それは、若きペーター・クラビーツがFSVマインツ05のシニア・スカッドに対して分析セッションを行った際のナーバスに大きく息を吸ったところから始まった逸話です。
その段階でマインツ大学の学生だったクラビーツ-彼はプロとして一度もフットボールをプレイしたことはありませんでした-は状況を改善できる場としてライトバックのエリアにおけるシナリオを強調しました。
言うまでもありませんが、そのような考察は、マインツで先発を務める右サイドのフルバックからはまったく認められませんでした。
実際、ユルゲン・クロップは、このマインツ生まれの男を痛烈に批判しました。
「私はプレゼンターだったし、こう言わざるを得なかったんだ。“ここを見てください、右のフルバックはもう少しアクティブにやることができますし、もう少し顔を出して、目立った活躍もできますよ。”とね。」とクラビーツは振り返りました。
「面白い場面だったよ。彼は“お前は狂ってるのか?”って本当に怒っていたからね。私も必死に叫んだよ。ボールは欲しいでしょって。ボールなんて欲しくなかったって私に言いたいんですか?ってね。」
「これはちょっと面白かったんだが、良い意味でね。長い話し合いやディスカッションが始まったんだ。良いプロセスの始まりだったと言わざるを得ないだろうね。」
彼の仕事ぶりに深い関心を持った後、クロップは2001年にマインツの舵取りを引き継いだ際にクラビーツを自身のチーフスカウトに任命しました。
現リヴァプール監督に“自分の目”とラベル付けをされた彼は、その後ボルシア・ドルトムントでも彼に従い、7シーズンの滞在で成功を収めました。
当然のことですが、ヴェストファーレンシュタディオンから離脱した後、1年間は休養するはずでした。ですが、それは2015年の秋にクラビーツが電話に出るまでのことでした。
「我々は1年間休暇をしっかり過ごすと信じた私が愚かだったよ!」とレッズのアシスタント・マネージャーは今は笑います。
「私にもプランはあったんだよ-ドルトムントから故郷のマインツに引っ越したし、息子も学校に入れた。我々は夏の期間をうまく活かして、スペインからギリシャだとかあちこちを旅行したよ。12月には盛大な誕生日パーティとかを開こうって計画していたんだ。」
「それから電話が来たんだ。“聞いてくれ。面白いアイデアなんだが-リヴァプールが呼んでいるんだ。”ってね。」
「正直に言うとね。こう思ったよ。“何言ってるんだ?気は確かか?我々は1年休むって言って、まだ3ヵ月だぞ?”とか“ああ、そりゃ良いね。ビッグクラブだし様子を見てみようよ。”とかね。」
「ソファからすぐに飛び上がって“OK、私のスーツケースはどこかな?行こうじゃないか。”なんて言った訳じゃない。“考えてみないといけないし、妻にも伝えないと!”って言ったよ。」
「だが、すぐにハッキリしたね-リヴァプール、とてつもなく大きなクラブ、イングランドでプレミア・リーグだ。もの凄いチャレンジさ。彼はかなり早くに私を納得させたよ。」
「私が考えて、理解するのに1、2、3時間かかったよ。“もう休養はないし、休日もない。我々は行かなきゃならないし、行くべきだし、行くことができる。行くことを許されているんだ。”とね。」
マージーサイドでは、クラビーツはクラブ・フットボールにおける最高の高みに登り、リヴァプールの毎年の改善において重要な役割を果たしています。
グラスルーツ・フットボールの定義からコーチング・キャリアをスタートさせた48歳のクラビーツにとっては、ここまでかなりの旅でした。
「私は本当にとても情熱的だったんだが、最大級の才能はなかったからね。」と彼は自身のフットボールの能力を分析します。
「まず第一に、私はのろ過ぎた。プロのフットボールでやるにはのろ過ぎたと言える。だが、試合は大好きだったんだ。」
「おそらく16、7歳の頃に、若いチームのコーチになったんだ-5、6歳の男の子たちのチームさ。」
「すぐに気に入ったよ-取り組んで、示して見せて、説明し、彼らにモチベーションを与えて、彼らのフットボールへの情熱を共有するのがね。すぐに最初のライセンスを18歳の時に取得して、一番重要なステップに進んだんだ。マインツ大学でスポーツの勉強を始めたのさ。分野はもちろんフットボールだ-私の情熱だからね。」
リヴァプールでのクラビーツの役割は2.ブンデスリーガでマインツに所属していた時と同じものです。
「私はフットボールのことを考え、分析しているんだ。」と彼は言います。
「ペップ(ラインダース)はトレーニング・セッションの準備をしているし、私は絶えず自分たちの試合について考える役割を担っているんだ。」
「だから、次の試合に向けた準備が主な役割だ。我々が対戦する次の相手を見る-我々が期待できること、やらなければならないこと、自分たちの解決策はどこにあるのか、をね。」
「これを準備し、チームを準備し、ビデオ・ミーティングに繋がる。間違いないのようにしたいし、次の試合に向けて自分たちの解決策を選手たちに正確に示したいんだ。これが主な役割だね。」
「このせいでずっと忙しいんだって言えるよ!」
クラビーツは、ファースト・チーム・アナリストのマーク・レイランドやハリソン・キングストン、グレッグ・マティソンによってサポートされています。彼らにとって、リヴァプールがゴールを決めたり、相手の攻撃の脅威を無効化するのに成功するのを、自分たちの仕事がリードするのを観ることほど満足した気分になれることはありません。
「もの凄い、とてつもないトロフィーを勝ち取ることは別として、それはコーチとして持ち得る最高の気分だろうね。」とクラビーツは語りました。
「だが、それこそ取り組んでいることだし、望んでいることでもある。あらゆる仕事をやって、そうした場面に準備する為に全力を尽くす理由だね。」
ですが、2019年6月にリヴァプールがチャンピオンズ・リーグを優勝し、何千人もの愛すべきファンが通りに並ぶホームに帰った時、究極の見返りが得られました。
クラビーツはこう振り返ります。
「このグループであれをやって、我々のやり方でやってね...どうやってやるかが私にとっては常に重要なんだ-偶然なのか本当に実力の証なのか?とね。」
「私がいつも一番楽しんでいるのは、チームだけが一緒にいる時間だね。でも、その次に家族と会うのが良いものだし、パーティするのも楽しいし、友人と会うのも楽しいね。」
「あの後でリヴァプールに戻ったのが、それを感じた瞬間さ。私にとっては“この人たち皆が私と同じくらい幸せなんだ。”って気づいた瞬間はもの凄くエネルギーを高めるものだったね。」
リヴァプールFCで普段注目を集めない仕事をしている人たちにフォーカスを当てるシリーズ。
今回は2017年6月以来2度目の登場となるクラビーツです。
クラビーツにフォーカスを当てた記事は、1ヵ月ほど前にもご紹介しましたが、今回は彼の仕事ぶりよりも冒頭で紹介されていたクロップとの出会いやリヴァプールに来る際のエピソードに目が行きました。
特に出会いに関して言えば、当時のマインツのレフトバックをやっていたのはクロップで、要は“クロップのところが穴だ”とクラビーツは指摘した訳ですが、そりゃ当時大学生のクラビーツに指摘されたらプロとしては怒るのも無理はないでしょうね(笑)
それでも、クラビーツをちゃんと評価して、後日マインツの監督に就任する際にはスタッフに招聘するあたりは、クロップの懐の深さを感じますね。
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