British GQより。

 

長きにわたり、リヴァプールFCには素晴らしいチームがいくつもあった。だが、そのうちのいくつかで監督を務めた偉大なケニー・ダルグリッシュでさえ、現在のチームが最高のものになると考えている。2020年の初めにシェフィールド・ユナイテッドに勝利した後、リヴァプールは1年間にわたってリーグ戦で1試合も敗れなかった。これはプレミア・リーグで3チームだけのことだが、それ以降も彼らは減速の兆しを見せていない。これを執筆している時点で彼らは2位のマンチェスター・シティをはるかに上回っており、一部のブックメーカーは彼らのタイトル獲得のオッズを500/1としている-これは500ポンド賭けて1ポンドの儲けにしかならないことを意味する。

 

そして、その中心にいるのは、トレント・アレキサンダー=アーノルドという名の地元出身の選手であり、クラブの偉人たちであるスティーブン・ジェラードとロビー・ファウラーの足跡を辿り、アンフィールドでプレイする最高のスカウサーになり得る男だ。それは何よりも2つの理由で顕著だと言える。1つ目は彼は3シーズン前にデビューしたまだ21歳だということ。2つ目は彼がライトバックでプレイしていることだ。

 

だが、監督のユルゲン・クロップの助けを借りて、6歳からクラブに所属してきたアレキサンダー=アーノルドは、かつては魅力的でなかったポジションを改革している。彼はディフェンダーだけでなく、プレイメイカーでもあり、フットボールにおける2番目に重要なスタッツでマンチェスター・シティのミッドフィールドの天才ケビン・デ・ブライネに次いでいる。アシスト-すなわちパスやクロスによってゴールを直接生み出した数だ。ジェイミー・キャラガーが私に言ったとおり。“この2年間で彼はフルバックをすべての子供たちがなりたいと思うポジションにした。彼はそこから試合を動かすんだ-これは私が今まで見たことのないものだね。”

 

ほとんどの選手は、テラスで歌われる自身のチャントもなくキャリア全体を過ごすものだ。だが、21歳のトレント・アレキサンダー=アーノルドのそれ(“He's Alexander-Arnold...the Scouser in our team”)は、彼が地元にルーツがあることを反映しているだけではなく、昨年獲得したチャンピオンズ・リーグとFIFAクラブワールドカップの優勝メダル、イングランド代表9キャップがさらに増えていくであろうことが認められた結果だ。彼には非常に特別な才能-“おそらく現在そのポジションで彼が世界一”とキャラガーは言う-があり、おそらく最高のチームでプレイしている。

 

すべてが彼を自惚れさせるような小さいながらも大きな兆候だろう。しかし、クラブは彼が他のどの選手よりも多くのコミュニティ・イベントを行うと言っている。そして、彼は自身がトップのフットボーラーであることを受け入れるのをまだ拒んでいる。彼のカンパニーで午後を通してやって来るのは、彼が1人になって見せる純然たる決意、負けることへの憎しみから生まれた勝利への執着心、街やクラブへの愛情。カリスマ的なドイツ人監督はリヴァプールのレジェンド2人と共に名前を記されるのか。だが、まず最初に我々は歌について話をした...

 

 

Q.観客が君の歌を歌うのを初めて聞いた時はどう思った?

 

「僕の人生で一番誇りに思えた瞬間の1つだったね。間違いないよ。」

 

Q.君について言えば、君がチームで唯一のスカウサーだってことだね?

 

「僕がとても誇りに思っていることだし、責任があると思うよ。これが当たり前のことだとは思っちゃいない。とても難しいことなのは分かっているからね。多分、スタジアムにいる皆の夢は、実際にこの街の出身がファンになって成長して、このチームのメンバーになるってことなんだ。」

 

Q.エジプトやブラジル、オランダから来た仲間-彼らも君と同じように“手に入れる”ことはできる?

 

「彼らはクラブのこと、歴史や伝統、クラブの価値を理解していると思う。僕はそれと共に育ってきた。幼い頃から理解していたってことだね。子供の頃から教え込まれてきたけど、彼らはそうじゃないからね。」

 

Q.現代のフットボーラーはファンと同じような繋がりを持つことができると思う?

 

「そうだね。ここではファンが特別で、何よりも選手を愛してくれているのはよく知られていると思うんだけど、それはファンだけのことじゃないんだ。自分が暮らしている街や環境に合っているかどうかだろうし、皆が自分を受け入れてくれているかどうか、自分が故郷にいると感じられるかどうか、家族が故郷にいると感じられるかどうかだね。リヴァプールは多分その点では一番簡単なところの1つだと思う。やって来てすぐに受け入れられるんだからね-あなたも分かってるよね。」

 

Q.自分が本当に良いフットボーラーになると分かったのはいつ頃?

