「お金をかけた」とより「お金がかかった」ことですね。

それは、児童劇団の費用。

 

もう時効なので話せますが、幼い時児童劇団に入っていました。

名前を出せば今でこそ有名ですが、当時は自分もよくわかりませんでした。

 

なぜ入ろうと思ったのか・・・自分でもよくわかっていません。

ただなんとなく興味や関心に惹かれたのは間違えないようです。当時新聞広告に出ていたのをみてなんとなく面白そうな話をしたところ、話がなんとなくやってみる方向になり、入団のオーディションを受け合格し、入団しました。

 

ただ母としては結構心配していたようです。

今でこそ自分の疾患がパニック障害とわかっているのですが、当時オーディションを受けようとしていた時は、今のパニック発作が起き始めた時期。その時は何の病気なのかも全くわからない状態だったため、事前に病院の主治医へ相談に行ったとのこと。すると主治医からは「神経質な性格みたいだから、そういう経験をするのも良いでしょう」とのことで受けることになったみたいです。

 

無事オーディションは合格したのですが・・・問題はその先。

入団すれば、当然お金がかかる。今から36年前の話、当時入団にかかった初期費用は30万円。今でも30万円は大金ですが、当時の自分は小学生なのでそんなお金がかかるなんて思っていませんでした。でも母親は二つ返事で支払うことに。さらに月々のレッスン代が1万3000円。それも払ってくれました。

 

正直な話、我が家は決して裕福ではありませんでした。

そのことを子どもながらに感じていた部分もあったので、30万円というお金は衝撃的な金額でした。ただそれでも出してくれたのは、自分の成長のことを考えてのことだったんだろうと思います。今でこそ子役は1つの地位を確立していますが、自分が劇団に入った頃は今ほどの地位はなく、主役になるような存在ではありませんでした。なので、ある意味相当な投資だったかもしれません。

 

こうして自分は9歳から18歳まで、児童劇団に所属していました。

レッスン料が毎月発生するのは当然のこと、レッスンに通うための交通費もかかりました。最初の頃は母親と一緒に通っており、また外で食事をすることもあったのでお金はそれなりにかかっていきました。また劇団内で開催される芝居に出る時も、出演料がかかることに。今思えばホントにお金がかかっていたと思います。

 

で、長く所属していると劇団の外での活動も増えます。

自分の場合は小学6年生の頃から主要な役を担う「お仕事」もするようになり、そのために撮影場所や稽古場に行くことも多くなりました。しかしそれらの費用はすべて自腹。その度に都心まで通っていたので、交通費だけでも相当な額になりました。

 

一方でお仕事をすれば、出演料も受け取ります。

ただ・・・出演料は安いです。今思えば「なんて安いんだ」と思いますね。出演料よりも交通費などにかかった費用の方が高く、収支的にはマイナス。劇団にいたときに稼げたことはありません。

 

それでも、今思えば得たものはあります。

一番得ることができたのは、多少の度胸。人前に出るのが苦手で、話すこともできなかった自分。そんな自分が人前で堂々として今のような仕事をするようになったのは、まさにこの時の経験が礎だと思います。これがなかったら、自分の人生はまた違っていたかもしれません。

 

そう、劇団にいたことで「障害」も学びました。

自分が16歳の時に筋ジストロフィーのことを描いた舞台に出演した時、自分の中で勝手に「障害者」の像を描いていました。ある日役作りのために筋ジストロフィーの方が書いた日記を読むことがありましたが、その時にものすごい衝撃を受けた覚えがあります。日記は当時の自分と同世代ぐらいの人が書いたものでしたが、内容は障害のあるなし関係なく、普段自分が思うことがそのまま書いてあり、日記を読んで自分がものすごく偏見を持って障害のことを見ていたと感じた覚えがあります。

 

当時の自分は「筋ジストロフィー=長生きできない」という考えしかありませんでした。

なのでその役を演じるのは「体が動かず、死を待つ」という勝手なイメージしか持っていませんでした。しかし日記を読んでその考えは一気に打ち砕かれ、障害を持っていても考えていることは全く同じであることを気づかされ、とんでもない偏見を持っていたことを思い知らされました。

 

その時はまさか自分が福祉の仕事をしていることを想像していませんでした。

でも当時の経験は今の自分にとっては必要な経験で、福祉というものに初めて触れた出来事でした。その後母の病気もあり本格的に福祉の仕事を考え、今ではこの世界一筋で仕事をしています。今思えば、あの経験はとても大事な経験だったと思います。

 

お金はものすごくかかったし、お金をかけてもらいました。

でも今こうやって振り返れば、それ以上のものを得たようにも思います。特に「障害理解」の経験は決してお金では買えないものであり、劇団にいたからこそできた経験だったと思います。なかなかできないことをやらせてもらい、本当に感謝です。

 

親が私に一番お金をかけたこと

 

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