老人虐待 | 山の声を聴け

老人虐待

 介護に疲れ、ストレスがたまり、先がまったく見えない状況で介護の生活に行きづまってくると、知らず知らずに虐待してしまうというケースが多いらしい。虐待という認識すらしていないこともあるという。最悪の事態は介護者が家族を殺してしまうケースだ。認知症の母親を介護していた長男が母の了解を得て首を絞めたとか、老老介護で疲れはてた夫がもう世話をできないと妻を殺してしまったという事件があった。
 そういう心情が俺にはいたいほどわかる。俺がいま介護している母親を虐待することはないと断言できるが、そういう状況に追い詰められる介護のつらささがわかるのだ。虐待する最も多い介護者は息子で40%、配偶者は20%、次に娘の15%とつづく。
 俺が虐待することなどありえないといえるのは、ストレスがないからだ。肉体的な疲れはたまるが、ただそれだけで、介護生活に行きづまるということはいまのところない。介護は仏さんに与えられた行なんだとあきらめて、毎日の介護ルーティーンをこなしているだけだ。たしかに先の見えない生活ではあるが。
 ただ、介護するのがお袋ではオヤジだったなら……、虐待しないと断言できるだろうか。俺にはその自信がない。なにせ、晩節ますます粗暴になったオヤジを、できるものならデコチンに粗大ゴミのシールをはって捨てたいと思っていた。在宅介護という最悪な事態になる前に亡くなったが。とにかく介護施設や病院に迷惑をかけるだけかけて、死んでいった。俺は穴があったら入りたい思いだった。