中田喜直(なかだよしなお)(1923―2000)  作曲家。東京生まれ。1943年(昭和18)東京音楽学校ピアノ科卒業。46年(昭和21)に「新声会」のメンバーになり、本格的な作曲活動を開始した。歌曲、合唱曲、童謡などで日本語を生かした親しみやすいメロディを多く生み、新しい日本の歌の創造に努め、またピアノ曲にも優れた作品が多い。ピアノの鍵盤の幅を狭くすることで、ピアノ教育の改革を提唱。主要作品に『ピアノ・ソナタ』、ピアノ組曲『光と影』、歌曲『六つの子供の歌』『雪の降る町を』『夏の想(おも)い出』、童謡『めだかの学校』『小さい秋みつけた』などがある。(Yahoo百科事典より)
 私が中田喜直の音楽に出会ったのは、学生時代合唱団で歌ってたころ。定期演奏会は4ステージでしたが、混声は2ステージ、男声と女声が1ステージづつ受け持ちました。その時の女声コーラスが中田喜直の女声コーラスだったのです。その時歌われたのが「女声合唱曲集Ⅰ」から、はっきり覚えていませんが、「ぶらんこ」、「わすれなぐさ」、「青空の小径」、「夏の思い出」、「ねむの花」などが歌われたとと思います。
                                (写真1)
 
(写真1)は最近見つかった当時の合唱曲集。AmazonでⅠは990円、Ⅱは3507円で売られているのでビックリしました。 曲をYouTubeを検索して、以下の6曲を見つけましたのでリンクしました。すべてお勧めですが、一曲だけなら「ねむの花」をお聞きください。
 
第一集(昭和29年9月刊)            第二集(昭和35年8月刊)
              作詞                              作詞
1 ぶらんこ        安西 冬衛 (3/4)     1 緑の夏                        中村 千尾
2 おもい        宮本 正清         2 美しい季節                   中村 千尾
 (3/4) 
3 早春          中村 千尾 (3/4)     3 秋のうた                      島崎 藤村(6/8)
4 小さな手       宮本 正清
 (3/4)     4 グレゴリアンのしらべは 深尾 須磨子(3/4) 
忘れなぐさ      深尾 須磨子 (3/4)    5 アダムとイヴ                谷川 俊太郎
6 夏河          壺田 花子
青空の小径     中村 千尾
8 夏の思い出      江間 章子
9 ねむの花        壺田 花子
 (3/4) 
10 石臼の歌      壺田 花子 (3/4) 
11 雪のふるまちを  内村 直也      作詞者の後の数字は拍子、3/4は4分の3拍子
 
ねむの花          
 あなたはつかれた
おねむりなさいというように
ねむの花が咲く夕べ
夢のような夕べ
あれはやさしい淡い花
 房のような花

風の中で誰か歌う
鳥のように
光のように
とぎれとぎれの思い出しても
 声には立たぬ
あれは昔の愛の歌よ

変りはてたこの世の岸辺
にがくたたずむ私の胸に
ふたたび淡い夢を盛りあげ
房のような花
夢をすすめるねむの花

やさしい腕によりそって
愛に溶け入る眠りは忘れ
くるしい眠りのみが私を誘う
流れの早い
この世の岸辺に
 

 

若き日の歌聞こえくるねむの花    とっこ

 
 今回楽譜を見て四分の三拍子の曲が多いことに気が付きました。抒情的な曲が多いからかもしれませ。故郷、朧月夜、早春賦なども三拍子です。声合唱はよくハーモニーすると言われていますが、女声合唱のハーモニーも素晴らしいと感じさせてくれます。男声と女声のハーモニーは違ったもの、言いかえれば違った楽器なのです。皆さんはどちらの楽器がお好きでしょうか。
 中田作品の素晴らしさは、日本語のニュアンスを生かした抒情的なメロディと、ハーモニーを重視した曲づくりにあるといわれていますが、当然のことですが作曲された曲の詩がどれも素晴らしい。今回改めて聞いてみて、当時の女子大生のイメージに合う、また受け入れられる清純な感じを受ける曲だなと思いました。
 中田は父の中田章が作曲した「早春賦」が余りにも名曲だったので、「父を越える春の曲をかけない」と言っていたとか、「夏の思いで」もそうですが、初夏の爽やかな季節を感じさせる作曲家だと思います。
 このほかも名曲ぞろいです。谷川俊太郎の詩による「アダムとイヴ 」は大作ですが是非聞いてほしい一曲です。