、歩行中全てで体軸が一直線にはなるわけではありません。前の脚の膝を上げた時(図7-1)の一瞬、背中をピンと伸ばして頭から、腰、後ろ足まで一直線になる時があります。
 (図7-2)のように腰のところで「く」の字型のかっこうで歩くと、上半身の筋肉に上半身の体重やザックの荷重がかかり、上半身の筋肉が疲れてしまいます。しかし、高い段差を登る時に上半身を垂直に保って立ちこむことは不可能です。階段を一段とばしに登ってみれば解ると思います。
 お尻を後ろに突き出すように登ると大腿四頭筋にかかる力が減少し楽に登れます。したがって解説書に書いてある体軸を作って登るということは基本であり、場面に応じて基本から離れても良いと私は思っています。この登り方はまた説明したいと思います。

(2)前に出す脚の膝を上にあげてから前に出す
イメージ 2 山での転倒は大けがや死に結びつくことがあるので、木の根や石の障害物につまずかないようにします。そのため(図8)右のように前に出す脚を上方にスーっと上げ、それから前に出します。通常街を歩く時のように爪先で蹴り出しません。(図8)左のように爪先で蹴りだす歩き方では、爪先が下を向きつまずきやすくなります。
 またこの歩き方は蹴り出しませんので下腿三頭筋(ふくらはぎ)が疲れにくくなると思います。下腿三頭筋が痙攣する人は蹴るような歩き方をしているのかもしれませんね。ただし岩場や雪渓など爪先立つような場合には下腿三頭筋の負担が増します。

(3)足裏全体で着地
イメージ 3 街の歩き方では前の脚が着地するときは踵から着地します。この歩き方は足首から膝関節、股関節と一本の棒のようになり関節に衝撃を受けやすくなると思います。また足指に力が入りにくくなるためバランスがとりにくくなります。
一方(図9)のように足裏全体で着地すると、膝が緩み衝撃が少なくなります。また、着地する時の靴底面積が大きくなり、地面とのひっかかりが増し滑りにくくなります。

イメージ 4 今回掲載した写真は(写真2)、福島正明監修「山歩きはじめの一歩 歩き方」によります。詳しいことはこの本をご覧ください。