もう少し頑張ると思う前に、とにかく距離をとる。仕事から逃げる、パートナーから逃げる、 親から逃げる、学校から逃げる、つまり物理的にその場を離れることが、生物学的に疲れた心身を回復させることにつながる。

 

操体法では、とにかくなにより優先させることは「頑張りを覚えるな、逃げ方を覚えよ」。逃げることはそもそも生物に備わっている原始感覚とも言えるものだが、認知能力が備わってしまったわれわれホモサピエンスは、どうも苦手なところになってしまっているようである。

 

快医学講座で必ず触れる救急救命。原発事故直後の行動も救命に直結している。まずは事故原発から離れることが重要な救命の手段になることを最優先事項として伝える。もちろん、個々の諸事情により動けない人がいることは理解しているつもりだ。

 

事故の翌日に家族をつれて西へ西へと逃げるその道すがら、治療室の病者さん、知人に電話をかけながら避難を呼びかけるも、年寄りをおいて出るわけにはいかない、放射線量を問題にしていないなど様々な理由でハードルが高く、事故直後の避難は簡単ことではない。

 

津波の恐ろしさは家庭や学校教育の現場で伝えているが、原発事故を想定した避難訓練など聞いたことも体験したこともないのだから尚更のことだ。

 

東日本大震災と原発事故から13年目、福島では原発事故直後に約6万人が県外に避難、今でも2万人以上が避難している。昨年末、家族3名が原告になっている親子裁判の最高裁への上告が決定した。

 

※親子裁判

東京電力福島第1原発事故時に福島県内に住んでいた親子ら約160人が、子どもの被ばく防止対策が不十分で精神的苦痛を受けたとして、国と福島県に1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は一審福島地裁判決を支持し、原告らの控訴を棄却した。原告は上告中

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