 

「本当に良いフットボーラーになれるとは思っていなかったよ。今だって自分が本当に良いフットボーラーだなんて思っていないけどね。」

 

Q.自分が本当に良いフットボーラーだと思わない理由は?

 

「まだまだ十分にポテンシャルに達しちゃいないと思うから。自分がいるべき所にはいられてないし、自分がいられる所にもいないってことさ。だから、思うにラベルを貼ったって意味がないんだ。改善すべき点はまだたくさんある。子供の頃からいつだってその兆しはあったよ。でも、僕にとっては、それはまさにすべての試合でプレイするってことだったんだ。すべての試合で勝ちたかったのさ。“世界一になってやるとかフットボーラーにならなきゃダメだ。”なんて考えたこともなかったね。毎日トレーニングに行くだけだったし、勝ちたくて、できるだけ競争力をつけたかったんだ。」

 

Q.君みたいな形でフットボーラーとして語られるライトバックはほとんどいないね?

 

「そうだね。まぁ間違いなく彼らの意見だけどね。チームが勝つ為に自分のできる限りのプレイをしようとしているんだ。どんな個人の称賛があったってチームのトロフィーに近づける訳じゃない。優勝することを夢見て育ってきたんだからね。一番意味のあるものさ。勝ち取るのが一番難しいものなんだ。」

 

 

Q.子供の頃の君は指導したコーチの何人かに気質に本当に問題があるって言われていたね。君の気性だ。

 

「いつも怒っていた訳じゃなかったよ。多分たまに競争心が強すぎたんだ。とても勝ちたかったからね。それで勝てなかったら間違いなく怒っていたんだ。怒りはするよ-それは自分が何かに勝てたかったことへの怒りさ。それは小さい頃からのものだね。僕の兄弟は何をするにしてもそうでね。今までやってきたどんなことでもいつも競い合っていたんだ。だから、僕にとっては、勝てなかった時に怒るのは普通のことだったんだ。」

 

Q.君の気性が良かったことはあった?それとも悪い影響が出た時には取り除く必要があったりした?

 

「そうだね。試合に集中できなくなっちゃうからね。自分のミスを気にし過ぎちゃうんだ。例えばファウルを与えたり、ペナルティを与えてしまった時、自分のミスで相手チームにゴールを許してしまった時にね。自分自身に後悔していると、次の5分間は試合に入れなくなったり、10人で相手をすることになってしまうのさ。気性のコントロールは、パスを出したり、受けたり、セットプレイのスキル、シュートやクロスの練習と同じだよ。精神面のことは試合の技術面と同じくらいに大切なんだ。」

 

Q.勝つのは大好きで負けるのは大嫌い?

 

「負けるのは大嫌いだね。他の誰かに負かされたっていう感じは...弱くなったみたいだよね。弱いって気がする。自分自身に失望したっていう感じがするんだ。」

 

Q.ユルゲン・クロップを一言で言えば?

 

「アンビリーバブルだ。あらゆる点で彼のすべてがね。彼のマン・マネジメントも...人として、監督としてね。まさにアンビリーバブルさ。」

 

Q.私たちがテレビで見るクロップは、トレーニング場でのクロップにどれくらい近いものかな?

 

「同じ人だよ。インタビューでもそういう風に感じるよ。カメラに映る彼を見れば、彼が愛すべき人だってことが分かるんじゃないかな。周囲の人たちを気遣う人だってことが分かるはずさ。彼は自分の家族も選手たちも、スタッフのことも気遣うんだ。皆のことを平等に扱ってくれる。キャプテンを若手選手と同じように扱うんだ。多分、彼はとても感情的で、気持ちを隠すことなく表に出す人だって思っているだろうね。ある程度だけど、彼は周りの人全員にとって有益な形で感情をコントロールする術を知っているんだ。適切なタイミングで何を言わなきゃいけないのか、どんなトーンで言う必要があるのかが分かっているのさ。」

 

Q.君と1対1で接する時はどう?具体的には“おいいいか、トレント。これが俺たちが改善する為の方法だ。”みたいに言うの?彼は仕事のその側面をどう管理しているんだい?

 

「文字通りあなたが言ったみたいな感じだね。彼は何を改善する必要があるのか、チームに参加する為には何をする必要があるのか、チームに入れていない理由は何なのかを話してくれるよ。」

 

Q.君にもチームに入れていない理由を説明してくれる?

