訪問看護
今日は週一回の訪問看護の日。看護婦がお袋の状態を見にくる。まず顔色をうかがいながら、大きな声で「みちこさ~ん!」と二度呼びかける。植物状態のお袋に反応はない。体温、血圧、脈拍、酸素飽和度を測る。
血液中の酸素飽和度を測るのはパルスオキシメーターという小さな機械だが、これがなかなかの優れもので、指にはさんで2、30秒もすれば、飽和度と心拍数を数字で知らせてくれる。90以上あればまず心配はない。お袋はだいたい93、4である。ヒマラヤのような酸素の薄い高所で登山するときは、必携である。
次に身体全体を、濡れタオルで拭きながらチェックする。褥瘡はできていないか、傷はないか、前回と変わったところはないか、爪の伸び具合はどうか、耳垢はたまっていないか、身体をすみずみまで見る。それから陰部をきれいに洗う。
最後にお袋をベッドに座らせる。身体を起こすとき、お袋は大きなうなり声を上げ、思いきり目を開けて見あげている。すわらせてしばらくは目を見開いたままだ。俺が動くと瞳が俺を追うことがある。今日は見あげたままだった。二十分ほどすわらせておくのだが、自分ではバランスを取ることはできないので、横に看護婦が座って支えていなければならない。
このとき看護婦からいろいろな経験談を聞くのだ。百近い母親を八十の息子が介護している様子とか、見たところまったくふつうなおばあちゃんが、訪ねてきたお客さんに「どうぞ」といって出した饅頭のようなものが、きれいに丸めた自分のアレだったとか、寝ている以外は大声でしゃべり続けているおばあちゃんとか、介護の現場はさまざまである。
―――――――――――――
大正をいろどる女たちは結婚という形にとらわれず、心うつろうままに恋をする。田村俊子、真杉静枝はじめ、伊藤野枝、山田順子、岡本かの子、長谷川時雨もそうである。大正の恋愛事件でもっとも人々の耳目を引きつけたのは、柳原白蓮だろうねえ……。
血液中の酸素飽和度を測るのはパルスオキシメーターという小さな機械だが、これがなかなかの優れもので、指にはさんで2、30秒もすれば、飽和度と心拍数を数字で知らせてくれる。90以上あればまず心配はない。お袋はだいたい93、4である。ヒマラヤのような酸素の薄い高所で登山するときは、必携である。
次に身体全体を、濡れタオルで拭きながらチェックする。褥瘡はできていないか、傷はないか、前回と変わったところはないか、爪の伸び具合はどうか、耳垢はたまっていないか、身体をすみずみまで見る。それから陰部をきれいに洗う。
最後にお袋をベッドに座らせる。身体を起こすとき、お袋は大きなうなり声を上げ、思いきり目を開けて見あげている。すわらせてしばらくは目を見開いたままだ。俺が動くと瞳が俺を追うことがある。今日は見あげたままだった。二十分ほどすわらせておくのだが、自分ではバランスを取ることはできないので、横に看護婦が座って支えていなければならない。
このとき看護婦からいろいろな経験談を聞くのだ。百近い母親を八十の息子が介護している様子とか、見たところまったくふつうなおばあちゃんが、訪ねてきたお客さんに「どうぞ」といって出した饅頭のようなものが、きれいに丸めた自分のアレだったとか、寝ている以外は大声でしゃべり続けているおばあちゃんとか、介護の現場はさまざまである。
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大正をいろどる女たちは結婚という形にとらわれず、心うつろうままに恋をする。田村俊子、真杉静枝はじめ、伊藤野枝、山田順子、岡本かの子、長谷川時雨もそうである。大正の恋愛事件でもっとも人々の耳目を引きつけたのは、柳原白蓮だろうねえ……。