忘れられた人気バンド・スウェードと80年代から90年代のUKロックを回顧しつつ、例の如くロック・ファンのさよちゃん先輩と、ざっくばらんに議論をおこなった。
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俺「自分はあまり詳しくなかったんだけど、このたび来日するSUEDE(スウェード)を中心に、UKロックの歴史について語り合ってみませんか」
さ「いまさらスウェードって言われてもねえ(笑)。2013年に、11年ぶりのアルバムを発表したっていうから、“現役”感があると言えなくもない、っていうバンドだね。CURE(キュアー)なんかは、全然出してないけど、ツアーはやっている」
俺「スウェードだって、ツアーはやってるよね。日本だと、結構客が入るみたい」
さ「5月の公演も売り切れている」
俺「スウェードってのはファースト・アルバム(1993年)が、華々しいもので、評価も高かった。」
さ「Radiohead(レディオヘッド)のデビューと一緒なんだよね。その後、大きく差が開きました。同期なのに」
俺「レディオヘッドのデビューは、パッとしなかったのに、逆転したってことね」
さ「そう思うと、セカンド・アルバムの差なんだよね」
俺「世評では、どうやらスウェードのセカンドが名作らしいけど、実際のデキは…どうかな~。ストリングスの導入がすごい作品でね、別に、いい意味ではなくて…」
さ「当時としては、でしょ、そのストリングスが、うるさすぎるんだよ。パッとしないアルバムですよ、『ドッグマンスター(dog man star)』(1994年)は…まあ、好みのことだから…あんまり私の好みではないってこと。それに対して、レディオヘッドのセカンド『ベンズ』(1995年)はすごいギター・アルバムだからね」
俺「そっちは成功したわけだね、じわじわとスタイルを確立していった。スウェードのセカンドは、なぜか過大評価されてる」
さ「あの人物のカリスマ性、ブレット・アンダーソン(Brett Anderson)ね、カリスマ性がとにかくすごかったんだよ」
俺「今聴いても、かなりクセ者だ」
さ「たとえるなら、デヴィッド・ボウイや、モリッシーに匹敵するようなね」
俺「ロックに疎いボクからすると、河村隆一なんだけどね。そっくりの歌い方だよ」
さ「たしかに。でも、あの系統の歌い方の人は昔からいるから、どっちが先かはとくに問題じゃない。ただ河村隆一には、両性具有的なものが無いよね。その点では劣っている」
俺「うん。歌い方だけ。表面的な類似か」
さ「スウェードは色気がある」
俺「その色気は、セカンド以降薄まったのかな?」
さ「今でもそれを売りにしてるとは思うけど…」
俺「すでにファーストで完成していたスタイルを徐々に脱ぎ捨てようとして、裏目に出た、かな。どんどん尻すぼみで、注目度が弱まって行った」
さ「センセーショナルなものは、どうしても、そうなるよね」
俺「続けていくのが、しんどかったのか」
さ「ギタリストの脱退も大きかった。すぐに辞めちゃったから。でもセカンドまでは参加したのか」
俺「えーと、音楽的には、スミス(The Smiths)との共通性を感じる、って言ったよね?」
さ「それは誰もが言ってると思うけど…(笑)つまり、内容の毒性とか、ギターの主張だよね。キュアー(The Cure)っぽいものも、ちょっと入ってるけど、R.E.M.的な要素もある」
俺「先輩格にあたるゲイっぽいスタイルの両者だね……スミスのほうが、1984年アルバムデビューで、R.E.M.は1983年アルバム・デビュー、だから、1年しか違わない。ちなみに、キュアーは1979年アルバム・デビュー」
さ「ゲイっぽいって言うより、ゲイそのものなんだけど」
俺「ブレット・アンダーソンはハッキリしないんだね」
さ「両性具有、バイセクシャルの路線」
俺「だから、デヴィッド・ボウイ的なんだね。ちなみに、カルチャー・クラブ(Culture Club)が1982年アルバム・デビュー。この辺が、花盛りだったんだね、ゲイ路線のバンドが続出した」
さ「そうね」
俺「その後はそれほど無いのかなあ…。あんまり思い浮かばないんだけど。そんな中、90年代に、久しぶりにその手のバンドとして、スウェードが出たってことか?」
さ「うーん2000年代に入ってから、ゲイ路線のデビューがあったかどうか考えてるんだけど…ペット・ショップ・ボーイズ(Pet Shop Boys)だって、1985年アルバム・デビューなんだよね」