 

「時々ね。時々彼もしないことはある-それがメッセージそのものかもしれないね。お前はチームに入っていないから、何かを変える必要があるぞってね。大抵の場合は自分が何をする必要があるのかは分かっているものさ。でも、説明が必要な時には監督が説明してくれるよ。」

 

Q.文字通りビデオクリップの前に座って“あれは良かったが、もっと良くできたかもしれないぞ?”ということはあるの?

 

「いいや。彼が座らせてビデオクリップを見せることはないね。このレベルの選手だとかアスリートは自分でそうしたことはやるべきだと思うんだ。監督が何かをやれって言ったのに、それを本当に理解できていないのなら、自分がアナリストのところへ行って、ビデオクリップを手に入れて、それが何を意味しているのかを理解すべきさ。彼は僕たちのメンタリティを100%キープしてくれる。僕たちのベストだってことを確認する為に彼は毎日メッセージが浸透しているか確認するのさ。」

 

Q.君たちのレベルでチームメイトとの本当の友情を築くことができると思う?それとも君たちは全員プロフェッショナルなだけで、君もそのチームの一員だと思う?

 

「チーム環境でちゃんとした友情は築くことはできるよ。一緒に多くの時間を費やすことで、彼らのことをよく知っているからね。この繋がりは皆が思っているよりもずっと長く続くと本当に信じているんだ。一緒に多くの時間を過ごすから、彼らを理解し、彼らと楽しむことができるからね。良い時も悪い時も経験してきている。長いこと人生の一部をそうした人たちと共有しているしね。彼らは自分の家族になるのさ。」

 

Q.イングランド代表でライトバックのライバルであるキーラン・トリッピアがマドリードでどんなプレイをしているのかはチェックしてみないの?

 

「すべてのリーグをチェックしているよ。」

 

 

Q.でも、誰かが君より優れているみたいな考え方ではチェックしないの?ガレス・サウスゲイトの視点でね。

 

「それはあんまり考えないかな。自分のできる限りのプレイをすることに集中しているからね。リヴァプールでプレイしている時に良いプレイをすることで、ガレスの頭の中に印象を残せるだろうし、クラブのパフォーマンスから彼が自分のチームを選ぶことも理解しているしね。」

 

Q.チェスはやってる?

 

「時々ね。おそらく皆が思うほど多くはないよ。」

 

Q.マグヌス・カールセンと勝負したことがあるよね。おそらく彼は史上最高のチェス・プレイヤーだろうけど。

 

「そうだね。そんなチャンスがあったら、断る訳にはいかないよね?」

 

Q.でも、君が負けたね。

 

「そうだね。僕の負けだった。」

 

Q.その負けには傷ついた?そんなことないかな?

 

「ノーノー。日常でプレイするのとは違うからね。どちらかというと子供の頃の天気が悪い時にやる趣味みたいなものさ。」

 

Q.最後に観た映画は何?

 

「バッドボーイズだね。」

 

Q.最後に読んだ本は?

 

「ジェイムズ・ミルナーのかな。」

 

Q.一番面白いチームメイトは誰?

 

「ロボ(レフトバックのアンディ・ロバートソン)だね。」

 

Q.君のアクセントに一番苦労しているのは誰?

 

「おそらくタクミ(南野)だろうね。最初に来た時の彼はあまり英語を話せなかったんだけど、僕が今まで会った英語を学んでいる人の中では一番憶えるのが早いんじゃないかな。」

 

Q.スカッドで一番賢いメンバーは誰?

 

「ジェイムズ・ミルナーに戻るね。とても知的な男だね。」

 

Q.最悪な服装をしているのは誰?

 

「誰のことも着こなしが酷いとは言えないね。人によるんじゃないかな...ディヴォック(オリギ)みたいに僕が真似しちゃいけないようなスタイルはあるね。僕が着たって見栄えが良くないのは分かっているよ。でも、それが彼が酷い着こなしをしているってことにはならないよね。彼のスタイルは僕には似合わないってだけさ。」

 

Q.君はまだ母親と一緒に暮らしているね。それはどれくらい続きそう?

 

「必要な限りはね。僕は周りに好きな人や愛する人がいるのをいつも楽しんでいるんだ。だから、周りにいつも家族がいることが大切なのさ。いつも楽しんでいるよ。」

 

Q.スカウサーであることは君にとってどんな意味がある?

 

「名誉なことだと思っている。本当にね。おそらく僕にできる最高なことの1つさ。誰もが同じ信念、同じ成功への意欲、同じ勤勉な労働倫理、粘り強さを持っているんだ。彼らの信じるものへの情熱はこの街ではとてつもなく大きなものさ。」

 

Q.the Sunは読む?

 

「ノー」

 

Q.リヴァプールとthe Sunの関係は永遠に続くと思う?

 

「そのことにコメントするのは難しいね。あの出来事(ヒルズボロの悲劇)が起こったのは僕が生まれる約10年前なんだ。だから、僕は何が起こったのかをまだ学ぼうとしている。それで物事を支持する義務があることは知っていると感じているんだ。もちろん、僕も信念は持っているけど、その意味ではあからさまなコメントが言えるほど十分な教育を受けているとは言えないね。まだまだもっと知りたいんだ。それは政治的なスタンスを取っているんじゃなくて、何が起こったのかをできるだけ学ぼうとしているってことさ。」

 

Q.私が最後にインタビューしたフットボーラーはラヒーム・スターリングで、人種問題全体について多くのことを話してくれたんだ。君は人生やフットボールで人種差別を直接経験したことはある?

 

「直接受けたことはないね。唯一あったのは、ブルガリア人からかな(昨年10月のブルガリア代表vsイングランド代表)」

 

Q.でも、フットボール場でもその外でも経験したことはない?

 

「ないね。だけど、人種差別は教育の欠如に起因しているって感じているし、肌の色や性別を問わず、すべての人は同じだってことを理解する為には皆が教育を受けないとね。差別はどんな形であれ受け入れられるものじゃない。誰だって平等だし、誰だって望むことをする平等な機会を得るのに値しているんだからね。フットボールに関して言えば、どうして、フットボールのピッチに出て、自分自身を表現できない人がいるんだって話さ。その人が他の人とは肌の色が違っていて、皆がそれは問題だって感じるから?僕にとっては狂気の沙汰だよ。」

 

Q.メッシかロナウドだと?

 

「僕はメッシかな。」

 

Q.シャンクリーかペイズリーだと?

 

「シャンクリーだね。」

 

Q.ラヒームは他にバーンリーのアウェイは嫌だって言っていたよ。プレミア・リーグでアウェイ・チームにとって最悪のドレッシング・ルームってある?

 

「そうだね。クリスタル・パレスは窮屈だったけど、リフォームしてくれたんでそれほど悪くはないね。だけど、そうだね。ターフムーアのドレッシング・ルームは最悪だね。」

 

Q.素晴らしい。ぜひ長く残してもらいたいね。他にお気に入りのチームはある?スコットランドのチームは?

 

「子供の頃はセルティックだったけど、今は繋がりがある(スティーブン・ジェラードがレンジャーズの監督)からね。今は中立だね。でも、お気に入りの他のチームはバルサだと思う。リヴァプールと同じような価値観と信念を持っているように感じるんだ。」

 

Q.自分の全キャリアをリヴァプールでプレイするというのは想像できる?

 

「ああ、想像できるよ。」

 

Q.でも、スペインやドイツでプレイしてみたいっていうのは?

 

「それは今まで本当に考えたこともないね。僕はずっとリヴァプールを愛してきた。ずっと彼らをサポートしてきたよ。ずっと彼らの為にプレイしてきたしね。だから、そんなことを考える理由はまったくなかったのさ。あぁ今だってそうだよ。自分の部屋で座っていて、他のところでプレイするのを夢見るなんてことはないね。今じゃ僕はリヴァプールの選手だ。何よりもこのクラブを愛しているんだ。そのすべてを愛している。ファンも人々も大好きさ。街だって大好きだ。だからノーだね。どうして僕がそれを考えるっていうんだい?」

 

こちらはBritish GQで展開されているGQ Hypeという無料デジタル・コンテンツで公開されたアレキサンダー=アーノルドへのインタビューです。一部切り取った内容はリヴァプールの公式HPをはじめとして様々な媒体で引用されているみたいです。
なお、引用元やYouYubeにあるBritish GQの公式チャンネルでは30分を超えるインタビュー動画を観ることができます。
引用元の文字起こしではカットされている質問ややり取りもかなり動画の中には収められていて、文字起こし分ではやや唐突に見える質問や回答の流れも感じることができると思いますので、トレントのスカウスを聞き取れる自信のある方は是非(まぁ英語字幕も日本語翻訳も表示できますが)

注)私には字幕アリと言えども、動画から文字起こしして翻訳するパワーはないのでご容赦いただきたいと思います。

 

ひと通り読み、動画も観ましたが、硬軟織り交ぜながら時に厳しい質問をぶつけてくる相手に、迂闊なことを口走ることもなくしっかりと答えていて、トレントの頭の良さが伺えるインタビューでした。

 

 

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