俺「近年は、そのスタイルが流行らないのかな」
さ「単に私たちが昔の人間だから、最近の動向を知らないだけかも」
俺「あるいは、昔ながらのバンドに対する昔ながらのニーズが強すぎる」
さ「うん…それにしても、やっぱり世間の価値観を破壊するところがあるから、ゲイ路線って、好まれるのかな。基本的に、見た目の綺麗さもあるし」
俺「彼らにとって、美は不可欠かもね」
さ「でも、近年人気があるバンドは、自然体路線なんだよね。つまり、ロック・スター的でもなく、ゲイ的でもなく。Jロックについての、来る客のほうがかっこいいって話、ステージの上でやってる人間よりも、っていうことは、よく言われるよね。まさか、それが世界的にも?(笑)」
俺「そのほうが親しみやすいってことかな。現代では、スターへの憧れをあおるより、ダメっぽい人間にシンパシーを促すっていうか、そういうバンドのほうが増えてきたのかもしれない」
さ「つまらない時代になりました(苦笑)」
俺「ブレットなんかはその名残なのか?スターの」
さ「だから、あいかわらず需要があるんだ」
俺「フランツ・フェルディナンドなんか、どうなのかなって思った」
さ「自然体じゃないですか~!」
俺「いや、ゲイ的なものだよ」
さ「うーん、私には分からない。プーリームさんは、独自の嗅覚でそう思うんでしょ?(笑)」
俺「Wikipediaにも、ゲイ説が書かれてるね。フランツに関しては、あのヴォーカルの名前が覚えられないっていう難点がある(笑)。カプラノスね。ゲイっぽさはあるけど、もしかしたら、それをおおっぴらに出しづらい時代なのかも、世間の保守化が進んできたのかも」
さ「ロック界でも?」
俺「ヒップ・ホップ界では、最近ようやく、ゲイ的なテーマやアーチストのスキャンダルが出てきているよね、ロックから、だいぶん遅れて。たとえば、フランク・オーシャンとか、マックルモア。もともとラップのマッチョ志向は、黒人肉体労働者の地位と関係していると思うけど…インテリなホワイト・カラーの層に参入できない、っていう不満とか、恨みとかのね」
さ「ゲイ=インテリっていうイメージもある。ラップを支える層は、インテリになれないんでしょ?でも、それは表面的なことで、実は、違ったんだよね」
俺「つまり?」
さ「ラップのメインストリームの人たち、マックルモアとかが、果敢にそういう問題を攻めてるじゃないか。だとすると、肉体を誇示して俺のほうがスゴイってスタイルは、イメージに過ぎなかったのかなって気がする」
俺「いずれにしても、ゲイを公表するのは難しいって事情に、変わりはないようだね」
さ「ラップの層にも“内面”があるんだよ。内面なんてなさそうに見えるけど。話が逸れましたね……」
俺「ブレット・アンダーソンは結婚して2人子供がいるね」
さ「デヴィッド・ボウイだって結婚してるよ」
俺「セカンド・アルバムの悪さってのは、積極的なダメさじゃないんだよな。たぶん、保守化というか、“カッコ良さ”を、ただ維持しようとしている、そこに、なにか刺激とか冒険とかが無いってことかな。デヴィッド・ボウイの最近の作品がイマイチなのと同じ意味でね、冒険が無くて、カッコいいだけってのはダメなんだよ。自分自身を壊そうとする、尖った態度が無いとね」
さ「それは、プーリームさんの見解だね(笑)。『ドッグ・マン・スター』については、むしろ良いデキかも」
俺「スウェードとしては自信作なんだろうけど」
さ「その当時、私は、すでに関心を失ってただけなのかもしれない」
俺「今、聴きなおしてみると、サウンドは普通かな」
さ「ギターの聴き所は多いですよ」
俺「でもヴォーカルの奇妙さは、パワーダウンしてる。河村隆一的なものが、相当減ってる(笑)。むしろオペラ的に朗々と歌う曲が目立つ」
さ「奇妙さの爆発は、最初ほどのインパクトが無い。それに、朗々としているのは、プーリームさんの嫌うところだものね」
俺「9曲目あたりから、どこか臭いオペラ的なものが立て続けに来る展開で、12曲目まで全滅だね」
さ「1曲目はともかく、前半は聴けるよ。最後の13曲目も、また持ち直す」
俺「とにかく、今回スウェードのライブに行って、現状を確認してみましょう」
さ「私は、客層に興味がある(笑)」
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